茶旅の原点 福建2016(12)観光地のお茶

430日(土)
観光地のお茶

翌日は休養に当てることにした。何しろ疲れがたまってきた。そして私の武夷山滞在はまだ続くのである。なぜ移動しないかというと、福州の魏さんが52日にここに来るので、それまで待っていることになっているからだ。魏さんも私と会った後、香港へ行ったりして忙しい。その中で私をどこかへ連れて行ってくるというので有り難く待つ。ただ流石に1週間は長い。

 

午前中は部屋でPCをいじり、粥を食っただけで過す。昼前にちょっと散歩しようと外へ出て、武夷学院の周辺を歩いて見る。茶畑があるというので、探してみたが、その内雨が降り出し退散した。近所の食堂に飛び込み、また定食を食べる。この定食、味はまあまあだが、何しろ値段が安い。ご飯やスープもお替りできる。観光地の武夷山は料金の高いレストランが並んでいるが、少し外れればこのような庶民の食事の場所があるのは、長逗留には有り難い。

img_1712m

img_1710m 

 

午後李院長から『急な出張が入り、武夷山を離れる』との連絡があった。既に彼は3日も付き合ってくれており、しかも私が行きたい場所は基本的に案内してくれたので、十分だった。有り難い。そして魏さんからも連絡が入る。やはり心配してくれていたのだ。『李院長がいなくなったので、別の店へ行け』と言ってくれた。その場所とは正山堂。紅茶発祥の地、武夷山桐木村で紅茶を作り始めた江さんの会社だった。昨今の紅茶ブームを招来した、金駿眉を開発し、販売した会社でもある。

 

担当者に連絡を入れ、言われた通りにバスに乗って行く。店は完全な観光地街にあった。この付近はさすが武夷山、土産物としてお茶を売る店が多かった。その中に埋もれるように正山堂、と書かれた店があった。だがなんとレイアウトの変更中。51の連休前にきれいにしているのだろうか。それにしても商品もあまりない。聞いてみると私が訪ねる人は隣の店にいるという。だが隣に正山堂はなかった。あったのは、ちょっとおしゃれなお茶屋さん。入っていくと、2階へあがれという。

img_1714m

img_1717m

 

そこは何とも言えないきれいな、そしてモダンな空間。従来の茶芸の場とは完全に一線を画していた。この企画を担当していたのが、実は4年前に福州で会ったことがある女性だった。突然の再会に驚く。私がここに来た理由、それは武夷山の紅茶の歴史を知るためだったが、彼女はまずはビデオを見せてくれた。そこでは正山堂の歴史、すなわち中国の紅茶の歴史が語られていた。更に彼女は武夷山紅茶に関する本も持ってきて見せてくれ、おまけにその本をくれた。何とも助かる。

img_1720m

 

またぜひ尋ねたいことがあった。それは4年前、福州で聞いた『1斤、9800元で飛ぶように売れていた』というあの金駿眉が今、どうなっているのかを。彼女は実に冷静に『ここ2年、販売は極めて安定している』という中国語を使っていた。だが私にはそれは『以前に比べてかなり売れていない』という意味だと解釈した。習近平政権誕生後の腐敗汚職撲滅運動で、一番被害を被ったお茶かもしれない。そして彼女が出してくれたお茶は紅茶ではなく、白茶だった。昨今のブームを背景にしている。

 

2階にある茶芸コーナーについては、従来の形ではなく、若者、特に女性にモダンなお茶を楽しんでもらうべく、工夫して作った空間だという。私にはよく理解できなかったが、その後中国の大学などで見ても、伝統茶芸ではなく、モダン茶芸が若者ウケし始める予感はある。その辺は若い女性ならではの視点で、すでに手を打っている感があった。まずはお茶に親しみ、それからお茶を買い、更には茶器なども買う、という消費循環を促す狙いがあるようだ。もう茶葉を売るだけでは持たない、茶文化を売っていく時代だということだ。

 

実はもう1つ、行こうかと思っていたところがあった。そこは正山堂から近いはずで、聞いてみると、やはりすぐそこだという。連絡すると、来てもよいと言われたので、正山堂を離れて、そちらに向かう。誰家院という名前だが、立派な建物であった。ここは茶荘なのか、それともホテルなのか。聞いてみると、泊まることもできるという。51の連休中は予約でいっぱいらしい。確かにきれいで居心地がよさそうだ。勿論料金はそれなりに高い。

img_1729m

 

実はここのオーナーとは政和で会っていた。もし武夷山に来るなら寄ってと言われたので、寄ってみたのだが、以前は茶関係の雑誌を出していたという彼は、現在はお茶の先生をしている。そして自らも茶産地に行って、自らの好むお茶を作っているらしい。すごくたくさんのお茶が並んでおり、友人たちがあれこれ言いながら、お茶を飲んでいた。武夷山の岩茶が中心だが、種類が多い。特に百瑞香というお茶の濃厚な香りが気に入った。

img_1733m

 

夕飯に行くという彼らに付いていき、レストランが路上に出したテーブルで食事をした。何ともフランクなお茶仲間たちで楽しく過ごす。食事を終えるとまた店に戻り、茶を飲む。こんな生活は理想的だ。泊まり客もどんどん入ってきて一層賑やかになる。私は途中で失礼して、バスに乗り、宿に戻った。今日は休みのはずだったが、やはり武夷山では休むことはできなかった。嬉しい悲鳴!

img_1737m

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です