『街道をゆく』を行く2005 本所深川

【本所・深川】2005年11月3日

文化の日の朝、両国駅を降りる。爽やかな11月の日差しがある。

1.本所②
(1)北斎通り

駅の北側、江戸東京博物館の東側に『北斎通り』という通りがある。江戸時代の浮世絵画家葛飾北斎生誕の地であり、その後生涯に93回の引越しを行ったと言われる住居の多くはこの辺りにあったようである。両国クワハウス『江戸遊』の前を通る。ヒノキ湯、エステ、サウナなどを備えたスーパー銭湯。少し歩くと緑町公園がある。公衆トイレが洒落ている。北斎の絵がトイレの壁に書かれている。北斎は富嶽三十六景などで有名であるが、生涯現役であった。

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この付近には幕末のジョン万次郎、江川太郎左衛門などの屋敷もあったようだが、今はその場所も良く分からなかった。

野見宿禰神社がある。相撲の神様野見宿禰を祭っている。境内はなかなか風情があり、歴代横綱の石碑などがある。流石国技館に近い場所にある。地元の人しか訪れないのであろうか、派手さはないが苔むす様子が渋い。

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この北斎通りは南割下水と呼ばれた。落語の初代三遊亭円朝が本所南二葉町に引っ越してきたのは1877年である。(P62)屋敷は広く割下水と連なる池もあったという。人情話で有名な円朝は1873年頃までは怪談など鳴り物を使った芝居物が中心であったが、その後は素話に変更する。1878年には山岡鉄舟を知り、更に禅宗にものめりこむ。落語家と禅宗との取り合わせは意外である。1888年頃円朝は本所を離れる。その理由が不肖の長男朝太郎と妻お幸との不仲であり、遺産争いを避けるために家を売り多くを寄付してしまったという。

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因みに幕末明治初期の歌舞伎脚本家、河竹黙阿弥終焉の地も直ぐ近くにある。黙阿弥の存在感は圧倒的であったようで、その後彼に次ぐ作家は出ていないといわれている。72歳で浅草馬道の家を弟子に与えて本所に越して来た。その家は敷地を広く、家屋を小さくした。これも遺産相続の便宜のためであったという。(P77-79)割下水から水を引き、汐入の池という池を作ったことは円朝と同じであった。

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(2)菊川

鬼平犯科帳の長谷川平蔵と桜吹雪の遠山金四郎が同じ場所に住んでいた、というのは面白い取り合わせだと思う。都営新宿線菊川駅を出て直ぐの所にその屋敷跡がある。現在は歯医者さんとなっており、建物の前にきれいな記念碑が建っている。

鬼平については、松平定信の側近水野為長の日記を基に書かれた『鬼平の江戸』が詳しい。出世の為に上司にゴマを擂ったり、付け届けをしたり、ライバルと争ったり、生の平蔵は違った意味でなかなか面白い。火付け盗賊改めとなってからは、捕り物の名人と呼ばれ、一方裁きは迅速で温情が厚い。江戸になだれ込む無宿人に対応するため、私財をも投じて人足寄場を作るなど企画行動力も有る。

遠山金四郎は水野忠邦、鳥居要蔵などと敵対しながらも南町北町の両町奉行となった珍しい人物。芝居小屋を廃止しようとした勢力に反対し、存続させたことから芝居ではいい人間として描かれているのでは??

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屋敷は平蔵が19歳の時に引っ越してきた。南本所三つ目橋通り。広さは1280坪もあり、大部分を人に貸しており、若き日の平蔵はその家賃収入で道楽三昧であったという。その後役付きとなってから一切道楽を止めたというが。金四郎も放蕩三昧だったというから世情を知る名裁きはこういうところから生まれるものであろう。

(3)五間堀と六間堀

菊川から森下に向かい歩く。静かな住宅街が続く。やがて五間堀公園に着く。五間堀とは江戸初期に掘られた水路で幅が5間(約9m)であったことから名付けたれた。元は小名木川と竪川を結ぶ六間堀から分かれた入り堀。

明暦の大火の頃に開削された堀で、その後明治になり尾張徳川家により小名木川まで繋げられたが、昭和30年までに全て埋め立てられた。この公園は堀の記念である。近くには稲荷神社があったり、針供養の弥勒寺があったりする。

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清澄通りを越えると要津寺がある。雪中庵、芭蕉三哲の一人、服部嵐雪の号である。雪中庵を継いだ弟子の大島寥太はこの寺に芭蕉庵を再興。天明年間には俳諧の拠点となった場所である。境内にはいくつかの句碑がある。また関宿城主牧野家の墓もある。

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要津寺から少し行くと初音森神社がある。ここはかなり古そうである。安政年間の町名表示石『馬喰町』『三丁目』が入口に無造作に置かれている。こじんまりしており、人気も無いが由緒正しい神社に違いない。

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 六間堀は現在どこにあるのか分かりにくい。探してようやく、ここではないかという場所をつかむ。そこは埋め立てられて家が連なって建っている。細い中道があり、堀のイメージが分かる。この細い道を歩いていると何故だか懐かしい。

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