茶旅の原点 福建2016(10)武夷山を歩く

428日(木)
崇安と武夷山景区

翌朝はゆっくりと起きた。今日は予定が特にない。李院長も流石に毎日付き合ってくれるほど、暇ではない。天気は悪くない。出掛けるべきだろうと判断して、昨日会った鄒さんの事務所へ伺えないか、電話してみた。だが電話が通じない。何度かけても繋がらない。彼の電話が使用停止になっているようだ。料金が未払いなのだろうか、とその時は思ったのだが。

 

仕方がないので、武夷山市内へ行ってみることにした。まずは近所にあったベトナム料理屋でフォーを食べる。福建には美味しい麺が沢山あるのに、それでも学生たちはフォーを食べている。いつも同じ麺では飽きてしまうのだろうか。大学の近くのレストランは基本的に安いのがよい。国が発展したと言ってもまだまだ貧しい学生は沢山いるのだ。それからバスに乗ってみる。

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15分ほどでバスは街中に入る。適当に降りて、古い街並みなどないかと探す。今や中国はどこの街に行っても、作りがほぼ同じ、チェーン店など店もほぼ同じで、面白くない。昨日李院長は『万里茶路の起点は赤石と崇安だ』と言っていた。崇安とは今の武夷山市内、少し歩くと、古そうな狭い道が現れた。南門街と書かれたその道には雰囲気があった。今でも両側に商店などが並び、洗濯物が干され、生活感もある。細い路地に入るとやはり川があった。ここが赤石と繋がっていることが分かる。ただ茶葉に繋がるものを見ることはなかった。

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川を渡って向こう岸へ行くと、そこは実にのどかな田舎の風景。ただそこにはひなびた村、花橋があった。大きな木があり、その歴史が垣間見える。この川には真新しい、大きな橋も架かっていた。歴史的な橋の復活だろうか。元の道に戻ると、城南小学校という立派な外壁が見える。この辺は下梅で見た祠を想起させる。他にも赤石で見たような建物もあり、ここが100年以上前には栄えていただろうと勝手に想像する。

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大きな道に出ると、ちょうどバスが来た。見ると武夷山莊へ行くらしい。何も考えずに乗り込む。これで崇安とはお別れだ。バスは元来た道を戻り、更には武夷山景区に動いていく。何だか懐かしい風景が広がってくる。そして川を渡り、山の中へ。ついにバスは武夷山莊の前で停まった。付近には観光客が歩いている。あれ、こんなところだっけ、と一瞬戸惑う。

 

武夷山莊は200012月、私が泊まった宿だった。当時木はそれほど茂っていなかったように思う。背景に岩山が見えていたと記憶がある。今はいい雰囲気に隠れている。広い敷地、歩いて上っていく。ホテルの建物は恐らくリノベーションされていた。庭も相当にきれいになっている。当時も高級な宿だったと思うが、今や料金も高いだろう。取り敢えず1周してみたが、思い出せるものはなかった。やはり15年の月日は長い。

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山荘を出て隣の敷地へ。武夷宮は改修中で見学できず。その先は観光地化している。この辺はさっさと通り抜ける。九曲渓に出た。如何にも武夷山の風景だ。橋を渡ると、そこからは家もなく、道が続くのみ。そして横道へ入る。そこは茶作りの村だった。道は細い一本道。道なりに行くと、天日で茶葉を干している家がある。茶畑も見えてきた。こんな風景を期待して歩いていたので、喜んだ。

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そこからずっと歩いて見た。天気は良いが、道の両側に木があるので、何となく涼しさも感じられる。横に川が流れているのも大きい。ただ観光バスなどがバンバン走って来るのはちょっと。この道は星村まで続いているはずなのでそこまで歩いて行きたかったが、疲れてきた。その辺はちょうど筏下りの流れがよく見えた。川沿いに行き、それを何となく眺めて過ごす。

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ちょうどバス停があったので、そこからバスに乗ろうとしたが、手を上げても通り過ぎてしまう。どうやらここは特定の観光バスだけが停まると分かり、更に歩く。ついに到着した場所でも、星村行バスは停まらない、と言われ、ショックで疲れが一気に出た。とぼとぼと元来た道を歩いて戻る。来る時は軽やかだった足取りは重い。坂があれば気持ちが萎える。何だか天気も暑くなる。何とか茶畑のある村まで戻り、そこからバスに乗る。

 

宿に戻ればよかったのだが、バスは途中で景区を通った。何となく降りる。15年前、世界遺産になったばかりの武夷山で、大紅袍の原木を見た記憶がある。岩の上に生えていた。折角来たのだから、見ていこうと思い、門のところへ行くと、チケットが必要だという。今や中国でも有数な観光地であるから、当たり前と言えば当たり前なのだが、茶樹を見るためだけに多額の支払いをするのはどうなのだろうと思い、止めた。周囲の広場でも茶葉が広げられ、干されていた。付近は皆茶業者だった。茶作りの最盛期、茶葉が香る。

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宿に戻ってくると李院長からメッセージが入った。『あなたの携帯電話が止められている』と。一体何が起こったのか。よくわからないので、近所の携帯ショップで聞くと、とにかく使用停止になっているので、中国移動の店へ行け、と言われる。その店は武夷学院の中にあったので、何とか探し出して、聞いてみる。すると『実名制ですね』というではないか。私のこのシムカードは数年前、香港にいる時に便利なように深圳で購入したものだ。その時は実名登録など不要だったが、現在は全てのシムカードを実名で登録しなければならない。それをしていなかったので、切ったというのだ。何という突然、昨日まで使えていたものが予告なしに。

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店員に掛け合っても無駄だった。彼も気の毒に思い、色々としてくれたが、最終的に実名登録は購入地区、私の場合は深圳、いや広東省へ行かないと復活は出来ないと分かる。このシムには300元以上お金が入っており、かつ中国の知り合いは全てこの電話番号を知っている。これを変えるのは困ったことになる。何とかならないのだろうか。何とも暗い気持ちで学院内を歩いていると、夕日が妙にきれいだった。そして急に腹が減る。近所の定食屋で思いっ切り食べてみてもどうにもならない。因みにネットで実名登録ができるとの話もあったが、それも外国人は無理だった。

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