福建・広東 大茶旅2016(7)大坪の自然生活

109日(日)
張さんと再会する

翌朝も天気は良くなかった。朝ご飯は宿に付いているとのことで、8時頃に管理人の若者が持ってきてくれた。だがちょっと塩辛い麵とおかず。今日も写真を撮る環境にはない。まずは何をおいても張さんの家に行こうと考える。大坪まで来て、挨拶しないというのは何とも義理を欠く。

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街は小さいのだが、完全に道を忘れてしまっていた。前回来たのは1年半前であり、且つ基本的に張さんの家と製茶場を行き来するだけだったので、街全体を掴めていなかった。目印のホテルを見つけ、そこを頼りに行くが迷路のようになってしまった。昔はもっと覚えがよかったし、方向感覚もよかったなどと言っても始まらない。一人なら何でもよいが、Tさんも一緒だから申し訳ない。今回の旅はTさんの旅に付いていくはずだったのに、いつの間にか私が案内する羽目に陥っている。

 

3人に聞いてようやく張家に着いた。何しろこの辺の苗字は皆張なのだから始末に悪い。家に行くとすでに安飛から連絡がいっていたようで、皆が、そら来た、という顔をした。この家を訪ねるのも4回目である。中でも香港の高さんがちょうど昨日こちらに来たばかりで、嬉しい再会となる。早速お茶を飲む。張さんは『天気が悪いので、鉄観音の秋茶はない』ときっぱり。確かにこの天気では本来茶は作れない。春茶の残りを頂くが、何となく渋みを感じる。

 

それからやはり製茶場へ行こうということになり、張さんと3人で向かう。Tさんにとっては初めての場所だが、その良さは分ってもらえたのではないだろうか。しかしやはり茶を作っている方が更に良いには違いない。今は静かな山村の秋、しかも小雨が降る中で、風情はあるが、茶の香りが欲しい。

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昼時になり、家に戻ると、高さんと妹がいつものように枝取りをしていた。これまでに作った黄金桂や本山茶の枝を取って香港に持って帰る。それを売るのが高さんの仕事だが、その商品はあまりにも少なく、ちょっとと心配だ。主力商品が天候次第というのは、何とも心もとない。

 

ご飯を頂く。何しろ私はここのご飯が大好きなので、嬉しい限りだ。何と寒いから、というので、自家製の酒をご飯にかけて食べている。Tさんも美味いと言っているが、私はダメだ。『私はやはり地瓜がいい』とわがままを言う。夕飯は地瓜が用意されることになる。いつもこの時期は茶作りの真っ最中でおちおちご飯など食べていられないのだが、この雨でゆっくり食べる。張さんもすでに70歳、そろそろ引退すべきかもしれない。顔を見れば、茶作りの重圧から解放されており、雨なのに何とも晴れやかだ。

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することもないので、小雨ながら洗濯することにした。安飛の家には洗濯機があるというのでそちらへ出掛ける。彼はセメント関係の仕事で結構儲けており、副業で茶も売っているから、かなり裕福で、家も立派だ。張さんの長女が奥さんであり、雰囲気が似ている。洗濯中色々な茶を飲ませてもらいながら過ごす。

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夕方になるとまた張家へ出掛けて行き、ご飯を頂く。この辺には食堂などもあまりなく、有っても塩気が強いようなので、ずうずうしくも張家のご飯に頼ることになった。蒸かした地瓜は甘くてうまかった。Tさんは京都出身だが、蒸かしイモは食べたことがない、という。私の家では普通だったのだが、それでもここの地瓜が美味い。小雨の中、トボトボと宿に戻り、粛々と寝る。

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1010日(月)
今日も雨

翌朝も残念ながら雨だった。これでは洗濯物も乾かない。もう大坪にいても仕方がないので、早く厦門へ戻り、更には広東に転身すべきではないかと思ったが、カメラマンはそうは考えない。じっくり腰を落ち着けている。『こんなことを想定して予備日を設けています』というのだ。昨年から今年の初めに下川さんと行った旅とは大違いだ。彼なら今頃広州で歩き回っているだろう。

 

宿の朝ご飯を断り、張家に粥を食べに行く。この朝粥も楽しみに一つだ。まあ日本でいう芋粥だが、なぜかとても美味しい。甘みがあるからだろうか。だが今朝は白粥だった。そして以前はあった野菜の炒め物などもない。何故無いのかと聞くと『雨だから』と一言。農家では雨の日はおかずはなし、というが普通だというのだ。晴れたら畑で野菜を採って食べる。雨が降ったらある物だけで食べる。それは実に自然な生活だろう。

 

 

何となく街をぶらつくが特に何もない。部屋へ帰ってネットでもやるしか仕方がない。そしてまた昼飯を食いに張家へ。今度は炊き込みご飯と鶏のスープ。寒い時はこれで体を温めるという。本当に天候により、食事が変わる。これは香港で体験したことだったが、昔は中国中どこでもそうだったのだろう。そしてまたお茶を飲む。梅記からもらったお茶も飲んでみる。でもやはり茶農家は自分のお茶しか飲まないものだ。

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雨が小降りになってきた。ついに我慢しきれなくなったTさんは外へ飛び出す。小高い丘の上を目指して歩く。大坪全体を写真に収められる場所を探している。西坪と違い、茶畑が密集している大坪では、その場所は見付かったのだが、光線が足りないといい、もう一日粘ってみるという。ある意味ですごい執念だ。もっと光を、という気持ちが出ている。果たして明日は晴れるのだろうか。

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午後は少し歩きまわって腹が減った。やはり夜も地瓜だった。私はこれがあればもう十分だ。そして体が軽くなっていく感覚は、以前ここに泊まった時と何ら変わらない。この胃腸にやさしい、塩分・脂分も控えめの食べ物のみを食べていれば、病気にはならないように思う。そして夜も早く休み、朝は早く起きる。それだけで十分に健康になれる。

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