埔里から茶旅する2016(18)昔気質の台湾人 松ちゃんに会う

 バスのチケットを買うと、先日と料金が違う。平日は25元の割引があった。バスは雨上がりできれいな夕焼けが出ている高速道路を行く。台中近くで、高速を降り、すぐに大きなターミナルに入った。もし桃園空港から埔里へ行こうとすれば、ここで乗り換えればよいらしい。何だか埔里がどんどん近い存在になってくる。このバスは充電も出来るので、とても便利に感じられる。あたりが暗くなった頃、バスは埔里の街に入った。

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7. 埔里2
松ちゃんに会う

なぜ先週も来た埔里に無理して再びやってきたのか。それは前回携帯が鳴らずに怒らせてしまった松ちゃんに会うためであった。紹介者のMさんに事の次第を報告したところ、『それはまずいな』という話になり、出来ればもう一度会いに行った方がよい、という助言を受けていた。しかも『松ちゃんの農園には温泉も付いている』などという嬉しいおまけまで付け加えられると、それは行かねばなるまい、ということになった次第だ。

 

連絡を取ってみると、何と明日から中国出張だという。それでも『ぜひ来い』と言われてしまい、この強行軍となったのである。埔里のバスターミナルに着くと、向こうから軽トラが近づいてきて、乗れ、という。この人が松ちゃんか。車は市内を抜けていく。どこへ行くのだろうか、と思っていると、そこで停まった。ここが自宅兼小規模工場だった。松ちゃんは、如何にも昔の台湾のおじさん、という感じで、矢継ぎ早に自分の話したいことを話していく。そのスピードにはとてもついて行けない。

 

私が夕飯を食べていないと知ると、奥さんがチャーハンを買ってきてくれた。そいうところも昔気質の人だ。それをぼそぼそ食べながら、松ちゃんの話を聞くと、彼は良質の烏龍茶を作っており、台湾ばかりか、中国大陸にも幾つも代理店をもって、茶葉を販売しているという。大陸の従業員も100名を超えるというから、なかなかの規模だ。しかし大陸での茶葉販売も限界に来ているらしい。松ちゃんは言わないが、習近平政権以降、大陸で高級茶葉は売れていない。それは反腐敗、汚職撲滅運動の目の敵だから、であろう。経営者として松ちゃんは少し困っているようだ。

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そしてチャーハンを食べ終わると、『どうだ、美味いだろう』と言って、お茶を淹れてくれる。このお茶、茶葉がしっかりしていて確かに美味い。私の好みの焙煎だ。その焙煎は、横の籠で焙煎されているらしい。私の好みだと告げると、突然松ちゃんが言う。『お前、俺のお茶を東京で売れ!』、え、何の話?私は必死になって、自分の茶旅について、そしてちょっとした執筆活動について、少し大げさに説明をした。が、彼は聞く耳など持っていない。『そんな茶旅なんか、いいからさ、まずは金を稼ごうよ』と譲らない。自分のお茶がどれだけ評価されているか、新聞記事などもどしどし持ってきて、突っ込んでくる。

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そして少量のサンプルを渡されて、『お前の知り合いに飲んでもらえ。飲めばわかるから』という。売る気はないのだが『それでこれはおいくら?』と問うと、『まずは興味を持つかどうかだ。値段はそれからだ』というから、ある意味で話にならない。『日本人はね、中国人のように爆買はしないよ。気に入っても買うのは50gぐらいだよ』と念を押したが、分っているのかいないのか、まあいいからとサンプルを押し付けられた。

 

『ところで今日はどこへ泊るんだ?』と聞かれて、『いや何も決めていない』というと、『それは困ったな』という。じゃあ、前回泊まった日本人経営のGHに泊まるよ、というと、『それはいい、俺が送ってやる』と親切にも車を出してくれた。確かにここから自力でGHに行けと言われても無理だったのだが。そして大体の場所まで来たので『あとは分るからここでいいよ』と言っても『いやGHまで送る』と言ってきかない。狭い道を間で入ってきて、GHの前に車をつけ、何と中まで入ってきた。

 

実はGHのオーナー、Wさんに電話すると『今日は台北にいる』という。GHにはヘルパーにMさんがいるから大丈夫、と言われていたので、入っていくと、何と松ちゃんも入ってきて、Mさんに向かって自分のお茶の良さをまくしたてる。Mさんは中国語ができないので、おろおろ。それでも構わず『日本人のお客でお茶に興味があったらぜひうちに連れてきてほしい』と名刺を出し、宣伝に努めている。通じてないよ、と言っても聞かない。松ちゃん、悪い人ではないし、お茶も悪くないのだが、なかなか日本人の企画には収まらない。

 

ようやく嵐が去ると、このGHには私とMさんしかいないことが判明。Mさんもまさかこの時間にお客があるとは思ってもおらず、『取り敢えず前回の3階の部屋へどうぞ』と言われて、そこへ収まる。さすがにお客が誰もいないという日は滅多にないようで、それでWさんも奥さんがいる台北に行っているという訳だ。何だかとんでもないところに、台風と共に飛び込んだ、というところだろうか。Mさんには本当にいい迷惑だったはずだ。

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