茶旅の原点 福建2016(6)政和白茶を勉強する

この建物には事務所やセミナールームもある。もう一つの建物へ行くと、ちょうどお客さんがいて、白茶の分類を説明していた。私がなぜ政和に来たかったかというと、それは香港での体験に基づいていた。ある時、香港の茶問屋さんから何気なくもらった白茶、寿眉。白茶では一番グレードが低いのだが、駄菓子屋の紙袋に入っていたその寿眉、1か月後ににおいを嗅ぐと、すごくいい香りがしたので驚いた。一体どこの白茶かと聞くと『政和』との答え。白茶は政和が最高さ、という言葉が耳から離れなかった。

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白茶と言えば福鼎と言われているが、実は政和の方が歴史もあり、いい物もあるはずだ、ということだった。ついでに白茶のグレードも銀針、白牡丹、寿眉の順番だが、銀針などは立派過ぎて、美味しいと思えない時もあり、白茶は寿眉で十分だ、と思うようになっていた。これはコスパの問題かもしれない。因みに一般の香港人が飲茶の時に飲むお茶も、寿眉が多かった。一番安いお茶だが、これが健康の秘訣かもしれないと思うこともある。

 

この敷地内には崇徳堂という建物もあった。かなり古い建物だったが、中に入るとモダンな茶室が2つもあり、更には相当の書籍も置かれていた。ここはお茶を作るだけではなく、お茶文化を発信することを目的にしている。そして別棟はティショップになっており、観光に来たお客さんはここでお茶を買って帰るらしい。何ともよく作られている。

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夕暮れが迫ると、夕飯の時間になる。食堂へ行くと、地元で採れた野菜、地元の鳥肉などがテーブルに並んでいた。これもまた良い。茶工場で地場の食事をとる。ここでオーナーの楊豊氏が一緒の席に着いた。白茶の伝統製法伝承人、ちょっと気難しい人なのかなと感じた。何かを考えながら、そしてスマホに目を落としながら食事をしている。忙しそうなので、敢えて声はかけなかった。

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だが食後、彼は気を使って私を案内してくれた。場所は茶葉を室内で干している渡り廊下のようなところ。笊に入れられた茶葉がずーと先まで置かれていて、なんとも壮観!ここで彼は一言『白茶作りで一番大事なのは風だ!』と言い、小窓を開けて見せた。政和にしかない風、それがこの白茶を作るというのだ。勿論言葉で説明されただけではわからないことではあるが、実に説得力はあった。

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更には夜、私のために2時間も時間を空けてくれ、質問に答えてくれた。主には政和の茶の歴史についてだが、それ以外にも現状なども詳しく話をしてくれた。政和という地名が茶の世界で忘れ去られることがないよう、勤めているのかもしれない。しかも政和は白茶だけが有名なのではない。昔から政和工夫という紅茶もあり、その製法を用いて作られたのが祈門紅茶である。なぜ今、祈門だけが有名なのかは、とても疑問なのだ。

 

今晩は白茶をたらふく飲んだので、眠れそうにない。でも私を送ってきてくれた林さん、武夷山に行くのは明日にするとのことで、私の横のベッドに転がり込んできて、眠っている。私と同じような人が中国にもいるんだな、と心強くなる。一人でも二人でも料金は一緒であり、かつオーナーの配慮で特別料金になっているので、林さんがいると更にお得感がある。

 

425日(月)
ツアー客がやってきて

翌朝は早めに起きる。外を眺めると曇りだが、眺めはとても良い。農村の朝は早い。朝ご飯の声が掛かり行ってみると、お粥に卵、まんとうなど、健康的な朝が待っていてうれしい。こういう食事をとっていると体が軽くなることを、安渓の張さんの家で何度も経験している。食べ終わるとそのまま散歩に出る。立派な門があり、茶工場の周囲には茶樹が少し植わっていた。

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茶畑はかなり遠くにあるが、工場の裏手の山にも茶畑はあるとのことだったので、スタッフに案内を頼み、坂を上っていく。かなり急な坂であり、かつ最近雨が降った影響で滑りやすくもなっており、意外と危険だったが、何とか登りきる。茶樹がきれいに植わっており、その向こうには小さな政和の街が微かに見える。何ともいい風景だった。

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戻ると林さんがお茶を淹れてくれる。何とも幸せな時間だ。外を見ると団体がやってきた。武夷山からの日帰りツアーだという。リーダー兼ガイドは楊さんの友人のようで、岩茶に詳しいらしい。お茶に詳しい人、全く知らない人が混ざり合ったツアー。製茶の工程などを実際の茶葉を見ながら、進めていく。更には楊さん自ら最上階のセミナールームで講義を行っている。こういうツアーがあったら、参加したい日本人は沢山いるだろう。

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ツアーの人々は思い思いの時間を過ごし、ランチを食べてゆっくりと帰って行った。林さんもそのバスに便乗して武夷山に向かった。お客が帰って暇になるかと思い行きや、ちょうど雑誌が届いた。政和が特集されており、楊さんも取材されていた。なかなか格好良く写っていると思ったが、彼は満足していないようだ。『せっかくあれだけ説明したのに、真の意味を分かってくれない』と嘆く。その日もお茶を飲み、美味しい地場料理を食べて、聞きたいことを聞き、そしてぐっすり寝る。環境がよいと本当にストレスがない。

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