入間高麗茶旅2015(1)お茶博物館 アリットで

《入間高麗茶旅2015》  2015年10月22日

 

入間市博物館、通称アリットに初めて行ったのは確か10年前だった。ここは別名お茶博物館とも言われており、お茶関係の資料もあり、また知見のある方もいる。お茶大学も開かれている。茶旅に出てスグに一度お訪ねし、台湾で茶作りに関わった日本人のその後に関する資料を探したことがある。しかしここ4年はご無沙汰していた。

 

今年に入り、6月に久しぶりに入間へ行ったが、比留間園さんで6時間の長居をしてしまい、茶畑すら見ずに帰ってきた。9月にはアリットへ行き、資料室で参考図書を見る機会を得たが、どうしても分からないことがあり、更に話が聞きため、今回ついにあの人に会いに行った。

 

1.入間

博物館でKさんと

そもそも私を入間に導いてくれたのはWさんだった。10年前に香港で出会い、その後東京に戻った際に、入間のお茶関係者を紹介してくれるなど、大変お世話になった。5月のゴールデンウイークのお茶イベントには2年続けてお邪魔し、あの美しい茶畑に感動したり、茶作りの現場を見学したりと実に思い出深い。

 

最近また連絡が復活しており、今回はWさんの誘いで、入間入りすることになった。いつも行く西武線入間市駅ではなく、武蔵藤沢駅で待ち合わせ。これも最初の訪問と同じで、何となく懐かしい。あの時小学生だったお嬢さんは今は大学生になっているという。Wさんの車に乗せてもらい、アリットへ。

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平日の午前中、アリットはひっそりとしていた。受付で案内を乞うと、学芸員のKさんが出てきて、奥の部屋に案内してくれた。これまで何度かお会いしているKさんだが、これまではいつもイベント会場で挨拶する程度であり、直接に長時間、面と向かってお話を聞くのは初めてではなかろうか。

 

日本茶に関する知識は日本でも有数。そのお茶の交友関係も非常に広く、お茶関係者なら知らない人はない、日本中からお声が掛かる存在だった。私は初めてお会いした時、そのような有名人とはつゆほども知らなかったが、後で日本茶の本を読むと何回も名前が出てきて驚いたことを覚えている。何しろ気さくな方なので、そのようには見えないが、そんな人が本当は怖い(笑い)のだ。

 

Kさん自らお茶を淹れて頂いたが、それはご自分で作った烏龍茶だった。『定年になったら、お茶作りをしようと考えていた。近所の茶農家の畑を借り、製茶機械も借りられるんだが』というのだが、その夢は日本茶業界に必ずや阻まれるに違いない。恐らくはこのアリットにとって、いや日本にとって、手放すことができない人材として、一生涯、茶業の為に貢献されることだろう。Kさんに後継者がいるとは聞いたことがないない。それにしてもこの烏龍茶、福建の岩茶の梅の香りがほんのりする。どうやってその作り方を学んだのだろうか。

 

ここアリットの部屋には北限茶、という文字が見えた。先日行った新潟村上のことかと思ったが、実は更に北、秋田県の檜山茶というのがあるというのだ。村上同様、江戸時代からお茶が作られていたが、現在では既にほぼ生産する農家がなく、幻のお茶となっているが、アリットではこの茶のサポートをし、イベントも開催している。この辺もKさんの尽力が大きいようだ。

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江戸時代、庶民は一体どんなお茶を飲んでいたのか、または飲んでいなかったのか。具体的には『長屋の熊さん、八っさんの飲んだお茶は』という課題を抱えている私。この点について、色々な人に聞いてきたが、『そんなことは考えたこともなかった』という答えが多かった。時代劇の長屋の様子には必ず、茶を飲んでいる場面があるのだが、あれは一体何なんだろうか?

 

だが、Kさんは具体的な資料を提示して、その考え方を示唆してくれた。この辺りも多くの資料を読み込んでおり、普段から茶の歴史を十分に検討しているKさんならでは、と感心する。これまで幾多の講演会をこなしてきており、その膨大な資料の一部をご提供頂いた。資料と知識、その2つから話される内容には、非常に説得力がある。私のように手っ取り早く資料を集めて纏めよう、というやり方では、いつになっても足元にも及ばないことを知る。

 

午前11時に伺ったのだが、昼休みの時間も大いに過ぎて、2時間近くもお話を聞いてしまう。誠に申し訳ない思いだったが、私の方としては、実に収穫の多い訪問となる。Kさんのお邪魔をしてしまった訳だが、『今度は昼間じゃなくて、アフターファイブにしましょうよ』という温かい言葉を頂き、本当かな、と思いながら、博物館を後にした。聞くところによれば、Kさんは北国の出身でお酒は非常に強いらしい。お茶関係者にはお酒が強い人が多い、と台湾や中国では思うのだが、日本でもそうなのだろうか。果たしてこのアフターファイブ企画は実現するのだろうか?私は酒が飲めないが、是非とも実現したいと思っている。

 

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