台湾南部ぶらり茶旅2015(7)阿里山の在来と老茶樹

宿に戻ると何とお爺さんが、昨日作ったお茶を自ら袋詰めしていた。これはやはり彼の仕事であり、息子には任せられないらしい。『息子の作る茶は軽過ぎる』と昨日も言っていたので、伝統的な茶と商売になる茶の衝突がこの家でも起きていると分かる。これは決してどちらが良いとか、どちらが正しいとかいう問題ではない。ただ顧客に支持される物を作っていれば、滅びることはないだろう。

 

既に宿の夫婦は朝食を済ませたらしい。私の分は、製茶機械の横に置かれていた。目玉焼きにキャベツ炒め、そして漬物とお粥。私の大好物だ。台湾に来ても最近はなかなかこのような朝食にあり付けないので、とても嬉しい。散歩の甲斐もあり、食欲はかなりあるので、粥を三杯も食べる。

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在来の茶畑と老茶樹

宿の主人が軽トラで茶畑へ連れて行ってくるというので、有難く着いていく。奥さんから暑いよ、と言って編み笠を渡される。茶畑はここ隙頂ではなく、隣の龍頭にあるという。車ですぐの距離だった。この茶畑、斜面に茶樹が株ごとに植えられていた。誠に原始的?なところで、驚いてしまった。一部枯れているものもある。『35年前、阿里山に茶樹が植えられた初期はこんな感じだった』と、主人が話す。まばらな茶樹を見て、何となくダージリンを思い出す。

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隣の畑は畝になっていた。阿里山には在来と言われている茶樹が沢山あるとのことだったが、こちらは在来種を新たに畑に植えたらしい。在来種を差し木して、農薬も化学肥料も使わず、丁寧に管理しているという。茶葉が肉厚で、エキスが内包しそうでよい。どんなお茶が出来るのだろうか、これからが楽しみだ。

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更には老茶樹があるというので、そちらも見に行った。阿里山公路を入ってすぐの場所に、その樹木はあった。かなりの背の高さがある。そして何本かある。これは、まさか、先日行ったベトナムで見たカメリアタリエンシスだろうか。それともアッサム種が育ったのだろうか。もしアッサム種なら、台湾に持ち込まれて100年程度だろうが、この村の言い伝えでは、この茶樹は150年以上経過しているらしい。

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もしタリエンシスであれば、元々台湾にタリエンシスが自生していたのだろうか。それとも誰かが持ち込んだのだろうか。松下先生の説を借りれば、ヤオ族かそれに類似した民族が海を渡って、この木を焼き畑と共に持ってきたのだろうか。台湾にそれがあるなら、日本にもあるだろうに。何とも妄想が膨らんで止まらない。真実は一体どこにあるのだろうか?誰か教えてほしい。

 

それから公路を通っていくと、摘んだばかりの茶葉を干しているところがあった。今は冬茶シーズンが始まっていた。何となく車を降りて、見学する。主人が私を日本人だというと、皆が笑顔になるは有難い。ここは村の共同製茶施設なのだろうか。大勢の人が来て、茶作りに励んでいた。

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品評会連続受賞者

実は昨晩宿でネットが繋がったので、『現在隙頂という場所にいる』とFBでつぶやいたところ、ある人から、『せっかくそこにいるのなら、蘇さんのところへ寄ったら』とのメッセージが入っていた。宿の主人に聞くと『知っているから、彼のところへ連れて行ってあげる』と言われて、電話で在宅を確認の上、急きょ訪ねることにした。さて、どんなところだろうか。

 

その家は公路から少し入ったところにあり、もし言われなければ立ち寄るような場所ではなかった。品評会に入賞した板、そして紙が所狭しと貼られているのが、嫌でも目に入る。彼、蘇さんはこの辺のコンテスト入賞常連者、いや、コンテストに入賞する茶を作っている人ということらしい。だから、このあたりで知らない者はないないという有名人だった。

 

中に入って、早々にお茶を頂く。軽いな感じながら、しっかりした味わいがあった。外では焙煎が続けられている。蘇さんもどうしてもそちらに気を取られている。焙煎は一瞬の判断で良し悪しが決まるだろうから、私の相手などしなくてよいのにと思いながらも、お茶を何杯も啜ってしまう。

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蘇さんは、数人の仲間と一緒に、中国へ茶葉の売り込みを行っているという。台湾茶王、と書かれた箱に入れて、茶葉を持って行っている。少しずつ売れてきているらしい。中国で台湾茶はかなりの人気があり、実力があれば、かなりの高値で取引されることもあるようだが、どうなんだろうか。

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蘇さんが焙煎に取り掛かり始めた。かなり丁寧に仕上げている。大量生産ではない、手作りの感じが出るお茶、これからは、このようなお茶が大切だと思うが、一方でなかなか収入が増えないというジレンマを抱えているのではないか、と思ってしまう。それが彼を大陸に向かわせた要因であるならば、台湾も何かを考えなければならないことを示している。

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