福建・広東 大茶旅2016(13)広州を歩く

1016日(日)
広州散策

翌朝は早めに起きて出掛けた。Tさんはどうしても広州の伝統的な飲茶風景を撮影したいという。昨日張さんに聞くと、行くなら北園か南園だろうというので、北園酒家に向かう。地下鉄に乗って最寄り駅で降りたつもりだったが、全然違うところに来てしまった。なぜか目の前に中国大飯店、そして東方賓館が見える。

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ここは29年前、留学中に突然やってきた広州で泊まったホテルだった。当時の広州は中国で最も発展していた町、と記憶している。何しろタクシーが手をあげれば停まった。空港からメータータクシーで東方賓館まで運ばれた。賓館でもすぐにチェックイン出来た。その頃の中国ではありえないサービスの連続だった。ここだけに資本主義があった。その横の中国大飯店といえば、何と言っても2003年のSARSの時、このホテルで開かれた会議に出張していたが、広州の日本人の握手を拒否された場所。戻っていくと香港が大変なことになっていたのは今や歴史だ。

 

掃除していたおばさんに聞いたが、この近くには北園はないようだった。仕方なくタクシーを拾う。運転手にTさんが『たまには北園で飲茶しますか?』と聞くと、そんなバカな、という感じの声で、『俺たちは数元の包子を食えばいいんだ』と答えたのが気になった。北園の前に到着すると、数人が並んでいた。以前広州で飲茶した時、朝は6時ぐらいから開店しており、おじいさんがゆっくりとお茶を飲んでいたものだ。だが今は午前8時。それなのに店は開いていなかった。どういうことだろうか。

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実は飲茶というのは中国では早茶と言い、朝食べるものなのだ。しかし現在は日本人が思うように昼ご飯に代わっている。この店も数年前にオーナーが変わったのか、その名声を武器に高級店化を図り、開店は11時からになっている。これではもう古き良き早茶文化は見られない。因みに今日は日曜日、特別に9時に開店し、顧客サービスをしているらしい。それで人が並んでいたわけだ。

 

1時間待ってもいいことはなさそうだったので、向かいにある越秀公園に入る。この公園も90年近い歴史を誇り、かなりの広さがある。中国の公園でよく見られるおばさんたちの体操。その脇を登ると、アヘン戦争時にあった砲台跡の表示が見える。上には何も残っていなかったが、当時イギリスに占拠されたこの高台を義勇軍が奪還したとある。

 

そして降りてくると広州博物館がある。開館は9時からなので少し待つ。鎮海楼、という名所を博物館にしている。ここは入場料を取るので民間が運営していることが分かる(行政単位が運営していれば全国どこでも博物館は無料)。このような歴史的な建物を利用して商売する人々も出てきたのだろう。

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ここには広東十三行を復元した模型がある。1850年に火災で燃え、再建されたがまたアヘン戦争で燃えた商館の様子が見える。実際に使われた木箱もある。この公園が昔は越秀城であったことも分る。だから先ほどの砲台が設置されていたのだ。ここもアヘン戦争の遺跡の1つだと言える。更に行くと広州の象徴、五羊の像がある。ここには30年前にも来た記憶がある。

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Tさんがイスラム寺院に行きたいという。広州は古くからの貿易港。イスラム商人の出入りもかなりあったということか。茶葉貿易はなかったと思うのだが。懐聖寺、という唐代創建の古い寺が旧市街地にあった。だが門はしっかりと閉まっていて、中には入れない。ここにある塔が有名だ。この寺の向かいには清真料理屋がある。ウイグル系の顔をした男性が、羊肉を焼く準備をしていた。『寺には入れないね』と声を掛けると『誰でも入れるよ』というではないか。

 

ただまだ時間が早いので、先ほどの五羊の謎を調べに行く。広州に羊などいるのだろうか。それを知るためにはある廟へ行けと言われた。五羊仙清という門がある。その中へ入っていくと、2000年以上前に、五人の仙人が羊に乗って広州へ降りて来た、という伝説が語られている。その煌びやかな絵を見ると、返って疑わしく思われるが、伝説にはやはり伝説になる何か理由はあるのだろう。羊の謎は深まるばかりだった。

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イスラム寺院に戻り、結局このレストランで食事をすることにした。この家族はカシュガルからやってきたという。普通話の訛りがきつい。幼い女の子が可愛い。ナンが美味しそうだ。この付近は中東系などイスラム教徒が歩いており、彼らの食べられるものが売られている。だがこの店には漢族のおじさんたちが入ってきて、沢山料理を並べてがつがつ食べている。うーん。これはウイグル族にはかなりのプレッシャーのように見える。

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懐聖寺の門は開いていた。ウイグル人が開けてくれていたようだ。だが中へ入ろうとすると漢族の門番が急に出てきて『今日は入れない』と立ちはだかる。その口調には80年代に経験した、実に横柄な、融通のかけらもない、ぶっきらぼうな漢族が想起させられた。ウイグル族と漢族の間の問題、この辺が尾を引いているようだ。

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次はキリスト教の教会、聖心大教会へタクシーで向かう。何とも忙しい。気温がかなり上昇し、暑くて仕方がない。そろそろ体力が尽きてきた。教会内に駆け込む。ここは広州の観光スポットであり、若者が多く来ていた。中には短パン、ミニスカートを咎められ、ズボンを貸し与えられている者もいる。教会内は撮影禁止とあるが、皆構わずスマホで撮っている。前の方では説話が行われているが、どれだけの人が聞いているのか。

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