茶筅の街から宇治まで茶旅2015(4)京都 駅構内でかりがね茶

5月20日(水)

喫茶文化史

駅前のゲストハウスには本当に2人しか泊まっていなかった。翌朝はゆっくり起きて、1階の居間でネットを繋いで、ダラダラ過ごす。私の旅には休息のための、ダラダラ時間が必要である。年齢的にも無理できる歳ではなく、また無理してもよいことは一つもない。天気は良いようだ。宿の管理人の女性2人はいつの間にかどこかへ行ってしまい、誰もいない。

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そこへ工事現場の人が入ってきた。工事をするにあたり、近所にご挨拶に来たというのだ。勿論鍵は掛かっていなので、簡単に中に入ってきてしまう。もし私がいなかったらどうなるのだろうか。アジアなら色々と危険だと思うのだが、日本はやはり平和な国なのであろうか。

 

今日はお昼に日本茶喫茶文化史を研究しているHさんとランチの予定がある。昼前に宿をチェックアウトし、荷物を預けて出掛ける。荷物はちょっと心配だが、まあ大丈夫だろう、日本だから。宿の周囲は駅前とは思えない、昔の路地の雰囲気を残しているところがある。観光客向けのお茶屋などもある。京都駅まで僅か5分で着く。駅に入ると『海外の方専用案内所』がある。さすが京都と思ったが、簡易な場所に係員は1人いるだけ。外国人観光客は沢山来るのでとても対応しきれない。英語で電車の時刻表が張り出され、『取り敢えずそれを見て』という対応になっている。日本を代表する観光地、京都、それでいいのだろうか?

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Hさんとの待ち合わせはSUVACO。伊勢丹とも書かれており、何だか良く分からないが駅に併設されたデパートらしい。3階へ上がると、レストランがあり、既にHさんが椅子に座って待っていた。ここは予約ができないので、順番を取っていたという。有難い。Hさんとは3月に鎌倉で、彼女の講座を拝聴した。数日前にFBで『宇治にいらっしゃい』という誕生日メッセージを頂いていたのだが、ちょうど訪ねようと思っていた宇治の茶問屋さんが上海の展示会に行っており、会えないことが分かった。そこでダメもとでご連絡したところ、心よく会ってくれた。これまた有難い。それにしてもまさか数日後に京都に来るとは思わず、メッセージをくれたんだろうな、きっと本人も驚いていることだろう、と思いながらの再会となる。

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美味しいさば寿司を食べながら、色々とお話を伺う。日本史におけるお茶の歴史は、茶道史を除くと、研究者は殆どおらず、文献研究も進んでいないことが分かる。ある意味でHさんがこの研究分野を開拓したとも言える。彼女は頑張っているが、如何せん他に人材がいない。大学でもお茶の歴史を扱うところは少なく、人が育つ環境はない。全国に眠っている資料は、古い家やお寺などにかなりあると思われるが、調べたくてもとても手が回り切れない状態らしい。文献調査が進まないと、皆が都合の良い歴史を作り出し、妄想が膨らみ、根拠なく広まって行く。また一度定着した歴史を修正するのには大変な労力がいるのだそうだ。

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話の中には、昨日出会った福寿園のIチーフやHさんも出てきた。彼女らがとても熱心な、貴重な研究者であり、今後の新たな歴史を切り開いて欲しい人材であることも分かった。私は日本茶を発展させていく上では、単に味や香り、価格だけではなく、文化、歴史に根差した付加価値の向上が重要だと考えている。イギリスや台湾などと日本のお茶には、そこに大きな違いがあるのではないだろうか。喫茶文化史は本当にこれからの研究分野であり、私もここに大いに注目している。

 

食事を終えると、『お茶を飲みに行きましょう』と言われる。どこへ行くのかと思っていると、新幹線の改札口に向かう。何とそこで入場券を買い、中に入る。まさか新幹線に乗るの?とは思わなかったが、ワクワクして面白い。土産物屋などが並ぶ中、きちんとした和菓子のお店があり、そこには喫茶スペースも設えられていた。『ここは隠れ家です。裏ワザ、裏ワザ』とHさんはいたずらっ子のように笑いながら言ったが、本当に得難い経験ができた。

 

確かに新幹線に乗る人しか来ない場所であり、お菓子を土産に買う人はいても、喫茶するお客さんは多くない。入ってきたお客さんでも電車の時間になると出て行くので、実に落ち着いたスペースになっている。しかもお菓子とお茶は本格的だから、我々にとってこれ以上の場所はない。

 

早速お菓子とかりがね茶を頂く。この茎茶が私は大好きだ。値段は高くないし、味も悪くない。いぶし銀、という感じだろうか。自分でお湯を注いでお茶を淹れるのもよい。美味しい生菓子と干菓子も出てくる。引き続きHさんのお話を伺い、何とも贅沢な時間を過ごした。尚入場券は2時間以内有効なので、あまりにまったりしてしまうと、出られなくなるので、気を付ける必要がある。

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