埔里から茶旅する2016(17)製茶中の驚くような再会

彼らの茶工場は数年前に長男が茶作りをしたいということで作ったらしい。元々は坪林でも有数の茶商であり、各地の茶葉を集めてきて、相当の種類の茶を商っている。よく茶商が茶作りにも手を出したな、と言うのが率直な感想だ。前回訪ねた時には基本的に次男が対応してくれたが、彼はお茶のことより、日本酒やラーメンに興味があるようで、お茶の話はあまり出なかった。長男はストイックなのか、自ら茶作りを学び、製茶している。

 

Yさんが聞いた試飲会とは一体何だったのだろうか。結局この日のイベントは本当の製茶体験会であり、生徒は我々二人しかいなかった。さすがYさんらしい情報のとり方だ。そんなことを考えていると、次の工程、殺青に入る。茶葉を計り、笊を動かして、向かいの部屋に移動する。こちらには小型の製茶道具が揃っており、ちょっとした茶作りをするのに良い環境が整っていた。茶葉を運んでいると、そこに見学者が現れた。

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その4人組は偶然店へ行き、今なら製茶が見られるよ、と言われてやってきたらしい。上海から来たお茶関係者だという。その内の一人の女性が突然私に向かって『以前どこかであなたに会ったことがある』と言い出し、驚く。正直彼女の記憶はまるでない。人違いしているのかな、と思ったが、向こうはこちらをまじまじと見つめ、『間違いない』と言い出す。そして『えーと、福州・・・?うーん、そうだ、魏社長・・・』。彼女が思い出していく、その単語は確かに私の記憶にもあるものだった。そしてついに『福州の紅茶屋、魏さんのところで一緒になりましたね。あなた、ライターさん?』と言い出す。

 

顔は思い出せないが、確かにその時、上海から来た女性がいたような気になる。すると畳みかけるように、『一緒に呉雅真さんのところへ行きましたよ』と言う。確かに4年前、福州で有名なお茶関係者である呉さんのところに魏さんに連れて行ってもらったのも思い出した。それでも彼女の顔を思い出せないでいると、何と携帯からその時の証拠写真?まで取り出してきた。これには双方大いに驚き、『これぞ茶縁』と叫ぶ。私は旅をしていると偶にこんなことがあるが、彼女の方は初めての経験なのか、痛く興奮している。そして微信で魏さんに二人の写った写真を送り、この歴史的快挙を報告していた。すぐに魏さんからも返信があり、『なんで台湾で出会うんだ』『なんで製茶体験なんか、しているんだ』と言ってきた。自分でもどうしてだか、分らない。

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彼女は以前魏さんの上海の店を任されていたが、その後は自ら茶芸師として活動しているらしい。今回の台湾も各地の茶産地を訪問して見聞を広め、いいお茶を捜し歩く旅をしている。殺青の作業が始まると、私などよりはるかに真剣にその作業を見つめ、そして時々質問している。中台交流、というのだろうか。まあどこの国の人間かは関係ない。お茶が好きな人が集まっているのだから。殺青が終わると、横の揉捻機に茶葉が入る。そしてそれが終わると、乾燥。この乾燥機が手動でしゃれている。皆が面白がって挑戦している。昔は何でも手作業だったんだな、と改めて感じさせてくれるナイスな一品だった。

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お父さんも加わり、もう少し良い茶葉を天日で干す。工場の奥には家があり、そこにはこのお父さんのお父さん、つまりはおじいさんがいるらしい。この茶作りはある意味で、孫がおじいさんのために茶を作っているかのように、長男は一々茶葉をもって奥へ行く。そして指示を仰いでいるようだ。創業1921年と言うから年季が入っている。おじいさんは一体どんなお茶を求めているのだろうか。次男も加わり、茶作りが佳境を迎えた。

 

上海から来た一団は帰って行き、そしてランチの時間がやってきた。豆腐、粽、麺、野菜、と実に豊富な昼食だった。恐らくはさっきの一団も一緒に食べる前提で作られたと見え、その量は凄まじく多い。まあ、美味しいのでどんどん食べるが到底追い付かない。農家で食べる料理が一番美味しい、と言うのはほぼ間違いがない。食後は作り立てのお茶を飲む。我々が作った?お茶は未だ乾燥が十分ではなく、飲めないのが残念。

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埔里まで

試飲会のつもりで来たら製茶体験だったが、何となく楽しいものだった。お茶の完成までいたいと思ったが、今日はこれから台北に戻り、その足で埔里を再訪する予定になっていた。新店行のバスは2時半だったので、2時過ぎに工場を失礼して、車でバス停に送ってもらった。生徒なので学費800元を払い、乾燥が半端なままのお茶を受け取った。更に店にも寄ってもらい、前回買って好評だった焙煎の効いた包種茶を購入した。正直に言うと、私は包種茶が苦手な方だが、焙煎が効いているお茶が美味しく飲めた。私の嗜好が極端に偏っている良い例らしい。

 

新店までバスで1時間弱かかるが、1つ前のバス停も地下鉄が通っていたので、そこで降りる。小雨が降り始めていた。そこから地下鉄で中山まで戻り、ホテルで預けた荷物を引き出した頃には幸い雨も上がっていた。4時半のバスには少し時間があったので、ゆっくり歩いて駅前のバスターミナルへ。雨であれば地下道を通ればよいが、やはり地上を行く方が速い。

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