ダージリンお茶散歩2011(3)マカイバリ ティテースティング

何をそんなに急ぐ 中国人ツアー

ラジャ氏が「最近中国人のツアーが毎日のように来て忙しい」とぼやく。それは中国が国慶節休みで7連休だったからだと伝える。それにしても彼らは一体何のために来るのだろうか。ラジャ氏も中国人の真意は掴みかねると言っている。

工場見学中に5-6人の中国人がどやどやと入ってきて、ワーッと説明を受けながら、写真をバチバチ撮り、走るように去って行った。「これが中国式さ」と従業員たちも呆れ顔。そんなに忙しく見てどうするんだろうか、という顔をしている。

中国人の中年の男女が写真を撮りに戻ってきたので声を掛けた。四川省で緑茶の栽培をしていると言う。工場訪問の目的を聞くと「視察さ」と答えるのみ。彼らの作っているお茶の名前を聞いたが、緑茶であること以外分からなかった。彼らはそれ程急いでいた。何をそんなに急ぐのか、兎に角これは商売の為とか、有機栽培を学びに来たとかいうのではなく、単なる観光だろう。

しかし後で聞いてみると、ある中国人茶商から、ここの茶葉をそのままバッグに入れたティーバッグは出来ないか、と具体的な商談もあったらしい。中国で今から本格的な有機栽培を行うのは至難の業。一方消費者のニーズは高まっている。それでここからの輸入を考えたのだろう。「基本的に我々は中国人を信用しない。彼らは契約を守らないし、何でも金で解決しようとする。インドとは相いれない」、これがインド的な考え方であるが、それでも中印の貿易は進んでいくのだろう、ゆっくりと。

ティ-テースティング



オフィスの2階でティーテースティングが行われた。6種類のお茶が準備されている。「First Flush Vintage」「Muscatel」「Oolong」「Silver Green」「White Tea」「Silver Tips」と茶葉の缶に名前が書かれている。「First Flush Vintage」とは一番茶。4月頃の紅茶であろう。なかなかすっきりした味わいがある。ちょっと甘みも感じられる。

「Muscatel」は二番茶。6月頃の紅茶。この風味はちょっと独特で表現が難しいが、私はこれが良いと思う。実際にテースティングを進行した若者も「基本的にはFirst Flushより美味しい」と述べていた。

「Oolong」は烏龍茶。ダージリンで烏龍茶?アメリカからの要望があり少量生産している。味が分散しており、香りもなく、特に美味しいとは感じられない。ラジャ氏はこれを「Drjoolong」と冗談で言っていた。

「Silver Green」「White Tea」は緑茶との説明。「Silver Green」は所謂あら茶の感触。緑茶と言っても香りが立つわけでもない。面白いのは「White Tea」。中国茶の白牡丹よりヒントを得て作ったため白茶と名付けているが、不発酵で緑茶なのだと言う。これがなかなかイケル。紅茶好きには受けないかもしれないが、Silver Needleなどが好きなヨーロッパ人にはいいかもしれない。

「Silver Tips」は芽だけで作った最高級品。茶水の色は「White Tea」と同じぐらい薄く、品が良い。味わいも深く、微妙な感触がある。

テースティングだが、2gずつカップに茶葉を入れて4分間蒸らす。そして大き目の茶碗に移して、スプーンですくって口に含み、ブクブクしてから吐き出す。中国茶も同じ要領だから紅茶から学んだかもしれない。

管理責任者の話

茶園の管理責任者から少し話を聞くことが出来た。年間生産量は13万ケース(1ケース30㎏?)、内高級茶は5万ケース。ティーバックはここでは水分が多過ぎるので、乾燥しているシリグリに別に工場を持っている。マカイバリは湿度が高く、茶の生産に適しているが、最近は木材の伐採などで気温が上昇、今後の生産への影響が懸念されるという。自然災害としては2年前のモンスーンで150戸、先月の地震で50戸が被害を受けたが、いずれも軽微。

