静岡牧の原日帰り茶旅2014(2)白茶作りを手伝いながら懇談

茶作り

倉庫より更に小さい建物、物置もあった。そこへ入ると、小さな製茶道具が置かれていた。釜炒り用の大きな釜が目に飛び込んでくる。実に可愛らしい木製の揉捻機、まるで骨董品だ。『お茶農家はどんどん辞めていく。そこへ行き、必要な物を分けて貰ってくる』ということらしい。大規模農家は小さな機械は必要ない。博物館にでも入りそうな道具を大切に使う、これはいいことだ。

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ちょうど昨日摘んだ茶葉の処理が行われていた。奈良から手伝いの男性が来ていた。皆新しい茶の作り方を学んでいる。作業する労働者も足りないので、相互に補っている。報酬は作った茶だというから、勉強とは言いながら、いいお茶を作らないといけない。

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Sさん、彼は茶農家の後継ぎで、30歳前の若者。両親と一緒に伝統的な煎茶作りをしている合間に、釜炒り茶、白茶、烏龍茶、紅茶など、様々なお茶の製法を研究し、実際に作っている。そしてそれを発信し、将来に備えている。『これまで親がやってきた農業がずっと続くとは思えない。煎茶の需要もどんどん落ちてきている。将来は煎茶を作るだけではダメだ、と思っている』という。

 

辞めていく農家があると、茶畑を引き継ぐ話が来る。引き継げるいい条件の所があると引き継いで茶園を広げていく。商売としてやっているので、何でもかんでも引き受けることなどできない。皆これからの茶業全般が心配になっている。そんな中でSさんのように活発に新しいことにチャレンジして行く姿勢、素晴らしい。

 

ランチ

実は今日は3月に三河でお世話になり、奈良、宇治まで車で連れて行ってくれたIさんもここに来ていた。Iさんも様々な形で日本茶をサポートしており、その過程でSさんとも知り合い、3月の時もSさんも誘われて一緒に三河、奈良を旅している。かなりパワフルな女性だ。Iさんは在来種など色々な日本茶を持ってきてくれ、倉庫で淹れてくれた。これもまた面白い。

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ランチにレストランへ行った。茶畑に囲まれた場所で、地元の人が来るところ。大勢の人が食べていた。定食を頼むと、サラダや漬物は取り放題、ご飯もお替り自由、そして何よりおかずのボリュームが半端ない。まあ悠に1.5人分から2人分はあるような。これで800円は凄い。ボリュームだけではなく、味もよい。野菜などは新鮮なのだろう。地元でとれたものをここで販売もしている。ある意味、アンテナショップだろうか。牧の原生活センター、大満足だった。

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作業しながら懇談

午後も倉庫でお話しながら過ごす。Sさんに『ただ話していても詰まらないので、皆で茶葉の選り分けをしながら、話しましょう』と乗せられて、全員が作業員となる。それもまた楽しい。まるで麻雀でもするように、4人で卓を囲み、乾していた茶葉を持ってきて、芽の部分だけを取る。

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『白茶を作る』とSさんは言う。白茶の製造工程は萎凋と乾燥だけ。茶葉をそのまま放置していれば、白茶になってしまう。ただ芽の部分だけを使うため、我々はこの作業をしている。黙々と、いやお茶の話をしながら、芽を取って行く。Sさんが私の作業を見て『えー、本当に芽の部分しか採らないんですね、それだとお茶の量は殆どできませんよ』と指摘する。確かに私は本当に小さな芽の部分のみを取るため、他の人に比べて収穫量が少ない。その代り、実にきれいな芽が並んでいた。

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『だってこんなお茶が飲んでみたいから』と反発したものの、まさにこれでは商売にならないと感じる。自分が飲んでみたいお茶と販売するお茶、それが一致することなど稀であろう。私は急に何かに気が付かされたように思えたが、そのまま心の中に放置した。

 

あっという間に時間が過ぎ、夕方になってしまった。バスの時間も考慮して、4時過ぎに車でバス停に送ってもらった。何とも短い滞在で、とても牧の原の全貌など知る由もない。ただちょっとでも触れてみると、大いに興味が湧く。これはいい経験だった。次回はもう少しいろいろな所を見てみたい。

 

バスで静岡駅へ戻り、そこからは高速バスに乗ることにした。新宿まで直行するというので、電車の乗り換えを考えるとバスが便利と判断した。料金も電車とさほど変わらない。ただ切符を買うのに、ちょっと時間がかかり、危うく乗り遅れそうになった。日本は順番を守るのは良いが、急いでいる人かどうか、判断してサービスして欲しい。

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バスは快適に飛ばし、途中で一度休憩した。そして都内に入る頃、少し渋滞しただけで渋谷に着いた。新宿まで行く必要もなく、渋谷で降りて、電車で帰宅した。長い長い一日だったが、その日の深夜にはワールドカップの決勝トーナメントが始まり、また私の戦いが始まった。つかの間のリフレッシュ、その表現が相応しい牧の原の一日だった。

1 thought on “静岡牧の原日帰り茶旅2014(2)白茶作りを手伝いながら懇談

  1. 廃業が多い中若い後継者は頼もしいですね
    茶農家さんの夢が大きく広がってほしいです

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