豊原・台中・鹿谷散歩2016(2)無理やり豊原の古跡へ

113日(木)
豊原の古跡

 

翌朝はゆっくりと起きる。ホテルに朝食が付いているので、ビュッフェから粥とスープを選んで、もぐもぐと食べる。今日ジョニーは台北に日帰り出張。彼は本当にとても忙しい人なのだが、そんな顔を見せずに相手をしてくれるので、嬉しい反面、申し訳ない思いだ。今日は彼の部下の女性が豊原を案内してくれるというので、お言葉に甘える。

 

林さんは大学を卒業して、斗六で働いていたが、地元の豊原に戻って来たらしい。英語も出来るので、私の案内を命じられたらしい。それでも私の要請する、豊原にある歴史的な建物、というテーマには完全に首を傾げるばかり。運転手も一緒になってどこへ行くんだ、としきりに相談している。豊原は日本時代も木材の貿易などで栄えた街、と聞いていたので、古くてよい建物が残っているはずだと思い込んでしまっていた。

 

まず連れて行ってもらったのは、街中のお寺。慈済宮という名前のその寺は確かに歴史を感じさせた。ただ案内を見ても『創建年代は非常に古く、史料は存在しない。清の雍正年間にはすでにあった』と書かれている。これには好感が持てる。中国大陸の歴史的建造物などは、本当にそんなに古いかな、と疑いたくなるような説明を時々見かけることがあるが、分からないものは分からないと言った方がすっきりする。但しこれは台湾には文献などがあまり残っていないこともはっきりと示しており、台湾茶の歴史を追っていく困難をも感じさせる。

 

お寺の中は平日の午前中でも誰かがお参りをしており、線香のにおいが立ち込め、煙で周囲が霞む。航海の安全、などという言葉も出てくるので、往時は豊原から大陸に渡る、いや往来する人や物資の安全を祈願したのかもしれない。横に立つのが廟東夜市。ここが昔からの豊原の中心地であることはよくわかる。

 

一度店に顔を出し、再度どこへ行くか相談する。店の周囲は午前中露店市が立ち、車の通行などは出来ない。店の前も露天商に占拠され、看板も見えない。泉芳茶荘の歴史もそれはそれは長いのだろう。創業から約100年経つというが、店の場所は変わったのだろうか。勿論今の店は改装されてきれいになっているが、何とも街に溶け込んで、ひっそりと営業しているように見える。

 

車は郊外に進んだ。家々が連なる中に、萬選居と言われる古い建物があった。相当広い四合院作り。空が突き抜けており、北京などとは違って解放感が凄くある。ここは岸里社の家の邸宅。元々は潮州客家の張達京が台中の開拓で成功を収め、地元民にも慕われてこの地に定住、その子孫が1873年に作ったのがここらしい。921地震で一部が壊れ、2004年に修復されたとある。過去にも広東客家の家をいくつか見たことがあるが、これだけの規模の、これだけしっかりした作りのところはなかった。往時張家が如何に繁栄していたかを物語っている。因みに張家は今も台中で、バスや金融などの事業を行い、先代は台中市長も務めたと聞く。

 

帰りがけに、立派な門のあるお屋敷にも立ち寄った。確かにここは普通の家ではないな、と感じさせるものがあったが、立ち入り禁止とのことで、中に入ることはできなかった。隙間からちょっと覗くと、相当広い日本的な?庭があるようだった。そしてこの家の歴史などについても、何の表示もなく、分からなかった。今後保存の対象にするため、現在非公開なのかもしれない。

 

昼ご飯は街中に戻り、赤肉羹麺と魯肉飯を食べた。豊原でもここが有名で美味しい、ということ態々連れてきてもらった。この両方をいっぺんに食べたのだから満腹となる。豊原というところは昨晩の夜市と言い、なぜこんなに食べ物が美味いのだろうか。普通はお金の集まる所に、美食も集まると言われるが、台湾の場合、特にB級グルメ、屋台料理が美味いのには、他に理由があるはずだ。これは十分に研究の対象となる。

 

台中へ

豊原にはそれほど見る物もないということで台中へ向かった。元々彼らが立ててくれた予定は台中行だったようで申し訳ない。豊原と台中は車で15分程度だから、豊原も台中の一部と言えば、そういえるかもしれない。だから日本人で豊原に泊まる人などいないのだ。まずは台中の高級住宅街へ車が入っていく。

 

なぜここに来たのか、と思ったら、林さんは面白い洋菓子屋さんに入った。正面の出入り口から中を覗くことはできずに、まさかそこに入り口があるとは分らなかった。中には美味しそうなケーキやプリンが並んでいる。『ここのプリンが美味しいんです』と買い込む林さん。けげんな表情の私に『ここが私の元の会社なんです』と説明する。実は彼女は斗六の菓子会社で広告の仕事をしており、ここは台中店なのだという。正直斗六という街にはいったこともないが、こんなおしゃれない店を作る若者がいるのであれば、興味が沸いてくる。機会があれば行ってみよう。

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