静岡、三重、奈良茶旅2021(4)亀山へ

10月19日(火)亀山へ

翌日も宿で朝食を食べてから出掛けた。駅へ行くと大勢の人が集まっている。衆議院選挙なんだな、と思っていると、何と田村厚生労働大臣が現れ、演説を始めるところだった。そうか彼の選挙区は三重だったか。厚労大臣と言えば今や時の人だから、地元としても力が入っている。

私は今日も切符を買い、JRに乗り込んだ。昨日とは反対方向、亀山に向かう。僅か20分ほどで到着する。駅を出るとNさんが待っていてくれた。Nさんとは、Facebook上で知り合いになった。彼の投稿に茶の歴史関連が多く、三重茶の歴史にも詳しそうだったので、いきなりメッセージしてみたところ、快く迎え入れてくれたのだ。

だが彼がどんな仕事をしている人なのか、全く知らなかった。この辺が茶旅の面白いとこであり、恐ろしいところでもある。車に乗り込んですぐに『私が誰だから分からずに連絡してきましたね』とNさんに言われ、ドキッとした。そしてその車はどこへ進むのかも分からなかった。

到着した場所、それは試験場だった。茶業研究室、それがNさんの職場。何と茶の歴史好きというだけではなく、茶の専門家だったのだ。早々に三重県の茶業史などについて、色々と教えを乞う。私が今興味を持っているのは、明治初期の駒田作五郎、大正期の伊達民三郎、そして戦後紅茶史に輝く川戸勉、全て三重出身の茶業者だ。駒田、伊達については、地元有志で研究が進められているという。

そこへ川戸勉氏の息子さんが登場した。今回一番会いたかった人をNさんがわざわざアレンジしてくれていた。感謝しかない。ここからは戦後の紅茶史、特に川戸紅茶と森永紅茶に関して、かなり具体的なお話を聞いた。そして戦後の国産紅茶が、戦前の台湾から脈々と繋がるものであり、三井の日東紅茶を作った人々の歴史でもあることを確信した。

川戸さんが紅茶作りで使ったべにほまれは、その後の国産紅茶終焉でほぼなくなってしまったが、最近地元有志が復活を目指して活動しているという。今回は試験場に植えられたべにほまれの前で写真を撮らせて頂き、お別れした。

お昼時となったので、Nさんの案内で、イタリアンレストランへ行く。なぜイタリアンかというと、ここで亀山紅茶が飲めるからだという。最近の和紅茶ブームもあり、日本各地で国産紅茶が飲めるのは嬉しい。それから以前紅茶工場があったあたりに行ってみたが、全く痕跡はなかった。

最後に先ほどの川戸さんのご自宅に立ち寄り、何と川戸さんが経営していた有名な喫茶店のカップ(モーレツ紅茶の名称入り)を頂戴した。すでに数年前に閉店しているこのお店のカップ、プレミア商品だ。更にお自宅の裏に残る茶工場、そして製茶機械を拝見した。確かにここに紅茶作りがあったことを確認した。Nさんに駅まで送ってもらい、駅前のお店で亀山紅茶を買って、電車に乗り込んだ。

博物館と図書館

津駅まで戻ると雨が降っていた。一度宿に戻ろうかとも考えたが、先ほどNさんから県立博物館へ行ってみたら、と言われていたので、バスを探してみた。すると今まさに出ようとしていたので思わず乗り込んでしまう。雨の中、15分ぐらいでバスは博物館の近くに止まった。

博物館の受付で『お茶に関する展示が見たい』と言ってみると、何とわざわざご担当者が出てこられて、『お茶関連の展示は殆どないのですが』と恐縮している。ちょっと話していると、駒田作五郎関連の品などがご子孫から提供されているらしいが、まだ公開には至っていないという。三重のお茶の歴史は、実はこれからなのではないか。

博物館の展示を見学すると、確かに茶業関連のプレートはちょっとあるだけだった。そこにはあの大茶商、大谷嘉兵衛と並んで駒田の名前もあった。三重は松阪商人などが名を馳せており、商業に関する展示は多かった。そう、あのエカテリーナの茶会で紅茶を飲んだ(日本紅茶の日の由来)と言われる大黒屋光太夫も伊勢の船乗りだった。

そしてこの博物館は総合博物館と書かれており、古代の恐竜から現代まで、相当力の入った展示が行われている。今後茶業の展示が増えることに期待したい。3階に資料室があるというので行ってみたが、資料があるのかもよく分からず、コピー不可と言われてすごすごと立ち去る。

まだ雨は降っていたが、すぐ横に図書館があったので、そちらへ移動する。こちらでは色々と資料の検索をしてもらい、茶業関係の資料のコピーもできてよかった。三重の茶業、江戸時代、明治時代から現代までかなり興味深い。まあ今でも日本で3番目の生産量があるのだから、もっと注目される存在だろう。ただ三重茶業史の歴史上の人物が分かってくるのはまさにこれからだろう。帰りもバスに乗ろうと思ったが、雨も止んだので、ゆっくり歩いて帰った。夜は疲れたので外出はせず、夜泣きラーメンを食べて寝る。

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