ミャンマー紀行2004(3)バゴーの高僧と鎌倉の大仏

(4)バゴーの高僧

次の訪問場所に行く途中、TTMが『ちょっといいですか?』と言う。私はこのTTMの寄り道が大好きである。規定路線を歩く観光旅行ではなく、庶民の生活を垣間見る旅行が好きなのである。何でも寄付をするためにお寺に行くという。何でバゴーまで来て寄付?この後の旅行でもTTMはスキあらば?寄付を続けるのであるが、ここではバゴーに入る直前に見た建立中のパゴダに小さな仏像10個(合計は528だそうだ)を寄付する。かなり分かり易い。

 

そのお寺が何処にあるのか良く分からなかったが、兎に角かなり大きなお寺である。名前はダマリンガラという。但し観光地ではなく、一般のミャンマー人が日曜日に一家揃ってやってきている。堂内はかなり広く、皆思い思いに座っている。弁当を広げる家族もいる。TTMによると信心深い人々は僧に倣って午前中しか食事をしないそうだ。雨が降っていても堂内で熱心に祈り、熱心に食べ、楽しそうに一家団欒を送る。ある意味で理想的な光景である。

 

TTMが奥の間に入って行く。私も恐る恐る続く。奥の間は結構広い。仏壇の前に沢山の供え物が置かれている。その前で一人の老僧が食事をしている所を多くの信者が取り囲んでいる。僧は食べながら何かを語っており、皆が有難そうに聞き入っている。内容は分からないが、この僧がかなりの人物であることは一目で分かる。TTMが布施を差し出す。僧に何か告げると皆が一斉にこちらを向いた。どうやら私のことを紹介したようだ。正座していて良かった。外国人が来るのが余程珍しいのか、おばさん達がかなり好奇な目で見つめてくる。

 

突然僧が立ち上がる。そして少しよろめく。周りの信者の殆どが女性であった。皆手を貸そうと立ち上がったが、誰もそれ以上動かない。すると私の背後から我が運転手が、すかさず膝立ちで進み出て手を貸す。その動作は運転中よりはるかに機敏に見えて実に頼もしい。

 

後で分かったことには女性は僧に触れることができないと言うこと。それにしても檀家でもない彼が自然に行動できる所が素晴らしい。子供の頃から身に付いているとしか思えない行動だった。日本では今や教えられずに自然に覚えることといえば、ろくな事は無いのだが。

 

僧が立ち去る際に私の方に向かい、手を口に持っていく動作をした。『何か食べていけよ』といってくれているのが分かる。軽い感動を覚える。この僧は非常に簡単な動作で言わんとすることを表現している。後で聞いた話だが、この僧はバゴー管区で最も偉いお坊さんであるそうで、TTMに名前を聞いてみたが、『教えられない』と言われてしまった。外国人との接触は何か問題になるのだろうか。

 

檀家の女性達が我々の前に所謂卓袱台を持ってくる。その上にお茶、カステラ、ウエハース、豆を揚げたお菓子を置いて行く。この豆がとても美味しく、暫し頂く。向こうでは女性達が食事を始める。僧の有難いお話を聞いた後、気持ちよくご飯を食べているように見える。これは宗教だな、と感じる。

 

トイレに行く。何処にあるのかと思えば、本堂の端に扉がありそこから階段を下る。地下通路があるのかと思うほど深い。数メートル下に例のミャンマー式トイレ(日本の和式トイレ)がある。横に桶があり自分で水を掛けて処理する方式だ。初めは慣れないが、慣れてしまえば、これもまたよい。ミャンマー人は非常に清潔好きであり、どこのトイレもきれいだ。

 

(5)シュエモードパゴダ

バゴー最大の見所と言われていたシュエモードパゴダに到着。シュエターリャウン涅槃仏とはバゴー駅の線路を挟んで反対側にある。1000年以上の歴史があるパゴダと言われており、釈迦の遺髪を納める為に建立された。ミャンマーのパゴダの特徴として、建立後増築が繰り返される。このパゴダも元々23mであった高さが、現在114mまで伸びている。きっとこの先もずっと伸びて行くのだろう。

ミャンマー 012m

 

雨が強くなってきた。晴れ男の私も名前を返上せざるを得ない。傘を差し、更に安物のレインコートを着込んでいたが、ずぶ濡れとなり、大変である。だが何しろパゴダは全て裸足でなければならない。雨の中を裸足で歩く気持ちのよさは、子供の時以来味わったことがなかったが、この感覚。素晴らしい。TTMと二人、まるで映画、雨に歌えば、踊るように歩き回った。

ミャンマー 011m

 

ほぼ一周したと思った所で、変な看板にぶつかる。『鎌倉の大仏はこちら』?行ってみる。パゴダは一般的に中心から四方に参道が伸びており、その1本の参道の途中に、かの大仏は特別ルーム?に安置されていた。確かに形と顔立ちは鎌倉の大仏にそっくりのミニチュア版。この仏は戦争中この近くで戦死した鈴木さんという方の遺族がその慰霊の為に建立したとある。日本人が来たらガイドは必ず案内する名所となっているという。TTMが聞く。『鎌倉の大仏には何故屋根が無いの?ミャンマーでは屋根が壊れたら絶対放置しませんよ』と。本当に何故修復しないのだろうか?罰当たり、と言われている様でとても気まずい。

ミャンマー 010m

 

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