懐かしの安渓を再訪する2014(3)安渓 手作り茶は重労働の連続

5月4日(日)

朝6時から

前日は暗くなる前に張さんの家に戻り、夜も早く寝た。張さんは戻らなかった。彼は大漁の茶葉と格闘しているのだろう。本当に真剣勝負だ。翌朝は5時台に起床、雨は降っておらず、鳥のさえずりで目が覚めた。

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高さん息子が6時前に作業場へ向かう。私もお供した。今日は一日中、作業場で作業を眺める予定だ。勿論一言もこちらからは話し掛けないという約束である。朝のさわやかな茶畑の道を歩く。気持ちが良い。

 

作業場では張さんが窯に火を入れていた。薪をくべ、温度の調節を図っている。昨晩室内萎凋させた茶葉を炒る作業が始まった。炒られた茶葉を高さん息子が取り出し、揉捻機に掛ける。それが終わると茶葉を布で巻く。巻かれた布は団揉のため機械へ。機械がグルグル回り、茶葉が固められていく。布をほどく真ん丸でこちこちに固まっている。そして軽く乾燥機に入れる。そしてまた茶葉を取り出し、布で巻く。

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作業はこれの繰り返しに見えた。何回も何回も布を撒いてはほどき、また巻いてはほどく。果てしない作業に見える。その度に張さんは渾身の力を籠める。既に66歳、確かにこれはきつい仕事だ。しかも前日からほとんど寝ていない。気を抜けば茶葉はダメになる。何と恐ろしい仕事なのだ。だから張さんは昨年『早く引退したい。きつくて仕方がない』と言っていたのだ。

 

 

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10時頃安飛がやってきた。やはり気になっているようだ。確かに昨日大量の茶葉を処理していたのだから、心配になるのも無理はない。張さんと高さん息子は黙々と自分の仕事をこなしていた。最終的に火入れの仕上げをする。これがまた曲者。ちょっと気を抜くと焦げたり、香りを飛ばしてしまったり。慎重に慎重に張さんは籠に手を入れて確認している。

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表では機械音が鳴り響始めた。近所で機械摘みの作業をしている。どうしてもこの音になじめない。機械で摘めばどれだけ早いかは昨日良く分かっていた。それでもこれは茶業をダメにしてしまう音にさえ、聞えてしまう。

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昼頃、何と高さん達が茶葉を摘んでやってきた。この上また茶葉を処理しなければならない。今夜も張さんは眠れない。その茶葉を見ただけで心が苦しくなってきた。それでももうすぐ雨が降る、それまでにできることはやって行かなければならない。過酷な状況が続いていた。

 

午後の雨

午後に入り、少し散歩でもしようと思い、外へ出た。雨はまだ降ってきていなかったが、空は曇っていた。途中で茶畑に出ていた人々が戻ってくるのに出くわした。張さんが『もう茶葉は要らない』と指令を出したようだ。摘んだ茶葉を急いで天日干しにしている。

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ついに雨が降り出した。全く予想通りの展開だ。天気予報もそうだが、張さんの長年の経験は的確に予測していた。茶葉を室内の収容したところ、次女の旦那がビーフンを作ってくれた。今日作業場では食事を取っていなかった。このビーフン、汁麺で実に美味い。皆この簡単な料理を美味く、手早く作り、立って食べる。

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あとの作業は張さん、高さん息子、安飛、次男旦那の4人で行う。これなら効率は格段に上がる。もし張さんの作る茶葉の値段が今の4倍になれば、このように労力をかけた作業も可能になるのだろうか。いや、残念ながら茶作りは1年の内、数週間しかない。これで全員が満足に食べていくことはできない。そこに難しさがある。

 

安飛が雨の中、製茶済の茶葉を担いで出ていく。バイクで素早く張家に持ち込み、奥さんや高さんが枝とりの作業をするためだ。雨の中を天秤棒で担いでいくのは大変だ、という配慮。

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室内には大量の茶葉が摘み上がる。昨日製茶を開始した茶葉が最後の火入れを待っていた。それを黙々と処理していく。火の加減を調整し、籠の中の茶葉の様子を刻々と確認していく。4つの籠を一度に使っていく。勿論まだ団揉する茶葉もある。そして今日摘んだ茶葉もある。

 

夕方6時、あたりが暗くなる前に家に戻るように指示が出て帰る。一日がとても長かった。製茶がこんなにも大変な作業だと初めて知った。そして今日もまた寝ずに作業をこなす張さんの姿にはある種の感動がある。これだけのことをして、それほどの報酬に恵まれない。息子や娘たちが自らは跡を継がない理由も十分に分かった。

 

家では持ち込まれた茶葉の枝とりが行われていた。これもまた地道な、気の遠くなるような作業。思わず私も座り込み、この作業に加わりながら、話をする。一年中この作業をしろと言われれば誰も出来ないだろう。茶葉を疎かにしてはならない、特に手で摘んだ茶葉から作られたお茶は大切に飲もうと、痛切に感じる。

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