茶の源流を訪ねるベトナム茶旅2015(7)茶作りとタリエンシス

10月28日(水)

生葉発見

翌朝も天気は良かった。朝7時には皆が揃って朝食。同じ部屋の同じ席に座って食べている。これで3食連続だ。如何にも日本人らしい。朝食はパンと卵焼き。まあこんなものだろう。食後にお茶、というのがこのメンバーの常識であり、ホテルにある渋いお茶を淹れて飲む。しかしそれに飽き足らないSさんは、厨房の方に突入して、何やら家探しを始めている。

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そしてついに厨房脇の部屋の隅に放置されている生葉を発見した。どうするのかと見ていると、そこにいたおばさんに生葉を指さし、『これを分けてくれ』というジェスチャーをしている。だがおばさんは『これが飲みたい』と解釈したのか、突然水の入ったボールに生葉を浸し、葉を手で揉みくちゃにし始めた。手もみ?それをポットに入れて、さあ飲めと言われたのは驚いた。

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普通ならこんな面白い体験に満足して、そのお茶を飲んでみるだろう。だがSさんはあくまでも初志貫徹、そんなことでは怯まない。おばさんに再度アタックして、ついに生葉をゲットしてしまった。勿論お金を払おうと紙幣を見せたが、おばさんは笑顔で、そしてちょっと怪訝そうに、ボールに一杯の茶葉を差し出した。確かにこんなところに日本人がやって来て、生葉を欲しがっている。一体何をするのだろう、不思議がるのも無理はないだろう。

 

Sさんはその葉を持って外へ出た。そこにはちょうど良い大きさの笊があった。その笊に葉っぱを入れて、天日干しを始める。これで完全に茶作りの体勢に入った。これまで茶畑見学に行き、色々な人を見てきたが、その葉を使って自分で茶を作り始めた人を初めて見た。ホテルのベトナム人も何が起こったのかと見に来たが、Sさんの行動は皆に理解されたようだ。そして何と我々が出かけた後、誰かが太陽の移動に合わせて、その笊を動かしてくれ、午後には日陰に置いておいてくれた。全く言葉を介さない、すごい文化の交流だ、と思えた。

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サーザーフィン村の副委員長訪問

今日も車で昨日と同じ村へ行く。サーザーフィン村というらしい。辺鄙な中に村役場があり、副委員長なる人物を訪問した。こういう公式の場には、例の公安も付いてきている。何やかんや言っても、ベトナムは世界で5つ残された社会主義国の1つだ。どんな村にも党支部があり、支部委員なるものが存在する。そして外国人の辺境訪問には形式的にチェックが入る。

 

その副委員長はまだ若者であり、党の指示で別のところからこの村に派遣されたよそ者だった。中国でもこういう経歴で、偉くなっていった人を見てきたが、今のベトナムではどうだろうか。因みに公安も他所から出張してきているようだったが、どう見ても仕事をするような雰囲気は持っていない。

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サーザーフィン村の人口は約2000人、大半をモン族が占めており、ヤオ族は150人、キン族(ベトナム人)は僅か65人しかいないのだという。因みにシンホ全体の人口は約6.5万人。内モン族とタイ族で35%、ヤオ族も28%いるという。実はM先生の狙いはずばりヤオ族。この移動民族こそが、茶の伝播に大いに関係しているというのが、長年の先生の研究結果であり、今回もタリエンシスの探索と共に、ヤオ族の動向を掴むことが主目的であった。

 

そういう意味からすると、サーザーフィン村にはヤオ族が少ないため、ここ以外へ行ったほうが良さそうだと思ったが、副委員長は実に親切で、この村の状況を説明し始めた。既に昨日見たとおり、この村には山茶花が植えられているが、あれはハノイ大学の先生など、ベトナム人がやって来て、海外からの支援をテコに、油を取るためのプロジェクトを始めたということだった。その結果、邪魔になったタリエンシスが切られている、という事実を裏付ける発言もあった。そしてこの油を購入するのは何と中国人だという。化粧品など、色々と使い道があるらしい。

 

そして彼は、彼らのいうところの茶(タリエンシス)がある場所を知っているので、案内してくれるという。また歩いて山の中に突撃した。そこには確かにかなりの大木となった茶樹のような木が何本もあった。M先生とSさんが突進して確認をはじめ、最後はY先生が判定を下す。『そうだ』となれば、M先生が『メジャー』と言い、Y先生が巻き尺を取り出して素早く太さを計っている。そしてM先生が写真に収める。何とも見事な連係プレーだった。

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一方Sさんはその付近に分け入り、花や実の探索に余念がない。それらが見つかると、またY先生に鑑定を頼む。相変わらず私には何のこっちゃ、分からないのだが、『これはいい実ですね』とか『植えたら育ちますよ』などという声が聞こえてくる。最近は日本でも種から植えることは少ないと聞く。ただ種から植えた方が、キチンと根を張りよく育つとも聞く。

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