新疆北路を行く2011(9)伊寧 絶品カバブーと羊スープ

4.伊寧
(1) 外国人が泊まれないホテル 

とうとう西の端、伊寧市に到着した。今回の旅は僅か170㎞だったが、時間的には相当に掛かった。道が悪いと言うのは大変なことだ。まだ陽のあるうちに着いたのが救いだった。ホテルには当地の旅行社の人間が来てアレンジをしていたが、我々を見て驚いた顔をした。何故だ。J氏、S氏と旅行社の人間は協議に入った。何か問題が発生したのは確かだ。聞けば、予約したホテルは外国人を泊めることが出来ないと言う。何と時代錯誤な、20年前の中国がそこにあった。

勿論日本人だけではなく、外国人は指定されたホテルに泊まらなければならないらしい。この制度は今年始まったのではなく、3年前からあるそうだ。こちらが予約した際、人数しか言わず、外国人がいることが分からなかったのが原因らしい。それにしても、夏のベストシーズンに、少なくとも我々日本人4人分の部屋がこの時間に確保できるのか、ちょっと心配になる。

30分ぐらい待っていると、J氏が済まなそうにやって来て、「4つ星ホテルの部屋は全て満員で、三ツ星になりました」と言う。こちらは泊まれるかどうかの問題であり、部屋があればそれでよかった。しかしこの辺境の地、それほどに漢民族は少数民族を恐れ、外国勢力との結びつきを恐れているのだろうか。花城賓館という実に昔懐かしい中国のホテルにチェックインした。

特に期待はしていなかったが、残念ながらネットは繋がらなかった。それは設備がなかったからではなく、普通なら線を繋ぐだけで良い所を、複雑な番号を入力しないと繋がらない仕組みになっていたからだ。中国でもこんな番号は見たことが無い。係員を呼んだが、私のPCを見て、日本語は読めないからお手上げ、と言って帰ってしまった。この暗号は何を意味するのか。確か他の国でも情報統制がある場合はこのシステムだったような。そして現在のWindows7というソフトには以前のようにこの暗号を入れる仕組みが見出せない。どうなっているのか??

(2) 気持ちの良い夕食と屋台(子供働く)

ここでもS氏の友人のウイグル人が登場し、我々をレストランに案内してくれた。流石に中国の西の端、まだまだ空は明るい。ラマダン中でもあり、どうかと思ったが、外国人と言うことで、店の外の木の下にある気持ちの良い桟敷に落ち着くことが出来た。但し喫煙は厳しく制限された。外を歩くウイグル人への配慮であろう。

店の外にはカバブーを焼くブースや茶を入れる薬缶が並べられた場所がある。まだ稼働はしていなかったが。我々の目の前には早々にリンゴとプラムが運ばれてくる。これまでのスイカとハミウリの組み合わせから変わった。飲み物はヨーグルト。嬉しい美味しさである。

気持ち良い夕暮れの風が吹く中、外で食べる食事は実に美味しい。カバブーも殊の外柔らかく美味しく感じる。店内でトイレを借りると、この店がとても立派な店であることが分かる。ちょうど日が落ち、沢山のウイグル人が食事を始めたが、食の豊かさが見えていた。

レストランを出てイリ川の橋を渡る。この大河は濁流のように勢いがあると聞いていたが、真っ暗で何も見えない。ただ川の音がするのみ。橋の袂には検問があり、バスはそれを避けて、遠くに駐車する。ここは市内に入る要所であろう。若干緊張感がある。

ホテルに戻り、コーラでも買おうと外へ出るとN先生やJ氏がちょうど、ホテル前の屋台に繰り出すところに出くわし、付き合う。夕方は何もなかった道端に多くの店が出て、いすやテーブルが出され、大勢の人がビールを飲み、カバブーを咥え、夏の夜を謳歌している。

よく見ると店では子供たちが良く働いている。中学生ぐらいのおにいちゃんは既に一人前にカバブーを焼き、小学生ぐらいの女の子は注文を取る。もっと小さい子は片づけをし、皿を洗う。おじいさんの白い帽子は回教徒か。貧しい暮らしなのかもしれないが、それが何故かとても羨ましく見えてしまうのは私だけなのだろうか。

8月19日(金)
(3) ウイグル系市場の豪快な朝食

翌朝、ホテルの朝ごはんも味気ないというN先生の主張が通り、S氏友人の案内で、ウイグル系市場へ向かう。途中歩いた道が北京の胡同のような雰囲気で、何となく好感が持てる。四合院と同じような作りで、中に何家族か暮らしているらしい。やはり古い街なのであろう。

市場の店先には羊が沢山吊るされていたが、人影はまばらでひっそりとしていた。既にひと仕事終わったのだろうか。我々は一軒の店に案内される。店の入り口では大きなドラム缶鍋?に羊の肉と骨がぶち込まれ、豪快に料理されていた。湯がいた骨付き肉は端に出され、そこにナンが並べられる。このエキスをナンに吸わせるのだろう。

そして我々がありついたのが、その骨付き肉。ニンジンなどの野菜も一緒に煮込まれており、大盛りで登場した。この肉は柔らかい。そして臭みなどは全くなく、むしろ甘い。また羊でだしを取ったスープも一口飲んで幸せが感じられる絶品。コクがあるがあっさりしている。これは朝からトンデモナイ物に出会った。

ミルクティーも丼で出て来た。煮出した茶にミルクパウダーを入れ、塩を混ぜる。これは豪快な作り方だ。ヤギの乳があればそれを入れるらしい。味は少ししょっぱいが、味わいがある。

爽やかな朝に爽やかない朝食、これぞウイグル、と言える料理ではなかろうか。肉汁の沁み込んだナンを食べながら、幸せを噛み締めた。




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