ミャンマー紀行2004(4)雨のバゴーに思う

日本兵がミャンマーで戦っていた時も雨季には相当の雨が降っていた。突然そんなことを思う。古山高麗雄氏の『フーコン戦記』の中には次のような記述がある。

 

『泥水がタコツボに流入し、首筋から背中を泥水が這った。褌が濡れていても何が濡れていて濡れたままでいるしかなかった。それでも雨が降ると敵機が飛来してこないし、戦車の動きも鈍くなる。雨は朝霧同様天然の煙幕になり、空爆や機銃掃射から逃れることができた。けれども飯盒炊爨が難儀になり苦労した。それに煙幕は敵味方双方にとっての煙幕であり、地面が濡れると歩兵の動きも鈍くなる。あの戦場で生き残る為には雨の中に現れる人の姿に相手より先に気付かなければならなかった』

 

バゴーで亡くなった鈴木さんはどんな戦いをしてきたのだろう?タコツボとは、各人が爆撃などを避ける為に掘った穴のことである。陣地を死守せよ、との命令は北ビルマの戦線ではこのタコツボを守ることであったという。既に隊としての体をなしていない日本軍はそれでも退却という言葉を使うことが無く、『死守』、『玉砕』、そして退却を表す『転進』となって撤退して行った。

 

しかし陣地が1つずつのタコツボで、そこを死守して玉砕するとは何を意味するのだろうか。本当に愚かな戦いをしてきたものだ。そして10人中7人は死んで行った。一体誰が悪くてこんなことが起るのか?中国、韓国その他東南アジアの人々が日本人に対して未だに拭い去れない危惧を持っている訳はきっとこんな理解不能な行動に理由が見出されるだろう。

 

良い、悪い、やりたい、やりたくない、を別にして日本人はこんな愚かなことが出来る人々である。またもし戦争になれば日本人はきっと同じことを繰り返すだろう。社会が上手く行っている時は、日本型管理は非常に機能する。しかし状況が悪くなれば一挙に全てが崩壊する。バブル崩壊後の10年を見ても明らかである。日本人は気が付かないが、アジアの人々はちゃんと見ているのである。

 

(6)ヒンダゴンパゴダ

TTMが呟く。『バゴーはミャンマーで唯一女性上位の街です』『それはメスがオスの上に乗っているからです』??白鳥(ヒンダという伝説の鳥)がこの地に降り立ち、シンボルとなった。この白鳥は番いであるが、メスが上なのである。この鳥が降り立った場所がヒンダゴンパゴダとなっている。バゴーはここから始まったと言う伝説の地。パゴダは小高い丘の上にあり、向こうにシュエモードパゴダがよく見える。日本も小高いところに神社を作る習慣があるが、そんな文化がここミャンマーにもあるのだろうか?きっとあるに違いない。

ミャンマー 013m

ミャンマー 017m

 

雨が非常に強くなってきた。裸足でタイル張りの階段を登るのはかなり滑り、危険である。一歩ずつ噛み締める様に登る。登り切るとそこでは何やら踊りが行われている。五穀豊穣の踊りといった感じで、男女が衣装を着けて踊る。踊りの後、信者が彼らを取り囲み何やら話している。彼らは日本で言う巫女のようなものなのか?

 

更に上に登ると仏像がある。TTMはその前に座り、瞑想を始める。私は周りを歩き回る。赤ん坊を抱いた少女が目に入る。呼んでも近づかないし、写真を撮ってもよいかというジェスチャーをしたが断られる。物売りの子供が多い中、彼女は純粋な子守。目がキラキラと輝いていた。

 

帰りに物売りの男の子2人と出会う。彼らは一生懸命TTMに道などを教え、鶉の卵を売ろうとしている。TTMが厳しい表情で何か言う。その後にその卵を買う。聞けば『彼らに一生懸命働け、働かないでお金を貰ってはいけない』と諭したという。こんな昔のお母さん的な人は今の日本にはいない。又それを素直に聞く子もいない。どうしたものだろうか?鶉の卵を1つ剥いてみた。なかなか剥けない。かなり集中してやる。漸く食べる。何だか修行僧の気分になる。残りはSSへのお土産になった。

ミャンマー 015m

 

(7)道路沿い

私は初めての街に行くと博物館を訪れることにしている。街の歴史が分かるからである。バゴーには歴史があるので楽しみにしていた。が、バゴー博物館に寄ってみると、門の所に女性が傘を差して立っており、VIPが来るので今日は閉館と言われてしまう。軍事政権の一端を垣間見る。中国でも時々あったなあ。残念。

 

仕方なくバゴーを離れることに。途中道路沿いのレストランへ。マンダレーなどへ向かうバスがトイレ休憩などで立ち寄るというが、お客は殆どいなかった。トイレに行こうとすると従業員が態々付いてきて、鍵をくれる。中に入ると洋式便器であるが蜘蛛の巣だらけで使用している形跡が無い。バスで旅行しようという外国人がいないのか、いてもミャンマー式トイレに慣れている人しかバスの乗らないのか?

 

TTMがバゴー名物という粽のようなものを買っている。私も食べてみたいと思ったが、何とあと2-3日しないと食べられないという。保存食であろうか?食べられないと言われると食べたくなるのが人情。『開けてはいけません。不味くなりますから』とぴしゃり。これも残念。

 

昼食後TTMがパイナップルを買うという。道沿いにフルーツを置いて売っている所が多い。値段はヤンゴンと同じだといってTTMは不満そう。しかし実家へのお土産であるから致し方ない。店先に瓶詰めのものがある。何かと見るとトカゲなどの爬虫類が入っている。漢方薬のようなものだろうか?これを飲むと利くのだろうか?きっと利くに違いない。何故?理由は無い。

ミャンマー 021m

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