ミャンマー紀行2005(7)ゴッティ橋と夕日

(2)チャウセーの昼飯

チャウセーはマンダレーの近く、大学や大きなパゴダがある由緒ある街である。我々は大きな通りを走っていた。これがヤンゴンーマンダレーを結ぶ幹線。国道1号線といった所か??大型トラックやバスが大きな音を立てて通り過ぎる。幹線といっても片道2車線であるが。道端のレストランに入る。トイレに行くと裏は電車の線路である。国道1号線と東海道線が平行して走っているようなものだ。丁度電車が走ってきた。ヤンゴンからマンダレーに行くようだが、スピードは遅い。何時着くのだろうか??道を走っているバスも遅い。ミャンマーの時間は我々とそれとは全く異質なものである。

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食事は中華である。どうしても日本人に合う味は中華ということになる。地鶏とカシューナッツの炒め物は塩味が効いていて美味かった。トマトのサラダは食べていいのかと思ったが、食べてしまった。甘くはなく、自然な時がした。ご飯が大盛りで盛られたが、あまり食べられない。車に揺られすぎであろう。TAMは袋から何か取り出した。彼女が袋に手を伸ばすと興味津々である。今回は昨日買ったアボガド。ナイフを出して切り、スプーンを出して勧める。そうか、これは山越えの非常食であったのだ。既に危険は越えたのか??

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そうそう、朝から大騒ぎしたデジカメの充電。TAMがこの店の親父と交渉して充電させてもらえた。しかし電源があるのはレジの横。仕方なく、デジカメを睨みながら食事を取る。もしカメラがなくなれば大変である。珍しそうに眺めているお客もいて冷や冷やした。電流が弱いのか、なかなか充電は終わらない。その内時間が来て充電を中止し、出発した。何とも電気を求める旅となってしまった。

 

(3)ティボーまで

マンダレーに向かって走り出したが、途中で曲がる。前回訪問したメイミョーに向かう。懐かしい山を登る。メイミョーは高原にあり、暑いマンダレーの避暑地として存在していた。今日はメイミョーに行くものとばかり思っていたが、何と更にその遥か先まで行くという。そろそろ尻が痛くなる。午後3時頃山を登り切りメイミョーを通過。本当にここで降りたかった。町外れには分かれ道が有った。洒落たレストランが角にある。向かいに大きな木がある。この木がどれだけの旅人を見てきたのか??日差しは強いが、ビーチパラソルがテーブルを覆い、下は涼しい。

 

更に行くと給油。ミャンマーでは石油は高価な物。政府の公定価格は1ガロン180チャットだが、実際の価格(闇価格)は1200チャットにもなっている。更にお金を払っても量を確保出来ない。運転手は道端にドラム缶を並べた給油所??を回り、価格を交渉してガソリンを確保していた。聞くところによれば、立ち寄る給油所は決まっているそうだ。同じ民族の開いている所で買う。見分け方は立てている旗らしい。やはり同じ民族でないと騙される、という事だろうか??

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夕方ティボーに大分近づいて来た頃、世界で2番目に高いところにある鉄橋の横を通過した。こんな所に世界で2番目というものがあること自体が驚きである。名前はゴッティ鉄橋。1903年イギリス人により建設された。イギリスという国は本当に恐ろしい。アジアの果て??の山の中に100年も前にこんな高い鉄橋を建設しているのである。高さは300m位あるらしい。橋の所には1948-51年という表記が見える。恐らくは第二次大戦の際、一度破壊されたのではないだろうか??それを修復して現在に至っているのであれば、日本の責任はどうなるのだろうか??

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実はこの時写真を撮りながら相当の疲れを覚えていた。朝7時にビンダヤを出てから約10時間、殆ど車に乗っているだけである。運転手は疲れないのであろうか??私はもう疲れた。寝たい!そう思うと何でこんな所にいるのだろうかという疑問が湧いてきた。TAMが『明日はこの電車に乗って鉄橋を渡りましょう』と言う。しかし私は『高所恐怖症だから乗りたくない。それに私の目的は列車に乗る事でもなければ、車に乗る事でもない』と幾分声を荒げてしまった。

 

3回目のミャンマーで初めて怒ってしまった。日頃短気な私がここミャンマーでは全く怒ることがなかった。しかし今日は何故か、そして誰に対してか怒ってしまった。声を出してしまってからハッとした。TAMは非常に困った顔をしていた。そして一言も話さない。こちらの方も困ってしまった。

 

SSが『怒ったの??』と心配そうに顔を覗き込む。『いや』とだけ言って車に乗り込む。本当にどうしたんだろうか??自分でも分からない。それから1時間ほど車内は沈黙に包まれる。全員疲れが顔に出る。いつでも楽しい旅というものはない。しかし自分が原因で楽しくない雰囲気を作ってしまった。更に一生懸命やってくれているTAMを傷つけてしまった。自分にショックである。

 

6時頃車が停まる。山の中の道端に物を売る店がある。何故だろうと見ていると、山陰からきれいな夕陽が顔を出す。店の前でコップにビールを注ぎながら、夕陽を眺めているミャンマー人がいた。何と贅沢な夕方だろうか??ミャンマーにもお洒落な人がいることが分かった。夕陽をじっと眺める。実にゆっくり落ちて行く。心にあったわだかまりが解けていく。SSは涙を流しそうに眺めている。TAMは例の無表情で見つめている。ふと彼女は私の横に来て『誤解があったようですね。明日はあなたが行きたい所に行きましょう』と言ってくれる。

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『ラショーとチャウメイに行きたい』と咄嗟に答える。TAMは黙って頷く。恐らく彼女は用意していた全てのメニューを捨てたであろう。しかし一言も愚痴を言わない。プロのガイドなのである。そしてプライドは非常に高い。どんな要求にも応えて上げる、という意気込みがある。夕陽が完全に沈み、車はティボーの町に滑り込んだ。実に12時間、長い長い一日が暮れた。

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