北限のお茶を訪ねて2015(4)村上の鮭

鮭料理

Iさんに連れられて、鮭料理を食べに行く。とても立派な料亭に入る。村上に数軒ある鮭料理の店はどれも老舗で、その歴史は相当に古いようだ。中庭などもあり、ここも奥行きが相当に広かった。その個室に入ると女将が自ら村上鮭の歴史や料理について説明してくれた。村上は鮭が名物。三面川は古来より鮭魚産卵孵化の川だったが、明治に入り、天然種殖場の外、孵化場を本町堀片に設置し、漁獲高が多いに上がったという。村上の一大産業である。

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鮭は頭から尾っぽ、内臓まで何ひとつ捨てるところが無い滋養食。いくらや刺身は勿論、鮭を使った酒びたし、ルイベ、腹子、すっぽん煮など、非常に手の込んだ料理がきれいに並べられていた。酒飲みには堪らない、つまみにちょうどよい品々だろうと思う、鮭尽くしのメニューとなっていた。味にコクがある。これで新潟の地酒を飲めば、さぞや気持ちの良いことだろう。鮭は焼くのが一番、と思っている私などは、村上では笑い者かもしれない。

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食後、今度は鮭の商品を売る店へ行く。店の名は喜っ川(きっかわ)。あの吉永小百合がこの店の前で撮影したJR東日本の「大人の休日倶楽部」のCMの場所としてもかなり有名だと聞いた。休日にはここで吉永小百合と同じポーズで記念撮影をする観光客が大勢いるという。

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古い建物に入ると、100種類以上の鮭商品が並べられている。我々はそこ通り過ぎ、ズカズカと奥へと進む。何とそこには千匹もの鮭が1年もの間天井から吊るされ、乾かされている。腹は既に割かれて内臓は取り出されている。何故頭を下にして吊るすのか。また腹は完全に割かず、間で止めてある。武士の街では、切腹は忌み嫌われるためだという。それにしても何という豪快な眺めだろうか。秋鮭が最高だというが、まだちょっとシーズンには早かった。鮭に塩を丁寧に塗り込み、1週間漬けて、今度は塩抜きをして、1週間陰干しすると塩引きが出来るという。塩加減と熟成の味が決め手だという。

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江戸時代、村上藩の主要な財源となっていた鮭。後期になると、だんだん不漁になり、藩の下級武士・青砥武平次が世界ではじめて鮭の「回帰性」を発見。その性質を生かし、三面川に産卵に適した分流を設け、鮭の産卵を助けることで鮭の回帰を促した。世界初の「自然ふ化増殖システム」。三面川の鮭の漁獲高は飛躍的に増え、藩の財政も潤い、村上は鮭の街としての地位を確立。

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今は北国の小さな街にしか見えない村上だが、その食文化、伝統文化はかなり色濃い。そして驚くほどの豊かさが感じられるのは、歴史のなせる業だろうか。時間の関係で鮭とお酒、そしてお茶だけを見て新潟に戻ることになった。電車で来ることも出来るようなので、次回はもっとゆっくりこの街を歩こう。

 3.新潟2

Iさんの車で送ってもらい、新潟市へ戻り、川沿いにある新潟市歴史博物館で別れた。この博物館もがっしりした立派な建物だった。中には新潟の歴史が展示されており、特に幕末開港以降の歴史を中心に見た。新潟市は阿賀野川と信濃川の大河2つが交わる要所。そして日本海を経て朝鮮半島やロシアに繋がる場所。ここから大陸に旅立った人も多かったのではないか。何となく逃避行とか、共産党という文字が頭に浮かぶ。1955年に新潟大震災があった。その後防災都市として、復興していく。街が比較的整然としているのはそのためだろうか。

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博物館の前にはもう一つ石造りの立派な建物があった。Kさんが勤務していた銀行の支店をここに移したという。1階には銀行カウンターがあり、2階には金庫もあった。更にもう1つ、新潟税関の建物もこの敷地内にあった。城の櫓と洋風の窓、擬洋風建築、幕末開港された税関の中ではここだけ建物が残っているという。明治初期、この税関はどれほど機能したのだろう。

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それからブラブラと駅の方へ歩いていき、居酒屋へ入る。夕方5時でも結構お客がいる。今日は花金、という言葉はまだ死語ではないのか。いや、午後5時に来る客はサラリーマンではあるまい。今や退職した世代が早めに飲み始めるため、時間帯が早くなっているようだ。店員の若い子も、おじさんの扱いに慣れているのがその証拠ではないだろうか。愛想がいい。

 

Kさんが『新潟市のものではないが、〆はへぎそば』で言い、居酒屋を出て、蕎麦屋へ行く。確か昔1度食べた記憶がある。へぎそばは、新潟県魚沼地方の発祥、つなぎに布海苔(ふのり)という海藻を使った蕎麦をヘギといわれる器に盛り付けた切り蕎麦のことをいう。2人でこんなに食べるのかと思ったが、あっという間に平らげてしまった。何とも贅沢な夕食をKさんにご馳走になる。今回は大変お世話になってしまった。

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駅でKさんと別れ、ホテルへ戻り、陶板浴を体験する。サウナのようなものだが、陶板の上に寝転がっているだけ。そのうち体が温まり、汗が出てきた。皆携帯を見たり、何かを読んだり、ただ眠ったりと、まさに思い思いの体勢でジッとして、この空間を利用している。40分ほどして出て、シャワーを浴びると、体がふわっと軽くなった印象がある。これなら風邪気味の昨日も利用するべきだったと後悔したが後の祭り。睡眠も少し深くなったように思う。

 

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