両岸三通の茶旅2015(19)南投 鹿谷の品評会

6.南投

5月10日(日)

鹿谷まで

台北に戻り、2つの茶荘に寄るなど、用事を済ませてから、駅で高速鉄道のチケットを買った。明日は日曜日だから混んでいるかと思ったが、実際に翌日駅に行ってみると予想外に空いていた。拍子抜けだ。今日は台中経由で鹿谷へ行く予定だ。台北-台中の高速鉄道料金は735元。所要時間1時間であるから、日本では東京―静岡ぐらいか。だとすれば料金は約半額だろうか。これなら乗ろうという気になるが、高過ぎて日本では新幹線は乗りたくない。

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列車は快適に運行され、時間通りに高鉄台中駅に到着した。ここから渓頭行きのバスに乗るよう指示されていた。これが混んでいるという話であったが、チケットがすぐに買え、バスも直ぐに来た。この時間帯、バスは頻繁に出ていた。日曜日の朝、渓頭のハイキングや温泉に行く人が一杯いるからバスも沢山は知っているはずだが、今日は何故か空いていた。

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見慣れた風景の中、バスで1時間ほど走る。冷房が効いていて、車内はかなり寒い。昨年3月に車で竹山までは来ているのだ。竹山のターミナルにはホテルができており、人の往来が多いことが分かる。ここは鹿谷の下の街なので、もうすぐだなと思っていたのだが、そこからが意外と時間が掛かった。U君に言われていた停留所まではなかなか着かない。合計1時間20分ぐらいかかってようやく、指定されたバス停に着く。既に多くの人は下車した後だった。

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そこにはU君が待っていてくれた。彼とはちょうど4年前、この鹿谷で初めて会った。その時彼は茶業の修行中だったが、その後修行を重ね、2年前に帰国。今は日本で台湾茶の卸しを行っている。今回もお茶の買い付けのために滞在している彼に色々とお世話になり、鹿谷を回ってみようと思ってやってきたのだ。バス停にはちょうど昔の農会長の林さんがいた。この人が鹿谷の品評会を仕掛けた人だと4年前に紹介され、お話を聞いたのをよく覚えている。台湾茶の内需振興はここ鹿谷から始まったとも言えるのだから、実に重要な話だ。

 

それから歩いて教会へ行く。ここがU君の根城だ。彼は4年前もずっとここに泊まって活動しており、今回もここに居た。前回は私も泊めてもらったので、今回もここでよいと勝手に思っていたが、教会の管理が変わり、泊まることが出来なかった。取り敢えず彼の部屋に荷物を置かせてもらい、出掛けることになる。毎回のことながら、流れは全く読めない。

 

農会品評会

歩いて農会に向かう。前回もやって来たが、見晴らしの良い場所だ。今日は大勢の人が農会に集まっていた。春の品評会のためのお茶の出品日に当たっていたのだ。U君も昨日まで出品用のお茶を作っていたという。U君の周りに人が集まってきた。何と新聞記者など地元のマスコミ関係者だった。今やU君は間違いなく鹿谷で一番有名な日本人なのだ。突然インタビューが始まる。テレビカメラも回っている。どうなっているんだ、この意外感は。

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台湾で今一番話題になっていることは、食の安全かもしれない。昨年噴出した油の問題をはじめ、最近ではお茶からも残留農薬が出たらしい。これはどうも台湾以外で作られ、輸入されたお茶から出たというのだが、マスコミ的にはこの点がニュースの焦点であり、U君への質問もそこに集中していた。日本の茶葉についての質問も飛ぶ。それに対して1つ1つ丁寧に答えるU君。驚いたことに4年前に比べて台湾国語が飛躍的に上手くなっている。南投の訛までばっちり身に着けている。目を瞑って聞いていると、台湾人が話しているのと特にそん色がない。これは驚きだった。地元に深く入り込んでいる、と確実に印象付けられた。結局取材の一部が後日記事になっていたが、その中にはなぜか私の名前を入っていた。

 

品評会に出品する人は毎年増えているようで、すごく混んでいた。受け付ける方も相当の人員を用意して対応している。もし品評会で賞を取れば、そのお茶の価格は数倍に跳ね上がるのだから、みな力が入っている。品評会は何となく博打好きの台湾人気質にあっているような気がする。出品するためには20kg以上の茶葉を用意する必要があると聞いたが、それでも何品も出す農家が大勢いる。皆が大きな茶袋を持ち込み、それを正確に測っていく。

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『農薬検査で不合格になった茶葉は1.5万元から15万元の罰金を科す』との表示が出ている。これが先ほどの取材ぶりを反映している。勿論違法な農薬を使った茶葉を持ち込む人などいない筈だが、これは対外向けのパフォーマンスなのだろうか。それともついうっかり、というケースがあるのだろうか。

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農会の事務所に行くと、先ほどの取材陣がお茶を飲みながら雑談していた。相手をしているのは秘書長。元宣伝担当だったという彼は鹿谷のお茶の歴史についての資料のありかも知っているかもしれないというので、聞いてみると、『これを読んだら』と冊子を1冊渡してくれた。まずちょっとこれを読んで勉強してみようと思う。

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