台湾南部ぶらり茶旅2015(15)鹿野 茶業改良場を訪問

私は皆が帰ったであろう、6時過ぎに店に入る。おばさんがまた来たか、という顔をした。観光客でここに二晩も泊る人間などいないのだろう。例えいたとしても、車で来て、食事は郊外の道路沿いのレストランへ行くに違いない。私はある意味で怪しい人だということだ。

 

今晩は魯肉飯とキャベツ炒め、そしてスープを頼んでみる。スープは野菜がたっぷり入っており、味もよかった。キャベツは勿論新鮮でシンプルに炒められている。家庭料理の延長だが、こんな定食が、実に有難い。おじさんが二人、酒を酌み交わしながら、何やら議論している。台湾語なので何を言っているか分からないが、結構白熱してくる。おばさんはじっと見ている。恐らくある程度以上エキサイトしたら、家の人を呼んで引き取ってもらうのだろう。。

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11月16日(月)

翌朝も早く起きた。鳥のさえずりが心地よい。1階で朝食を食べていると、『今日は改良場へ行くんでしょう?』と奥さんに聞かれる。一昨日出会った場長さんと9時に訪ねる約束をしていたが、問題があった。どうやっていくのか、勿論場所も分かっているし、歩いていくことは可能だ。だが、荷物をどうするのか。一度そこへ行き、終わったら民宿に戻って、荷物を持ってバスで台東へ行こうかと言うと、奥さんは『場長さんに迎えに来てもらおう』と言い出す。

 

いくらなんでも初めて会った偉い人に迎えに来てほしいなどとは、日本人としてはとても言えない、というと『電話番号を貸しなさい』と言われ、彼女はあっさりと場長に電話してしまった。『田舎ではこんなことはよくあることよ』と全く意に介さない。9時前に改良場の車がやってきて、荷物を積み込み運ばれて行った。これもまた台湾ならでは、であろうか。日本でも田舎ならそうだろうか。実に呆気なく、この素晴らしい民宿をチェックアウトした。

 

茶業改良場にて

5分で改良場に着いた。運転手は私の荷物を2階まで運んでくれた。場長の呉さんが待っていてくれた。早速鹿野の茶業改良場の歴史などについて教えてもらう。ここは他の改良場と異なり、1984年というかなり新しくできた場所であり、その設置理由は、東部の産業振興にあったであろうことは想像できる。呉さんの担当地域も鹿野だけではなく、花蓮までの東部全体が含まれていることから、何故近年花蓮付近で紅茶製造が盛んになってきたのか、その理由が分かるような気がした。

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直ぐに茶畑へ出てみる。この改良場の周囲は全て、試験用に植えられた茶畑であることは昨日既に見ていたが、実際にそばで見てみると、その品種の多さは驚くほどだ。台湾の品種は当然としても、世界の色々な品種をそろえている。日本のやぶきたまで植えられているのである。これらを使い、日々この地に適した新品種の開発をしているようだが、それは大変な苦労であろう。

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改良場内には、試験用の製茶工場まであり、実際に茶葉を摘み、お茶を作っているという。お茶も実に様々な工夫を施し、挑戦している。烏龍茶をお椀型の沱茶にしてみたり、黒茶にあるブロック型の磚茶に固めたものもあった。如何にして茶を作り、如何にして売るか、実践的な解決が求められている。ただ茶農家や茶商ではないので、あくまでも茶の普及が目的ではあるが、単なる研究ではことは済まないようだ。

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台湾における野生茶樹についても聞いてみた。先日阿里山で見た、老木のことが頭に引っかかっていた。確かにこの付近の山中にも、老茶樹は存在し、それを野生とか、在来とか、山茶と呼んだりしているが、それが中国大陸かどこからもたらされたのか、それとも古来より自生しているのかは、よくわかっていないようだ。やはりかなり難しい問題であるらしい。

 

鹿野駅から

あっという間に2時間が過ぎ、お暇することにした。申し訳ないが、また荷物を積み込み、車で送ってもらった。鹿野駅までは坂を下りていくだけ。車なら10分で着くが、歩くと1時間弱かかるかもしれない。もしバスを待つと何時間に一本しかないらしい。これは大いに助かった。鹿野駅の周辺は本当にローカル駅の風情が漂っていた。駅で写真を撮っていると、駅員の女性が『列車に乗るのか』と聞いてきた。何と5分後に高雄行きの自強号が来ると言うのだ。この駅、自強号が停まるんだ。

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慌てて切符を買い、ホームに行く。私は時刻表など見ていなかったが、どうやら1時間に一本程度しかない列車に偶然乗れたようだ。これも全て送迎のお陰。バスで台東に戻っていたら、それだけでも2₋3時間違っていただろう。何とも面白い旅だ。列車は15分後には台東駅に着いた。そしてそのまま、屏東を経て、2時間半後に高雄に戻った。途中、車内販売で台湾鉄道名物の弁当を買い込み食べる。排骨、たまご、さかなどが入って80元で大満足。

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高雄から速い電車に乗り継ぐことはできるのだが、それでは面白くないし、時間も節約できているので、ここは敢えて各停で台南へ行く。一度改札を出て、自販機で切符を買い直す。台南まで1時間乗って、68元、やはり安いな。各停も意外と混んでいて、何とか席を確保する。台南まで乗客はどんどん入れ替わった。ここまで乗る人は、やはり自強号などに乗るものだ。

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