チェンマイ散策2011(2)龍眼(ラムヤイ)の中国輸出

炭焼き

同行しているバーンタオ氏は最近炭焼きビジネスを始めていた。今回も数年ぶりにこの農園を訪れたようだが、前回はロングステイのビジネス、今回は炭焼きビジネスを見に来ている。面白い。

ここランプーンにはタイ語でラムヤイと呼ばれる龍眼の木が物凄い数、生えている。道を行くとラムヤイはそこかしこに見られる。龍眼は中国の果物と思っていただけに意外だった。そして更に意外なのはバーンタオ氏がこのラムヤイの木に目を付け、炭が作れないかと考えていることだった。

Sさんとタイ人の奥さん、そしてSさんの農園で働く地元の女性を一緒にラムヤイの炭焼き現場を訪ねた。ランプーン郊外、河沿いに煙が上がっていた。傍にラムヤイの枝が転がっている。地元の人が自分で使うために焼いているらしい。その横には太いラムヤイの木、更には竹の林が林立する。竹は自分の伸びたいように伸びるもの、日本のように真っ直ぐに伸びるとは限らない。

そしてある家を訪ねるとそこには炭焼きの窯があった。本格的に炭を作っている。ただ中には誰もいない。お昼ご飯を食べているのだろうか。この辺では泥棒が入るということもないのだろう。昔の日本の田舎もそうだったのだが、今や農家も鍵を掛ける日本。タイもその内鍵を掛けるのだろうか。

炭焼きがその辺で普通に行われている光景にバーンタオ氏もご満悦。現時点では地元で消費する程度の炭焼きかもしれないが、この中から商売になるような炭が誕生するかもしれない。バーンタオ氏もなかなか味な商売を始めたものだ。

ラムヤイ(龍眼)

そのラムヤイだが、本当にその辺にいくらでも生えている。ラムヤイの林、など日本では想像できないが、何ともいい雰囲気な木々である。

道沿いに小屋が見えた。外で人が何か作業していた。覗き込むと先方も首を突き出してこちらを見る。更に見るとラムヤイの木の下で数人の男女が作業していた。ラムヤイを取り、仕分けしているのである。

小屋の周辺では更に多くの人が籠を前にして仕分け作業をしていた。近所の若い娘からおばさんまで、何だか楽しそうに見えるが意外と大変な作業のような気もする。ラムヤイの実を大きさや熟度に応じて分けているようだ。

このラムヤイはタイ国内に出荷されるのだろうか。聞いてみて驚いた。ここで仕分けされた後、近所のある中国系工場に運ばれ、そこで乾燥工程に入る。そして乾燥ラムヤイが中国に輸出され、何と中国産龍眼として、日本に漢方薬などとして再輸出されるというのだ。

中国産漢方薬は多いが、残念ながら必ずしも原産国が中国ではないケースが増えているのだろう。そういえば、中国とアセアンのFTAが締結され、農産物も加工品も完全がゼロになっている。今後タイの農業もアジアを、特に中国を向いて作られていくのだろう。

昼飯 日本語姐さん

昼時になる。この辺の名物、カオソイを食べさせるお勧めのレストランを目指したが、何故か休みだった。そこで街道沿いにある麺屋に入る。とてもゆったりした店で、真新しい自宅の横に半外のお店を作ったという感じ。

お昼の柔らかい日差しが少し差し込む。腹は減ったが、眠気にも誘われる、そんな感じのテーブルに着く。豚肉ラーメンが出て来る。これは肉の味がよく沁み、ネギなどの薬味も効いていて、実にウマい。また麺がラーメンというのもいい。ミートボールも付いている。これはもう完璧だった。

そしてどうしても我慢できなくなり、お替りを頼むことになった。オーダーを取りに来たお姐さんは何と日本語を話した。聞けば、2年ほど、日本で生活したことがあるという。しっかりした日本語だった。でも日本より地元の方が良いという。日本ではどんな生活を送っていたのか、知りたくもあったが、敢えて聞かなかった。

   

2杯目は牛肉きしめんに替わった。もやしがちょっと載っているのが良い。こちらはほど良い濃厚な味わいで、グッとくる。本当に何杯でも食べられそうな、いや、止めておこう。日本語を話しお姐さんも他の従業員も既に完全に休息ムード。我々が帰ればお昼寝だ、と顔に書いてあった。

パワナガーデン(http://www.kubox.net/phawana/mein.htm )

我々もお昼寝か、と思ったが、もう1軒行くことに。Sさんはもうすぐ70歳と言っていたが、とても元気に、自らハンドルを握ってくれる。そしてやって来たのは。

どこかの御宅に着いたのかと思うような、木々に囲まれた庭。その奥に建物が見える。ここは日本人久保田さんが開いているプチホテルだ。既に開業から10年近く経つという。正直こんな田舎に日本人が宿を経営しているとは信じられない。

久保田さんは10年前シンガポールに企業の駐在員として滞在していたが、そこを辞して、奥さんの故郷であるランプーンにやってきた。小さいお子さんもいたから相当に決断だったのではないか。

そして土地を確保し、一からゲストハウスを作った。庭の木々も今や大賑わいだが、何もない所に自ら植えた。建物を建てるのも大変だった。全く思うように地元の大工さんは動かない。イチイチ注文を付けてようやく完成させた。

まさにアットホームな宿を目指したが、当初はお客さんがいなかった。ここランプーンには工業団地もあり、日本企業に売り込みにも行ったが、上手くはいかなかった。そんな時に、テレビ番組で取り上げられ、テレビを見た人たちが少しずつ来るようになる。そして一度来ると気に入ってリピーターになる人が多いという。

この宿は朝ごはんが付く。また夕ご飯もリクエストで作ってくれる。地元の野菜などを使った料理が良いらしい。食堂もアットホーム、家でご飯を食べる良な雰囲気だ。裏に回ると自分で作ったというかまどがあり、木の枝が暖かい色を出して燃えていた。『この木の温もりのある火で作った料理は味が違う』という。焼肉なんか最高に美味いらしい。

今度は一度ここに泊まってみたい、と思わせる雰囲気がある。何も考えずに、ボーっとしていることも偶には大切ではないだろうか。

本当の野菜

農園に戻り、ゆっくり休む。夜はラムヤイのチャーハンが出た。これが意外や美味しい。また近所から新鮮なキャベツが届けられたとのことで、シンプルなキャベツ炒めも出たが、これが実に歯ごたえがあり、また柔らかく、美味。

昔は日本の実家にも親戚の農家が、時々採れたての野菜を届けてくれた。決して形は良くないが、大きな野菜。ニンジンやキャベツが袋からはみ出している姿は、如何にも美味しそうだった。あれは本当の野菜だった。今日本で売っている野菜は、ある主婦によれば、『包丁で切ってもにおいがしない。まるで温もりが無い。工業製品と同じではないか』と。

我々は一体どんな食べ物を食べるべきなんだろうか。価格と形にこだわる日本人は、益々自然から遠ざかる。『有機野菜』と言う名のもとに売られる野菜でも、何か本物でない気がする。一度田舎暮らしを体験し、真面目に考える時期かもしれない。シャワーを浴びて、早く寝る。気持ちはよい。

12月26日(月)    ラムヤイの木

翌朝も気持ちよく起きた。広大な農園を散歩する。朝日がまぶしい。Sさんとスタッフが朝から作業している。例のラムヤイの枝を炭焼き用に切っていた。当たり前のことだが、いい感じに切れている。

2泊させてもらった農場を後にする。短い間だったが、とてもいい経験をした。もっと多くの人々が、特に若者がここに来て、見ることを勧めたい。






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