ミャンマー紀行2004(17)ビンダヤ 雨の山登り

車は一路ビンダヤへ。シャン語で『広大な平原』を意味するビンダヤはなだらかな丘陵地帯。道は常に一本道。途中雨が降ったり止んだり。雨が降っても農作業は続いており、あのシャンペーパーで作った傘を差している農民も見える。実に長閑で、且つ豊かな田園風景が広がる。

 

1時間ぐらい走ってトイレ休憩がある。茶店で茶を飲む。お茶は緑茶。この辺りで飲むスーッと飲めて、何となく美味しい。小さな街道沿いの集落だが、交通の要所で人が多い。野菜や炭など物も豊富に売っている。シャン州には松の木が多い。この木を使って火を起こすらしく、松の木の木片を売り歩く人々がいる。皆少数民族であり、生活は豊かでは無さそうであるが、実に淡々として自らの仕事をこなしている。日本人も昔は寡黙であったろうか?

ミャンマー 127m

 

昨年から聞きたかったことをTAMに聞く。彼女は一体何人なのか?答えは『ガイン、シャン、バオー族の混血。夫はカチン、シャンの混血。だから子供は何だか分からない』。我々には想像できないほどの民族の渦である。彼女が醸し出すあの独特の雰囲気は、こうした背景から来るのであろうか?しかしそれでも『私はミャンマー人』という言葉は聞かれなかった。文化を見ればよく分かるが、シャン人はどうしてもミャンマー人ではないのである。

 

シャン州は以前は独立しており、ソーボアと呼ばれる藩王が各場所を統治していた。ビルマの他の土地とは全く異なる体制を保持しており、イギリス統治時代、又日本占領時代でさえ、その地位を保護されていた。1947年にビルマ政府が独立する直前にアウンサウン将軍との間で結ばれた『パンロン協定』でも、10年後の連邦からの脱退が認められていた。ミャンマー人と一線を画す由縁である。だが現実は、そうはなっていない。歴史の波とは恐ろしい。

 

もう少しビンダヤに近づくとTAMが『ここから新しい道が出来、マンダレーまで車で4時間です。景色も素晴らしいです』と解説する。昨年来た時はまだ無かったらしい。あまり変化が感じられないミャンマーも色々と発展はしている。次回は飛行機でなく車で来るのも良いかも?何故なら空港のあるヘーホーは平原の真ん中で何も無く、何処に行くにも一定の時間が掛かってしまう。マンダレーも空港まで1時間近く掛かるし、考えてみれば車が便利なのかもしれない。既にこの時点で次回のことを考えている自分に気付き、思わず苦笑した。

 

結局2時間掛けてビンダヤに到着。何と大雨である。果たして茶畑に行けるのか?取り敢えず前回はトイレを使うだけに寄った洒落たレストランに入る。このお店、非常に衛生的にきれいであり、西洋人がよく利用するようだ。きっとビンダヤ観光する外国人は皆ここに来るのだろう。

 

昼食はシャン料理、何度食べても、何を食べても美味い。今日の豆スープは何と茗荷入り、絶品。これだけで幸せになれる。お替りする。またシャン州の米は何とも美味い。日本米に近い。野菜は新鮮、デザートのパイナップルも実に甘い。TAMはお茶を飲む時、緑茶にライムを搾る。シャン州の飲み方かと聞くと『TAMスタイル』とのこと。ちょっと酸っぱくなかなか個性的な味になる。こんな独特のスタイルをいくつも持っていることがTAMの魅力。

ミャンマー 129m

ミャンマー 132m

 

実は今回車の助手席に男性が座っていた。誰だろうと思っているとTAMの弟だと言う。何でもSSが山を登れない時の為の補助要員とか?ニコニコしていて寡黙だが、マレーシアに出稼ぎに行ったとかで英語も出来る。ミャンマーからマレーシアに出稼ぎに行くことは意外と簡単なようだが、賃金が低下したので戻ってきたのだという。マレーシア経済も相変わらずか?彼はTAMのご主人と同じ地質学が専攻というからこの国ではエリートのはずだが。その彼が出稼ぎに行かなければならない所が現在のシャン州の厳しい現状を表している。

 

(3)ラペソーの村

ビンダヤの名所と言えば前回も訪れたビンダヤ洞窟院。そこの横を歩いて抜ける。雨は小降りからやがて止む。晴れ男である私の面目躍如である。近道だというので登り始めたが、結構急な坂道である。TAMは前回同様ちゃんと靴を穿いているが、TTMは例のミャンマーサンダルでスタスタ登る。問題はやはりSS。サンダルでは登れずとうとう裸足になる。TAM弟の出番が近づいている?

 

少し行くと我々の前を山に戻る母娘がいる。TAMが道案内を頼んだようでのろのろ歩く我々を待っていてくれる。この辺りはダヌー族の村であるから、彼らもダヌーであろうか。娘は7-8歳か?カメラを向けると手で顔を覆い、写真に納まってはくれない。実にシャイで可愛らしい。頭に籠の紐を引っ掛け歩いて行く。これが彼らの営みである。小さい時から親の手伝いをして働く。日本の子供に体験させたい世界がそこにある。

ミャンマー 137m

 

途中山道を振り返るとビンダヤの街が一望出来る。湖など雨上がりの素晴らしい風景が広がっている。ここに座って一日伸びをしていたい気分。SSが山の子を見習って、後からゆっくりと上がってくる。負けん気は人一倍で、弱音を吐かず頑張っている。誉めてあげたい。

ミャンマー 136m

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