お父さんに教えてもらったバスに乗り、九龍城から九龍塘へ出る。バスは頻繁に出ており、乗り切れない人は次を待つ。夕方、学生や勤め帰りの女性が多い。九龍塘からまたMRT東線で落馬洲へ戻り、福田から宿へ帰った。香港日帰りはあっという間だったが、宿代を考えると合理的選択かもしれない。
夜はまた裏通り、香港で食べればよかったのだが、気分的に深圳になってしまった。今晩は、12元で腹一杯食える食堂へ。食べているのは男ばかり。何となく侘しい出稼ぎ者に交じっていると、気持ちが落ち込んでくる。この人たち、かなり苦労しているんだろうな、と感じられる。
11月10日(木)
4. 深圳2
フラフラと地下街
翌朝はゆっくり起きて、かなり遅い朝食をチェーン店で食べる。腸粉と粥で23元。まあ仕方がないか。香港ならこの値段で粥しか食えない。店はきれいでよいが、片づけはできていない。店員は若い子ばかりで、まるで気は利かない。10数年前の深圳はサービスがよかったな、と思い出す。労働力の質低下か。
向かいに福田の茶葉市場があったので覗いてみたが、ちょうど雨が降ってきたせいか、お客はほぼいなかった。がらんとした建物の中、閉まっている店も多い。どう見ても流行っている感じはない。入ってみたくなる店もなく、客に声を掛けるでもなく、余りに寒々としていて、何となく外へ出てしまった。
散歩しようとしたが、雨が本格的に降り出してきた。今日は夜便で台湾に戻るので、まだ時間はたっぷりある。宿はチェックアウトしてあるので時間を潰さなければならないが、どうしたものだろうか。仕方なく地下鉄の駅に潜ってみた。そして驚いた。すごく長い地下街がそこに出現したからだ。
連城新天地という名前の地下街。どうやら次の地下鉄駅まで続いているらしいと知り、好奇心で歩いて見た。ものすごい数の飲食店がずらりと並んでいる。中国で名の知れたチェーン店は全て収容されているのではないかと思うほど。日本のラーメン屋もあり、吉野家もココイチも皆ある。大きな和食屋は怪しげだが、客は入っている。台湾系、香港系、シンガポール系のファーストフード、パン屋、カフェ。何より平日の午後でもそれなりに人通りがある所はさすがだ。
ゆっくり歩いて20分ぐらいで次の駅まで来たが、何と更に続いている。こうなれば暇に任せて歩いて見る。飲食ばかりでなくアパレルなどの店も沢山あり、驚くばかりだ。そして次の駅までそれは続いていた。最後の駅から少し離れたところには高速鉄道の駅さえあるようだった。こんな地下街、日本にあるのだろうか。札幌の地下街はかなり長いとは思うが、どうだろうか。
折り返して歩くと腹が減ったので、吉野家に入ってみる。その接客がかなりしっかりしており感心する。客がいない時間なので、掃除の仕方を先輩が教えていた。そこに面接の女子がやってくると、まずは掃除だよ、衛生だよ、と言いながら、面接が始まった。ところでここの牛丼、単品18元、何だかとてもうまく感じたのはなぜだろうか。ついでの隣の台湾系でアンパンを買って頬張った。
因みにこの長い道を歩いている中で、店のメニューと同じくらい求人広告が貼りだされていた。それほどスタッフ、働き手が足りないのだろうか。いや、景気減速の煽りで、コストを押さえないとやっていけない店側と、高い給料を求める出稼ぎの若者のギャップが埋まらないような気がしている。
ちょっと早いが、宿で荷物を取り、また地下鉄の駅へ降りていく。来た時に乗った、空港行地下鉄を利用する。来た時は全く気が付かなかったのだが、何とこの列車、最後尾にビジネスクラスが付いていた。聞いてみると通常7元のところを3倍の21元出せば乗れるらしい。深圳の住民は地下鉄カードでタッチして乗っているが、私は上に戻り、切符を買わなければいけないと言われて、乗車を断念した。
一般車両はかなり混んでおり、やはりビジネスクラスに乗ればよかったと後悔したが後の祭り。よく見るとこの列車は最近開通しており、時速も120㎞まで出せるとなっている。ただの地下鉄ではなく、いわゆる空港シャトル線であった。道理で速い訳だ。空港に近づくと、海岸線が見える等、景観もあり、楽しめる。
ただやはり空港には早く着きすぎて、チェックインできなかった。何とか座る所を見つけてPCをいじっていると、いつの間にかチェックインが始まっており、出遅れてしまう。行きでトラブルがあったので、帰りはもう何も言うまいと思っていたら、何だかプレミアムエコノミーにしてくれていた。これが桃園空港で文句を言ったせいなのかどうかは分からないが、搭乗の順番が早くなっていた。
帰りも又エバ空港の機体である。ほぼ満席で驚く。フライトは順調で、ほぼ定刻に桃園空港に着陸した。今回の旅、一体何だったのだろうか。たまにはこういうのも悪くはない。