中国最北端を行く(9)撫遠 寂しい街の豪華なホテル

夕陽が傾く中、列車は動き出し、N教授は買い込んだビールを飲み始める。ハルピン郊外を列車はゆっくり走る。雪の残った田畑、工場などが次々と見えてくる。飛行機にはこのような景色がない。やはり列車の旅は良い。

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その内夕陽が急激に沈み始め、あっという間に闇になった。軟臥は他の車両と隔離されており、向こうから入ってこないように連結部分のドアには鍵をかけていた。車掌に頼んで鍵を開けて貰い食堂車を偵察したが、乗客は満員で廊下にも溢れており、勿論食堂車も満席だった。

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缶ビールを飲んでいたN教授が突然『コップがない』と言い出す。車内販売も来るので問題ないと思っていたが、何と紙コップすら積んでいない。ウオッカを飲むのにビンから直接飲むのは大変だ、と思っていると、器用なN教授はビールの空き缶を自分のナイフで切り、即席のコップを作った。これは凄い能力だ。

 

宋さんはもう一人の乗客と仲良くなり、乾き物を貰っていた。宋さんは人と仲良くなる、人に警戒心を与えない独特の能力がある。これも中国ではすごい才能であり、後にも様々な場面で何度も役立つのである。私は段々眠くなる。N教授はまだ飲んでいる。宋さんもそろそろ寝るというので、消灯。

 

2月21日(金)

翌朝は早く目が覚めた。というより、さすがに良くは眠れない。この列車の到着時刻は午前9時頃だからまだだいぶ時間はある。外は明るくなり、朝日が上がる。もう一人の同行者は夜中に下車したらしく、既に姿がない。朝ごはん用に買ったパンを食べるが、今一つ。

 

宋さんが周囲の乗客と話を始めた。さすがにみんな乗っていることに飽きてきて廊下に出ていた。中にハルピンで商売をしている女性がおり、撫遠まで買い出しに行くという。革製品を扱っているようだが、17時間もかけて買い出しに行くのだから余程儲かるのだろう。帰りも今日の午後の同じ列車で戻るらしい。それは疲れるわ。

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終点、撫遠が近づく。宋さんが地元の人に聞いてきたところ、駅前にはタクシーはいないので、ついでに乗せて行ってやる、という人が出てきた。駅に着くと本当にタクシーはなく、バスが一台待っているだけ。庶民はそのバスに殺到していく。我々が乗った面包車もかなりの年代物。一部の偉い人はいい車が迎えに来ていたが、この辺の経済状況が何となく分かる。

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5.撫遠

豪華な国境ホテル

車で20分ぐらい田舎道を走ると、急にきれいな大通りが見える。大きな河も見える。と、車は立派な建物の前に吸い込まれていく。ここがホテルだった。ロビーも広くて豪華。ところが料金を聞くと僅か200元ちょっと。あり得ない。全くのオフシーズンということなのだろうか。バスで来たMさんもすでに到着しており、合流。

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さて、部屋で少し眠ろうかと思ったが、急に1件面談が入る。このホテルに会いに来るという。彼は宋さんの伝手で会うことが出来たのだが、『自分と会ったことは伏せて欲しい』ということで、ここでは内容は書かない。ただこの国境の街、漠河とは異なり、ちょっと緊張感がある。何故だろうか。

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