入間高麗茶旅2015(2)日高 巨大ラーメンと萎凋香

2.日高

駅前の巨大ラーメン

アリットを後にして、車は入間を離れた。今回Wさんから連れて行きたいお茶屋さんがある、とだけ聞いていたが、それが入間市内ではないことに少し驚く。日高市を目指していくという。そこには何があるのだろうか。予想とは違い、入間と日高はかなり近かった。この辺の距離感は私には全くない。

 

昼ご飯を食べていなかったので、お店の近くで食べようということになったが、なぜか蕎麦屋も食堂も閉まっているところが多かった。どうやら水曜日が定休日、というのがこの近辺の標準らしい。昨年も長崎で経験したが、日本の地方都市に行くと、このようなことに出会うことが偶にある。皆で一斉に休まなければお客さんも困らないし、商売にも繋がる、と思うのだが、慣習は何故破られないのだろうか。抜け駆け禁止なのだろうか。解せない。

 

JR川越線の武蔵高萩駅というところに来た。こんなところに駅があるのか。洋菓子の不二家が駅前にあるなんて、何とも昭和な感じがする。しかし駅前の食堂なども閉まっていた。これはもうどうしようもない、と思った時、駅の横にTというラーメン屋が見えた。ここしかないので入ってみると、お客は男性ばかり。メニューを見ると、普通のラーメンが800円、大盛りは1000円程度する。結構高いような気もするが、どうなんだろうか。他に選択肢はない。

DSCN8484m

 

午後1時半前のこの時間でもお客が結構いる。とても忙しそうで、注文を取りに来てくれないので、こちらから声を掛けると、おばさんが何とか対応してくれた。ラーメンに卵を入れて、と注文した。老夫婦が2人だけで切り盛りしている店。ラーメンを作っているお父さんの表情はかなり険しい。Tというのはそんなラーメン店なのだろう。

 

ドンブリが運ばれて来てビックリ。その量の多さは並の大盛りではない。そこに卵など載せてしまったので、その器の中身には迫力がある。腹が減っていると頭では認識していたが、これを見て食欲が少し落ちた。それでもこれは義務として食べなければならない。味は正直分からなかった。ただひたすら食べることに集中した。その集中力が続かなくなるころ、何とか食べ終わった。なぜこんなに多いのだろうか?その理由を聞いてみたいが、そんな雰囲気はない。

DSCN8486m

 

一緒に食べた女性のWさんは、当然ながら早々にギブアップしてしまった。何となくお客さんの視線がきつい。ラーメン好きの常連さんが行く店であり、素人さんは気をつけた方が良い、ということか。日本にはこんな店も多い。代金を支払い、早々に引き上げる。こだわりとは言いながら、どうなんだろうか。

 

ものすごく腹一杯の状態で、お茶屋さんへ行くのは、かなり危険だと思った。私は車には乗らずに、駅前から歩いてお店に向かった。少しでも腹をへこませたかったのだ。駅からすぐの道路脇には、昭和天皇の行幸記念碑というのが見えた。昭和16、17,19年の各3月に行幸しているという。第二次大戦中にここに行幸されている理由は一体何だろうか。どこにもそれは説明されていない。ただこの近くには高麗神社がある。何か関係があるのだろうか。

DSCN8489m

 

備前屋さんで

駅前から国道に出て少し行くと、明治初年創業の備前屋というお茶屋さんがあった。Wさんの車が私を追い抜いて、駐車場に入った。狭山茶、という文字が見える。ここは日高市だが、名称は狭山茶に含まれるようだ。ブランド名、面白い。実際には入間や日高で作られているのに、狭山茶か。

DSCN8490m

 

お店に入ろうとすると、後ろの事務所へどうぞ、と言われ、そちらから入る。すぐに目に飛び込んできたのは、姉さん被りをしたお母さんの姿だった。しかも彼女は枝取りをしていた。中国のお茶屋さんではよく見られるこの光景だが、この細かい作業を日本で見るのは初めてだった。正直ビックリ。お母さんは農家の出身ということで、昔から色々な農作業を経験しているのだという。

DSCN8501m

 

この部屋のテーブルの上には湯を沸かす釜がセットされていた。ご主人のSさんが釜から湯をすくい、笑顔でお茶を淹れてくれた。なぜWさんは私をここに連れてきたのか、それはこのお茶を飲んですぐに分かった。私好みの煎茶なのである。何と言っても萎凋香がある。これは素晴らしい。

DSCN8495m

 

萎凋香は世界中の高品質な茶に共通する、普遍的な「かおり」であるはずなのだが、日本の煎茶世界では『萎凋香は欠陥品』として、問屋は取り合ってくれない、売れない物だという話を聞き、本当に驚いてしまった。何ということだろうか。中国茶・台湾茶の世界に居る者としては、あり得ない話が日本ではまかり通っているように思えてならない。茶の個性を尊重しない?それは日本茶の世界だけでなく、日本全体の教育問題などにも繋がるものではないか、と思ってしまう。

 

備前屋では「やぶきた」と「ふくみどり」という2種類の品種を使って、天日で萎凋することにより、萎凋香あふれる煎茶を生み出している。鮮やかな「かおり」と甘みのある、のど越しの爽やかなお茶。実に好ましいと感じるのは私だけだろうか。こんな試みは嬉しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です