両岸三通の茶旅2015(11)福州 ジャスミン茶の謎

4.福州

さんぴん茶の謎を解く

結局バスは途中休憩を挟み、3時間以上かかって福州北ターミナルに着いた。高速鉄道なら1時間ちょっとで行けたようだから、やはりバスは失敗だった。バスターミナルから出ると電車の駅が見えたが、ここはどこだろうか。地図すら持っていないので、タクシーを捕まえるしかないのだが、そのタクシーがほぼボッタくり。20元ぐらいで行けるところを、50-60元請求してくる。何とかメーターで行く車を見つけて、魏さんに指示されたホテルを目指して小雨の中を走っていく。

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ホテルは大手のチェーン店だった。チェックインしようとすると、魏さんがわざわざ迎えに来てくれた。この辺がお人柄。魏さんは、3年前に福州にやってきた時、大変お世話になった紅茶屋さんのオーナー。このお店は全中国から紅茶を集めて、販売しているし、福州で様々な文化活動をしており、顔が実に広い。おじいさんが福岡で起業したという面白い一族だ。福建人のダイナミズム、アジアを歩いているとよく見掛けるが、こんな例もあるんだな、と思う。

 

魏さんのお店の場所は以前と変わっており、ホテルの道の反対側にあった。そこへ行くと、スタッフが2₋3人待っており、『さあ、行こうか』という体制であった。皆、私がもっと早く到着すると思い、スタンバイしてくれていたのだ。誠に申し訳ない。今回魏さんには『ジャスミン茶について知りたい』とお願いしていた。実は私、ジャスミン茶はあまり好きではなく、これまで興味を持ったこともなかったのだが、沖縄に3年続けていくうちに、さんぴん茶の謎について、知りたくなってしまったのだ。なぜ沖縄ではさんぴん茶を飲むのだろうか。

 

スタッフと会社の車で向かったのは、海峡茶都という名の茶葉市場。そこに福州でもジャスミン茶の扱い量が最も多いと言われる、満堂香というお店がある。満堂香は単に茶葉を売るだけではなく、この海峡茶都茶葉市場を開設、更には初期の頃、北京最大の茶葉市場である馬連道にビルを建てたことでも知られているという。何ともスケールの大きなお茶屋さんだ。お店も立派で圧倒される。

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私の質問のために、わざわざ林総経理(社長)が応対してくれた。実に香りの良いジャスミン茶が彼の手から繰り出された。林さんは15年前まで米系のGEに勤めていた金融マンだという。確かに物腰がビジネスマンだ。これだけ大きな企業を経営していくには、プロの経営者が必要だ、ということをはっきりと印象付けられた。実に明快に会社を説明し、ジャスミン茶を説明してくれる。

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私はそんな敏腕経営者に実に素朴な疑問を投げかける。『中国ではジャスミン茶に茉莉花茶と香片茶という2つの言い方があるが、どんな違いがあるのか?』。私個人は北の方では茉莉花、南の方では香片という、単なる地域による呼び方の違いだと思い込んでいた。だが、違っていた。『これは等級の違いです』と林さんははっきり言い、2つの茶葉も見せてくれる。『香片茶は5-6級の低級茶』だというのだ。確かに香片の茶葉は荒く、香りもそれほどしない。なるほどこれで1つスッキリ。

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そして沖縄で飲まれるさんぴん茶については『福州付近では香片のことをションピンとかサンピンとか発音します』というではないか。福州は中国最大のジャスミン茶の産地であり、琉球王国が清朝に朝貢していた、その窓口は福州だったのだから、沖縄で飲まれるさんぴん茶はここから来たのだと確信できた。今回の福州訪問の目的は一瞬にして達成された。

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それにしても大きな茶葉市場だ。福州にも何軒もの茶葉市場があると聞く。更に言えば中国中に信じられないぐらいの茶葉市場が存在している。一昨年の習近平政権による腐敗汚職撲滅運動の余波で、高いお茶は売れなくなっていると聞く。それでも茶葉市場が増えているのは中国人がどんどんお茶を飲んでいるからだろうか。コーヒーもスタバなどが店舗展開しているが、どうなんだろうか。ふと、そんなことを考えた。

 

その夜は魏さんの家で、お母さんが作ってくれた芋が入ったお粥を頂いた。魏さんはお母さん思いで、常に夕飯はお母さんと食べるようにしているという。確かに前回も夕飯は家に戻り、その後一緒にお茶屋に行った記憶がある。今回は自宅で一緒にお粥、ということで、魏さんとの距離も少し縮まった感じがする。因みに魏さんのお父さんは10年以上前に亡くなっているが、波乱万丈の人生を生きた方のようで、今回その人生が書かれた本を頂戴した。あとでじっくり読んでみたいと思う。

 

その後魏さんの店に戻ると、お茶仲間が何人かやってきた。雑誌の編集者やお茶愛好家などが、お茶を飲みながらワイワイ話している。今や中国では名刺の交換などあまりしない。若者ならいきなり目の前にスマホを持ち出し、『微信』と叫ぶだけで友達になれる。だが微信をやっていない、いやスマホすら持っていな私はその輪に入ることができない。一緒に写真を撮っても私にだけ配信されない。メールで送ってくれというと若い女性が『Eメールの使い方が分からない』というので、もうお手上げだった。中国人とお友達になるためには、どうしても微信が必要だと分かる。

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それから美味しいプーアール茶の店へ行こうというので、歩いて15分ほど行った三坊七巷へ。ここは3年前も昼間散策したことがある。中国にはよくある、昔の街を再現した観光スポット。その一角にお茶屋があった。ただお勧めのプーアール茶屋には、先客があり、そのすぐ横の岩茶屋に入る。実に豪華な造りだったが、正直3年前にも感じたとおり、福州人は見栄を張る、外見を重視するということがはっきり出ている。帰りがけに琉球王国時代の事務所であった琉球館の前を通りかかる。これも何かのご縁か。この付近、ライトアップがきれいだが、琉球館はひっそりと暗がりの中にあった。

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