京都茶旅2015(5) 地獄のトレイル

トレイル

この川沿いの道は京都トレイルのコースになっているようで、案内図が出ている。まずは関西電力清滝発電所、水が積止められて小型のダムになっている。その先からは歩き難い川沿いの道を行く。ただ風景は最高に美しい。行き交う人も殆どいない。3㎞ぐらいはそんな軽いアップダウン(岩をつたったり)を行く。愛宕神社の下に出る。比叡山と並び称される京都の山、本当は上ってみたかったが、標高900mを越えており、先ほどの文覚の墓に登ったダメージから断念した。

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清滝猿渡橋、いい感じに架かる橋の横には、これまたいい感じの旧家が川に面して、建っていた。宿屋か料亭か。この景色に見とれた私は、更に川沿いに歩いてしまった。本当は道路沿いに行けば、清滝バス停からバスに乗ることが出来たのだが、完全にこれを見落としてしまう。与謝野晶子の歌碑が見え、更に奥深い川沿いの絶景が見えてくると、もう前に進むしかない。

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向こうからフランス人の若者が一人でやってきた。相当疲れているようなので声を掛けてみると、嵐山からすでに10㎞ぐらい歩いてきているようだった。高雄までまだかなり距離があることを伝えると、ちょっとがっかりしていたが、若いので、スタスタ行ってしまった。だが、私の方はどうすればよいのだろうか。さすがにここから10㎞も歩く気力はない。バスに乗りには恐らくは清滝橋に戻らなければならないが、後戻りする気分でもない。先日の暴風雨でなぎ倒れた木の残骸が痛々しい。

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そうして、道が川を離れた。少し登っていくと、道路に出た。ここは一体どこなのだろうか?看板を見ると落合、という場所らしい。案内図によれば、嵐山までは6㎞あるという。しかしこの付近にバス乗り場はなく、清滝まで戻るのが一番近い。それでも前に進んだ方が面白いと判断して、嵐山の方へ歩き出す。

 

地獄の山越え

ところがこの車が通る道はかなり急な坂であり、どうみても山越えをするような感じとなっている。車に抜かれながら、喘ぎながら登っていく。かなりきつい。更にはこれまで歩いてきた累積の疲労が追い打ちをかけてくる。足が上がらなくなってきて、つまづくように前のめりとなる。もう限界が近づいてきたことが分かるが、前に足を出す以外、どうしようもない。そんなことを考えていると、ようやく峠を越えた。ここは六丁峠というらしい。

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下りは楽かといえばそうではない。箱根駅伝の山登りの5区を思い出せばよい。ひたすら上った後の下りはかなり足に堪える。足の回転数を下げるが、ブレーキをかけているようで、腿への負担が大きい。木々に囲まれた自然の中、人間の無力さを痛感する。そしてどうしてここまで歩いてきてしまったのか、不思議な気分になる。既に10㎞以上は歩いただろうか。

 

道路脇にあった表示が目に入る。嵯峨陵、何とここは嵯峨天皇の皇后の御陵であった。嵯峨天皇といえば、文献に残る歴史上で初めて茶を飲んだ人物である。815年、僧永忠が点てた茶を滋賀の寺で飲んだとある。勿論これより前にも様々な人が茶に接していたと思うが、公式文章がないのだそうだ。永忠は在唐30年の僧侶であり、彼が滞在した長安の寺でも喫茶の習慣があったらしい。一体どんな茶を飲んでいたのだろうか。推測の域を出るものはない。

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それにしてもなぜここに皇后の墓があるのだろうか。これまで天皇の御陵は何度も聞いたことがあるが、皇后の御陵、しかも1200年前の人物の御陵があるとは、さすが京都、と唸ってしまう。何らかの特殊な功績があったのだろうか。歴代皇后の墓がもしあれば、京都の山は墓で埋まりそうな気がする。明治45年に修陵があったとある。ただ残念ながら、この御陵へ行く道は土砂崩れにより通行止めになっており、実際の御陵を拝むことはなかった。

 

そしてようやく人里が見えてきた。ここはどこだろうか。遭難した人間が人家を見てホッとするような感じだった。それほどに疲労していた。ここは古民家を使って、お店が数軒出ていた。保存地区なのだろう。鳥居本、大きな鳥居がある。ゆっくり見物する心の余裕はなく、車が通る道路に上がると、バス停が見えたので、走り寄り、時刻表を眺めた。そしてフッと顔を上げると、何とそこにバスが停車した。もうどこ行きでもよいから、乗り込む。ついにこの地獄のトレイルから脱出した。

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嵐電

バスの座席に深々と座る。疲れで頭がボーッとなっている。乗客は多くはない。見るとこのバスは嵐山行きであった。歩くのとは大違い、バスはスーッと道を行き、どんどん都会に戻っていく。嵐山のあたりに来ると、平日にも変わらず、沢山の観光客が歩いていた。嵐電の嵐山駅前でバスを下りた。嵐山を散策するべきだが、もう体力の限界、真っ直ぐ電車に向かう。

 

電車はレトロでいい感じだ。ホームでは沢山の中国人の声がした。何かと思うと、何とホームの端に足湯が設置されていたのだ。私も是非は入りたいと思ったが、大勢の中国人に圧倒されて、近づくのを遠慮した。抹茶アイスを食べている観光客も大勢いる。ここだけを見ると経済がかなり活性化しているように感じられる。これも中国人パワーのお陰だろうか。

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電車は四条大宮行き、途中の帷子ノ辻で乗り換えて、北野白梅町まで。嵐山で切符を買ったが、乗換に際して、この切符を回収されてしまうと新しい電車に乗るは面倒、どうすればよいのか、よく分からないまま乗り込む。外国人たちは特に気にする様子もなく乗り換えていたが、どうやってルールを知っているのだろうか。

 

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