四国・和歌山・静岡茶旅2015(6)徳島 上勝の神田茶

霧の森ロッジに戻り、そこのカフェを見学する。脇さんのお茶関係の業績をここで初めて目にして、その多さに驚く。手もみ用の道具も展示されており、ちょっとしたお茶博物館になっているのがよい。そして喫茶スペースは、囲炉裏を囲むようになっているが、掘りごたつ式で、足が痺れることもない。こんな雰囲気でお茶を飲むなら、外国人も大喜びだろう。

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別のところには和室も備えられていた。そちらも茶道の茶室とは違い、気楽にお茶を楽しめるスペース。お菓子と一緒にお茶を飲む、畳もあり、椅子もある、くつろぎの空間。残念ながら出発の時間になり、お茶を飲む機会はなかったが、次回は是非ゆっくりした時間をここで過ごしてみたい。この四国の山の中に、このようなお茶の総合博物館がある、ということは実に貴重なことではないだろうか。

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4.上勝

それから車は徳島へ向かう。私は運転しないのでどこをどう通っているのかさっぱり分からないが、1時間半ぐらいでいつの間にか徳島市内へ入る。ここに来ると車が渋滞し、都市に来た感じが出る。それまでの山の中が嘘のような喧騒があり、ちょっと残念。今日はここから小1時間ほど行った上勝というところへ行く。

 

途中ランチの時間になり、雰囲気の良いレストランへ入る。店の横にはお遍路さんの接待所があるのが如何にも四国。私もいつかは歩いてみたい気分になる。このレストラン、周囲は田んぼと山に囲まれており、環境抜群。天気が良いので外で食べたい気分だったが、さすがにまだ涼しく断念。料理は柔らかいチキンカツに魚が付いて、豪勢だった。お雛様が飾られており、ムードも満点。

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武市さんの神田茶

食後、車は軽い山道を登る。S君は数年前に一度来たことがあるという。私は全く知らなかったのだが、上勝は『葉っぱビジネス(葉っぱを料理のつまとして出荷)』で有名になった街だという。「葉っぱをお札に変える魔法の町」と言われ、地域活性化の成功事例になっており、特に高齢者が生き生きと働く姿が好印象を与えたと聞く。

 

神田と書いて『じでん』と読む地区へ行く。ここで阿波晩茶を『神田茶』として作っている武市さんを訪問した。K和尚はこの名前にいたく興奮し、早々に実家へ送るべく、お茶を購入している。神田茶はこれまでの黒茶同様年に1度7月頃しか作らないので、それ以外の期間は小さな工場をやっているようだ。基本は兼業農家。

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神田茶の特徴は茶樹から枝ごと茶葉をしごきとり、釜茹でするところにあり、樽に漬ける作業などは同じだった。樽は明治時代から使っているものもある。ミャンマーから持ち込んだ酸茶を披露したが、やはり似ていることは似ているが、少し違うようだった。阿波晩茶の歴史は自生の山茶に始まるとのことだが、本当のことは良く分からないらしい。ここの晩茶は後発酵茶、一般的に使われる番茶の名前と混同される、ということで最近では晩茶と呼ぶことも多い。

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四国の山中とミャンマーや雲南の山中には何か共通点があるのだろうか。全く根拠はないが、私がこれまで旅して感じた感覚で言えば、『雲南ミャンマー系の一部は日本人のルーツの1つであり、海を渡って、ここ四国にやってきた。その時にお茶ももたらされ、山中に植えられ、茶作りが行われた』というもの。長い航海の中でもビタミンの不足などを補うため、この酸茶は実に有益だったのではないか、それが今の瀬戸内の茶粥などに繋がっていくのではないか。そんな妄想に取りつかれ始める。

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茶畑は直ぐ上にあり、向こうには見事な段々畑も見え、眺めがとても良い。ただ広さは左程なく、収穫量も限られている。斜面の一角に茶樹が植えられており、周囲には大きな石が一部妨げていた。まだまだ茶樹を植える余地はあると思うのだが、労働力の問題もあり、また販売にも限りあるのではないだろうか。阿波晩茶は一般的にこれまで黒茶より飲みやすく、消費者に受け入れられやすいと思うのだが、どうだろうか。

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S君と武市さんは茶農家らしく、かなり具体的な、新しい茶樹の植え方、管理の仕方などについて意見を交わしている。これまで日本の茶農家の相互交流というのはあったのだろうか?その地域、地域の伝統的なやり方にプラスして、他の地域の手法を取り入れることも重要ではないだろうか。S君の活動は実に深い意味があると感じる。

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農民家でお茶

神田を離れ、今日の宿泊先へ向かう。今日は初めての体験、農家民泊である。農家に泊まる、何だかうれしい。ようやく探し当てたその農家には誰もいなかった。鍵は開いているので勝手に上がって使ってよいとのこと。まるで誰かの家に上がり込む感じが懐かしい。ここは以前住んでいた人がいたが、その後空き家になり、宿泊を希望する客に貸している。完全に宿として整備しているのではなく、その生活品がそのまま置かれていたりするので、妙に子供の頃を思い出したりする。部屋には囲炉裏があり、雰囲気もある。面白いコンセプトだ。

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勝手に使ってよいというので、家の前のテーブルで夕陽が傾く中、いきなりお茶会が始まる。涼しいが寒いというほどでもなく、ちょうど良い。農家の庭先で早春に、暖かいお茶を頂く。なかなか味わいがある。梅がほころび、そしてお雛様が出したままになっている。実に落ち着いた午後だった。

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