静岡のお茶を訪ねて2015(3)川根でチャレンジする茶農家

Mさんちで

駅前には家は見られなかったが、少し歩くといくつも家がある。緩やかな登りに、江戸時代からあるお茶畑が広がる。オーガニック認定農地なるものもあったが、小さな面積に、ほぼ放棄地のような茶畑。これでどれだけの収穫量があるのだろうか。有機、オーガニックという言葉には何となく疑問がある。そして本当の放棄地も散見される。やはりここも後継者がいない状況だと実感できる。

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Mさんちの茶畑は何か所かに分かれており、色々な品種が植えられている。きれいに整備された茶畑、少しだけ伸びてきた新芽に霧がうっすらかかる。これまで出来上がった商品を数種類、飲んでみたことがあるが、いずれも独特で、紅茶もあれば、烏龍茶、微発酵茶もある。煎茶オンリーとは違い、実にチャレンジングな茶農家さんであるが、その原点がこの畑にあるということにはちょっと感じるものがある。現在は茶園管理から、製茶、そして販売までほぼ一人で行っているという。

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Mさんとは昨年のエコ茶会で初めて会ったが、初対面から『FB見てるよ』と笑顔で言われ、引き込まれた。昔はバックパッカーもやり、海外青年協力隊でセネガルに滞在した経験もあるという。海外に対する抵抗感が少なく、新しい物へのチャレンジ精神も旺盛なのだろう。エコ茶会だけでなく、色々なイベントに自ら出向き、ブースを出して、自ら茶の説明をして、売っていく。

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現代の行商人スタイル。本当にいい物を知ってもらうためには、対面が一番、ということだろうか。青山のファーマーズマーケットで会った時には、『試飲してもらうのも大変だ』と言いながらも、通り掛かる人に声を掛けていたのが印象的。実際お茶のイベントにはお茶に興味のある人しか来ないので、何の問題もないが、農産品全般のマーケットでのお茶のニーズは高くはないと言わざるを得ない。そのハードルの高いところで、如何に認知してもらい、売っていくか、これはもう修行の世界のように見えた。

 

現在の茶業の厳しさ、将来への不安、様々なお話をお家に上がり込み、お茶を頂きながらずっと聞いていた。正直昼ご飯を食べることも頭になく、自分でも驚いてしまった。この環境、台湾人や中国人の茶業関係者は絶対に見たいだろうなと思う。茶畑を見ながら、日本の農家を見て、そして抜群の自然環境を見る。更にはSLに乗れる。ということで、私の僅かな滞在時間が終了となり、Mさんに車で送ってもらい、SLに乗り込むことになった。

 

SLの旅

千頭駅でMさんと別れ、切符を買ってホームに入る。SLに乗るには通常乗車券のほか、SL急行券が必要で合計2520円。週末に運行される機関車トーマスはこれよりさらに高いが、人気があり、予約が取れないらしい。この料金の高さに、観光ツアーの方では1駅だけ乗せてあとはバスで運ぶようになり、それに対抗して、SL停車駅を減らしているとの話を聞いた。実際停車駅は川根温泉と家山の2つだけだった。

 

ホームにはかなり古い客車が既に入線しており、前の方では機関車が白い煙を吐き、雄たけびを上げていた。うーん、何とも言えない光景。雨の平日で乗客は多くないが、皆がその雄姿を見て、写真に収めている。C11という型らしい。客車は昭和10₋20年代に活躍した標準型とある。まるでドラマの撮影用、といった感じの造りであり、乗っていると、タイムスリップしたような感覚に捕らわれる。

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車掌さんのアナウンスがなかなかユニークだ。突然歌が始まったり、また車両を回るのに、ハモニカを吹いていたりする。何とも旅情を掻き立てられる演出で面白い。車窓から覗く茶畑、趣がある。単に来た道を帰るだけなのだが、雰囲気が違うと気分も違う。面白いものだ。

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新金谷駅まで1時間強で到着。朝乗った駅は金谷だったが、SLは新金谷止まり。何となく不便だが、歩いて金谷駅まで行けると聞いていたので歩き出すと、かなりの雨が降ってきて断念。駅へ戻り、切符を買って金谷行き電車に乗り込む。たった一駅、面倒だ。そして金谷からJRで静岡へ。

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バスに乗れず

静岡駅で降りて、新宿行のバスに乗るため、チケット売り場へ。このチケット売り場、いつも混んでいる。というより、窓口が1つで、皆が色々と質問しながら買うため、なかなか列が進まない。前回も結局自動販売機で買って、何とか乗れたので、今回は最初から自販機に進む。そして面倒な手順を経て、何とか購入までこぎ着けたのだが、何と表示された画面は『このバスには男性のお客様は乗車できません』だった。え、差別?どうやら、女性専用席しか空いていないという意味らしい。夜行バスでもなく、僅か3時間半ほどのバスで男女をそこまで分ける必要があるのだろうか?

 

何とも釈然としない思いだが、自販機に何を言っても仕方がない。そして列に並んでも時間が掛かる上、恐らくマニュアル通りの説明をされるだけ、と判断し、電車に切り替えた。実は在来線を使ってもバスの方が料金も安い上、時間も短いのだが、仕方がない。ホームに行くと、急に腹が鳴る。そうだ、昼飯も食べていなかった。急いで駅そばを頬張り、何とか電車に乗り込んで、後はひたすら、揺られ続けた。東京の家に着いたのは、夜も9時半過ぎだった。次回は早めにバスを予約しよう!

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