今年は人件費も高騰。職員、ワーカーとも給与が35%程度上昇しており、価格にも反映されている。ワーカーの日当は90rp、また出来高として1㎏あたり7rpが支払われる。全職員は650人、住宅が支給されるほか、医療費は無料、年金もある。また職員が退職するとその子女は即座にここに職を得ることもできる。この付近の人間はここで働きたいと考えるのでワーカー不足の心配はない。この地域としては、昨年まで州の帰属問題などでストライキが頻発したが、マカイバリには影響はなかった。

ファーストフラッシュ(3-4月)、セカンド(5-6月)、サマー(7-8月)、オータム(10月)の4期に分かれている。価格はファーストが高いが、美味しいのはセカンド。紅茶の輸出先はフランス、アメリカ、日本、イギリス、近年はインド経済が好調で国内消費が高まり、国内向け販売もかなり伸びている。特にホワイトティーはインドで人気が高い。ウーロン茶はアメリカに需要があり生産しているが量は少ない。

有機栽培を如何に維持するのかとの質問には「マカイバリには深い森があり、周囲を囲んでいるので、森が守ってくれる」と。また周辺の茶園も昨年から化学肥料の使用を辞めるなど、有機に対する考えが深まっている。

クルセオンの街

ランチはライス。どうやらここでは昼にライス、夜はヌードルになるらしい。その方が健康的な気もする。それにしてもキャベツ炒めは塩辛い。が、それを美味しいと感じる所が汗の出過ぎなのだろう。またオレンジを絞ったジュースは極めてジューシーで美味しかった。

午後オフィスに行き、ネット接続を試す。モデムを使用したが、簡単に接続できた。2日ぶりの通信は、嬉しいような、余計なことをしたような複雑な気分。勿論緊急や特別なメールが無かったから、こんなことが言えるのだが。オフィスに居る時、通り雨があり、午後としては涼しい気温に。ここはクルセオンのホテルを訪ねてみようと坂を上る。我々の居る場所から上を見るとホテルは山の上に立派に建っており、興味をひかれる。

しかし昨日同様坂を上ることは難儀であった。昨日ほど暑くないので汗は少なかったが、それでもかなり絞れた。このような運動が日本でも必要なのである。実質的に食事が制限されている今の環境で運動すれば、体は軽くなるだろう。人間は、いや私は、何故自己規制が出来なのだろう。

30分ほど登るとココランパレスに到着。後でラジャ氏に聞くと「ここは州知事であった叔父の夏の別荘だった」そうだ。中に入ると、確かにホテルと言うよりはどこか別荘風の作りになっており、なかなか楽しい。

このホテルを紹介してくれたのはセット氏で「ここでお茶を飲むといいよ」と言われたのだが、ティールームが見付からない。ようやく見つかったのは2階の一角。マカイバリの方は見えない場所。お茶を飲まずに去ることにした。因みに1泊2,200rpとのことで、泊まってみてもよいかと思う値段であった。

折角なので道沿いを歩いてみる。もう一つ目を引いた建物は学校であった。何だか赤毛のアンの世界を思わせる可愛らしい校舎だ。英語学校とある。この付近は子供にも早くから英語を習わせている。それが将来の希望に繋がるから。村人は皆言う。「日本人は殆ど英語が出来ない。我々はコミュニケーションに困るが、日本では日本語だけで用が足りると言う証拠。羨ましい気もする」と。

紅茶研究センターの看板が出ている。恐れずに入ってみる。インド紅茶協会や農業部の下部組織であろう。ここがインド紅茶発祥の地であることを考えれば当然あるべくしてある。しかし本日は休業日とかで誰もいない。諦めて更に進む。紅茶工場もあった。しかし門番はマネージャーがいないとして、入るのは遮られる。仕方なく、今来た道をとぼとぼと戻る。





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