両岸三通の茶旅2015(15)馬祖にも茶園があったが

津沙聚落

津沙聚落は馬祖の西南端に位置する伝統的家屋が残る場所だった。バスを降りると、大きな木の下でおじさんたちがトランプに勤しんでいる姿を発見。何とものどかな雰囲気だ。集落に入ってみる。ごくわずかな人しか住んでいる気配はなく、建物も古いことは古いが何となくきれいで、観光地化している。土産物屋やゲストハウスが所々に見られるが、平日の午後、お客は稀。1960年代までは漁港として栄えたらしいが、今やその面影は殆どない。海が見える廟が静かに佇んでいる。

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海辺に行くと、波と戯れる若い女性たちが4人ほどいた。だがそれ以外に人は居ない。海岸沿いには軍事拠点跡が見える。鉄血、と書かれた小さな洞窟もある。兵士がここに隠れて、敵を迎え撃つのだろうか。平時にこれを見れば、そんな馬鹿な、と思うのだが、有事には全てが真っ当になる。砂浜の向こうには階段があり、斜面に住宅が建てられている。これは住民も盾となって戦ったことを示すものなのだろうか。いや、実際は馬祖では戦闘はなかったと聞くが。

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それから歩いて坂を登っていく。この坂は結構きつい。バスは2時間後にしかないことは分かっていたが、それよりも気になる場所があったのだ。先ほどバスで坂を下りる時、何とかく『茶園』という文字が目に入った気がするのだ。気のせいかもしれないが、時間もあるので行ってみることにした。それにしても坂がきつい、そして暑い。大汗をかき、もがきながら進む。それでも津沙の集落が上からきれいに見えるのが美しい。

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雲津茶園

道の脇には記念公園があったが、記念碑が建っているだけだった。何だか分からない戦争オタクの住処のような場所もあった。昔の馬祖といえば、金門と並ぶ反共の最前線基地という位置づけで、常に砲撃があったところだったが、中台関係緩和でここ数年は砲撃もないと聞く。全島要塞化は今や昔。平和になったんだな、と妙に感じる。しかし中台関係は微妙であり、本当に平和なのか、実は良く分からない。

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喘ぎながら何とか看板の所まで来た。確かに『雲津茶園』と書かれている。更には行政院茶業改良所の指導、という文字まで見え、ちゃんとお茶を作っているらしいことが分かる。取り敢えず脇道を下りてみる。少し行くと確かにまばらだが、茶樹が植わっている。おー、こんなところで会えるなんて、とちょっと感傷的になる。茶樹は若そうで、まだそれほど年数が経っているようには見えない。茶園が広がっているわけでもなく、茶を作っているといっても少量だろう。

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小屋があったので、恐る恐る近づいてみたが、誰もいなかった。何とか話を聞きたいと思うのだが、周囲に人の気配はない。ビニールハウスもあるが、中は空だった。諦めて元来た道を上がる。大きな道路の脇まで戻ると、トーチカが見えた。この辺には所々あるのだが、その横に車が停まっていたので、もしや人がいるのではと近づく。確かに事務所のような気配はあるのだが、トイレにも鍵がかかっており、人の気配はやはりなかった。折角茶園を発見したものの、それが何であるのか、どこかで茶葉を売っているのか、何の情報も得られず、むなしく退散した。

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まだバスの時間まで1時間以上あった。どうするか?仕方なく、更に坂を上って、広い道路に出ることにした。そうすれば別のバスが来るような気がした。途中に軍施設があり、若い兵士が2人、歩いてバス停に向かったので付いていく。バス停でバスを待つと数人がやってくる。地元の人はこのバスを使っていることが分かった。バスは時刻通りに来て、馬港へ向かった。

 

馬港でバスを下りたが、バスはそのまま乗客を乗せて去ってしまった。次のバスまではまた時間がある。馬港には大きな観音様が見えるが、小高い丘の上にあり、そこまで行く気力はとてもない。媽祖廟があったので、そこを見学した。実に立派な廟であり、媽祖の由来は感じられた。鮮やかな媽祖様が鎮座し、壁の壁画も精緻だった。

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それから小さな商店街を歩く。殆どの店が閉まっているが、気が付くのは、軍関係の言葉。『軍服洗います』というクリーニング屋、『軍人理髪』という床屋など。往年の馬祖は軍人で溢れていたのだろうか。今やひっそりとしているこの街、それが台湾の平和である、と喜んでいいのだろう。観音様が見える場所に『国軍への参加を歓迎する』との標語が掲げられているが、今や台湾は徴兵制ではなくなったのだろうか。

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バスに乗り、宿の方へ戻る。今度は海側バスに乗ったので、海岸沿いを行く。明日はこの辺を歩いてみようと思わせる風景が続いていく。30分ぐらいで、先ほど馬尾から乗ったフェリーが着いたターミナルに戻ってきた。セブンイレブンがあったので飲み物を買いに寄る。昼ご飯が少なかったので腹が減ったが、港付近なのに、食堂は殆ど閉まっている。このままでは夕飯にあり付けないと少し焦る。

 

最悪セブン弁当だな、と思っていると、宿近くの食堂が1軒開いていたので、入る。3種類から選べというので、鶏もも焼をチョイスすると、定食として出てきた。これは美味しかったが、何とスープの代わりに出てきたのが、アッサム紅茶という紙パック、しかもイチゴ味。これを飲みながら食べるのか、台湾も変わったな、と強く感じる。結局は経済が回っていかなくなるとこうなる。コストのかかるスープなどは排除されてしまったのだろうが、それでは台湾の良さもなくなる。

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宿に戻ると干しておいた洗濯物が風にはためいており、見事に乾いていて気持ちが良い。屋上から眺めると夕陽が港に落ちていく。何といいところなのだろうか、馬祖は。予想以上の状況に感激した。部屋ではネットも自由に繋がるし、もう言うことはない。ベッドもフカフカで、すやすや眠れた。

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