埔里から茶旅する2016(14)月見ル君想フ

 そのまま天津街へ行き、フロントで両替したお金を支払い、手続き完了だ。部屋は狭いが機能的で、有り難い。何をするでもなく、またテレビを点けて、日本ハムの試合を見ていた。何の予定もない一日は、旅行者にとっては退屈かもしれないが、私にとっては貴重な、休息の時間だった。今日は何を食べようかな、などとフラフラ考えていると、あたりが暗くなっていく。そこへYさんからメッセージが来た。『今晩、カレー食べますか?場所は、月見ル君想フ』と書かれていたが、何のことやら、皆目見当がつかない。だがこの頃にはYさんの唐突な連絡にはだいぶん慣れており、むしろそれを面白く思えるようになっていた。

 

連絡が来たので急いで指定された場所を探す。地下鉄古亭から歩いていくらしい。7時に間に合うかどうか不安だったが、急なことだし、遅れても仕方がないと出発。前回はYさんがバイトしていた、小曼と言う茶荘にいったが、今回の場所はそこからほど近いため、土地勘はあった。店に到着するとほぼ7時、だが満員の店内にYさんの姿は見当たらない。スタッフに日本人がいたので『Yさんという人が7時に来ているはずですが』と言ってみるも、予約はない、と言われてしまう。

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携帯に電話を掛けてみたが、相変わらず出ない、まだマナーモードのままなのだろうか。FBでメッセージを打っても返事はない。どうなっているんだ、人を呼んでおいて。ふと見ると地下に繋がる階段が見えたので、そちらを降りようとすると、『地下はライブハウスで今、コンサート中です』と言われたが、構わず降りていくと、そこにようやくYさんの姿を発見した。満席だったので、下でライブでも見ていて、ということだったらしい。

 

私も中に引き込まれる。こじんまりしたスタジオでは女子2人組がしっとりとした曲を歌っていた。自己紹介を聞くと日本語では『大根脚ガールズ』と言うユニット名だ。その朴訥としたトークが静かな笑いを誘う。ここの日本人オーナーと話すと『青山で同名のライブハウスをやっているが、台北の方が面白いと思って、こちらに拠点を移してきた』という。そうだよな、東京より台北の方が面白い、または将来面白うそうだ、と言うのには、どのような政治状況であれ、同意せざるを得ない。

 

席が空いたというので、上の階に戻り、食事に入る。Yさん、Iさんの常連と、小曼の台湾人スタッフが同席した。ここの料理は、和風かな。いや、お勧めは南インド風カレーだと言われ、驚く。台北の日本人経営の店が南インド風か、注文してみるとマイルドなカレーが出てきた。インドで何度もカレーを食べたが、確かにコーチンあたりで食べたものに似ていた。そこに台北在住のYさんのお知り合い、Hさんがやってきた。Hさんは台湾人と結婚しているが、Yさんとの出会いは15年以上前だそうで、しかもライブハウスとか。ご縁と言うのは計り知れない。

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それから楽しくお話し、デザートなども食べて、日本の紅茶などを飲む。台北と言うところは、ある意味で何でもあるが、日本のものが何でもある場所だ、と言えなくもない。10時を回り、台湾人とIさんが帰っていくと、代わりに料理人Sさんがやってきた。ここのシェフとは知り合いのようで、色々と情報交換をしている。私はライターでもあるHさんと情報交換。オーナーとも日台について話す。その間にも様々な人が出入りしており、台湾人客も沢山いるのだが、日本人のたまり場的なところになっていることも分る。

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5月23日(月)
桃園へ

前日FBを何となく眺めていると、前回訪れた桃園の茶農家、林さんが『今日は製茶しているよ』と載せていたので、何となく行ってみたくなる。メッセージを送ると、明日来てもよい、という返事をもらったので急きょ行くことにした。前回は知り合いの女性、Iさんに車を運転してもらって訪ねたが、そのIさんもその後出産、子育てに忙しい。今回は自力で行ってみることにした。確かバスで行けるはずだ。

 

林さんの指示により、松山空港前まで地下鉄で行き、そこからバスに乗る。松山空港には何度も来ているが、ここからバスに乗るのは初めてで、ちょっと緊張。バスは30-40分に一本程度しかないので、乗り間違えは許されない。乗客はほとんどおらず、不安が過る。このバスは林口経由桃園空港行らしい。と言うことは、次回は桃園空港から直接、林さんのところへ行くことも可能だということだ。さすがに空港のバスターミナル、様々な行先のバスが行き交っているが、お目当てのバスはなかなか来なかった。

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それから1時間、バスに揺られていた。乗客はまばら。高速道路から林口の病院の広い道路を通り、また小さな街の小さな家を抜けていく。一体いつになったら着くのだろうか、桃園と言っても広いのだな、と実感する。ついに目印のコンビニが見えたので下車した。このコンビニだけが前回の記憶だった。そこから山道を登る。車で来た時は近く感じられたが、なだらかとはいえ、坂道を上がるのは意外と大変だった。途中は工業団地の倉庫がいくつかあり、そして小さな茶畑を横目に見ると、いよいよ目指す林さんの茶工場が見えてくる。

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