入間高麗茶旅2015(3)お茶屋さんから高麗神社へ

そしてもう1つ。『琥白』という商品は、萎凋を行い、釜炒りした独特のお茶。『緑茶でも、烏龍茶でもない、全く新しい日本茶』として売り出しており、そのチャレンジは大いに買いたい。釜炒りも、日本から姿を消した殺青手法だが、中国の緑茶ではごく普通であり、この方がスッキリして飲み易い上、茶葉の処理がとても簡単などとの声も聞かれ始めている。

 

私がエコ茶会の話をすると、Sさんは『2年前に浜松町のエコ茶会を見に行った時は正直驚いた。こんなに沢山の人、特に若い人達が楽しそうにお茶を飲んでいる姿を見たのは初めてだった。あの光景を思い出すだけで、茶業の将来について勇気が沸いてきた』と勢い込んで話してくれた。全くその通りだと思う。今の日本茶は生産者と消費者の間が大きく開いてしまい、生産者は消費者が何を求めているのか、よく分からなくなっているのではないか。

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また日本茶について、中国茶や紅茶などと大きく違っているのは『香り』ではないのか。日本茶には香りがなくなっていると感じているのは私だけだろうか。子供の頃、お茶屋さんといえば、店先でほうじ茶のあのいい匂いが忘れられない世代もいるのでは。最近はほうじ茶や番茶を買う人も増えていると聞く。一般的な煎茶には何か物足りないものがあると感じている層もいるはずだ。Sさんは台湾にも修行に行き、東方美人のような烏龍茶を作る現場を実際に経験したという。このような体験が、お茶の世界を広げていくのでは、と思う。

 

だからこそ、例えば生産者がもっと、様々なタイプのお客の前に出てきて、対面でお茶を淹れ、直接お客の感想を聞き、ニーズを聞く必要があると思う。来年はぜひエコ茶会など、イベントにも出店して、直接体感してほしい、他の生産者とも交流して欲しい、と伝えた。中国茶・台湾茶の関係者はこのような萎凋香は慣れたものであり、また日本茶の世界でも、説明の仕方によっては、新鮮なお茶として受け入れられる可能性が十分にあると考えている。

 

因みにこちらのお店でも来客数は年々増えているという。だがそれは常連さんを基盤とした、高齢者の方々、特に奥さんを亡くしたおじいさんなど、話し相手を求めてきている人も多いらしい。それはそれでよい。お茶を通じた一つのニーズだ。ただ若者の将来は長い。彼らのニーズに合うお茶を是非開発して欲しいと願う。話しは3時間にも及び、その間お母さんは、もう一人のおばさんと2人で、ずっと手を動かしていた。この地道な努力はきっと実を結ぶだろう。

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高麗神社

既に夕暮れになっていたが、やはりどうしても高麗神社に行ってみたくなる。実はWさんは地元タウン誌の編集を長年やっており、そのこともあってか、数年前から『高麗郡建郡1300年記念行事』にボランティアで関わっているという。来年がその1300年に当たるようだ。

 

668年に滅んだ高句麗、その混乱の中で王族など多くの高麗人が日本へ渡ってきた。そして716年、武蔵国に高麗郡が置かれ、関東付近の渡来人はこの地に集められる。当時渡来人は高い技術力を持っており、それを利用してこの辺りを開拓したという。そして当時の高麗王、若光の遺徳をしのんで作られた霊廟が高麗神社のはじまりとされ、若光の子孫が宮司を務めている。

 

鳥居を潜り、参道を行く。そこには沢山の植樹がなされていた。日本の総理大臣経験者の名前もある。出世明神と言われているとかで、若槻礼次郎、斉藤実、鳩山一郎などがここに参拝後、総理大臣になったとある。ここに来れば総理になれるのか?皇族の参拝者も沢山いるようだ。勿論駐日韓国大使なども参拝している。高麗神社は実に不思議な神社、と言わざるを得ない。

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本殿は来年の行事に備えて一部改修中とのことだった。暗くなってきたので帰ろうとしたが、ちょうど人が通りかかった。Wさんがみなに挨拶している。と、一人の男性に紹介された。それが日高市の隣、鶴ヶ島市の市長だった。鶴ヶ島でも茶が採れるとのことで、ひとしきり話をした。鶴ヶ島は他の街よりさらに高齢化が進んでいるとのことで、危機感がかなりあるようだ。茶業の将来についても熱心に話している。

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完全に暗くなり、帰途に着く。高麗神社は駅からかなり離れており、またJRの電車がどのくらい走っているか分からないという理由で、Wさんの車で朝下りた武蔵藤沢駅まで送ってもらった。今回日高市に初めて行き、この付近の歴史には興味深いものがあることを認識した。お茶との関連性はないとのことだったが、またぜひ訪れた。

 

尚本日声を掛けた入間のK君から、直前になって『当日撮影が入ったので、行けません』とのメッセージが入った。その撮影とはテレビ東京の人気番組「出没!アド街ック天国」のロケだった。入間というより、彼のお店がある『ジョンソンタウン』の特集であり、後日番組を見ると、お店と彼が映っていた。

 

ジョンソンタウンは、元々米軍ハウスと呼ばれる平屋のアメリカン古民家で米軍の住居。米軍撤退後、平成ハウスと呼ばれる現代的低層住宅が建てられ、樹々の間に点在している。アメリカ郊外の街並を想わせる。最近はカフェなど、店舗として貸し出されており、そのおしゃれな雰囲気が受けている。入間にはこんな場所もあるのかと、前回訪れて感心した。因みにK君のお店はその中で唯一日本的な建物を保持しており、異彩を放っている。

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