京都茶旅2015(7) 茶の歴史を考える

駅のにしんそば

妙心寺の近くにJRの花園駅があった。実はこれから京都駅へ向かう。バスで行こうと考えていたが、どうみてもJRが速くて確実だと思われる。ただ山陰本線の各停は1時間に何本あるのか、それだけが心配だったが、20分に一本もあり、安心した。乗車すると僅か10分もかからずに京都駅に到着してしまった。意外と混んでいたのは、やはり都会だからだろうか。

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山陰線の京都駅ホームは、駅の端の方にあった。思わず山陰というイメージがチラついてしまう。ちょっと暗いそのホームを出ると、駅そばがあった。ちょうど昼時。ここで食事をすることにした。昨日Iさんに京都のB級グルメは何だろうと、と聞くと、強いて言えば『にしんそば』かな、と言う。にしんそばは京都の蕎麦屋ならどこにでもあるから、ということだったが、私は今まで気が付いたことは一度もない。いや京都で蕎麦屋に入ったことがなかった。

 

駅そばでメニューを見てみると、やはりあった。注文するとアツアツの蕎麦の上に大きなにしんが載っていた。そして九条ネギの香りが何とも言えない。九条ネギは本当にウマイ。しかしなぜ京都でにしんなのだろうか。勿論京都市内には海がないため、日本海側からにしんが運ばれてきた、ということだろうが、そんなににしんが好きなのか。きっと歴史がある。

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宇治へ

そばを食べ終わると、JR構内を宇治行きのホームへ移動する。一昨日と全く同じ時間の電車に乗り、宇治に行くのである。元々は茶の歴史を研究しているHさんとランチする予定であったが、宇治で行きたいところがある、というので、急きょ予定を変更したという訳だ。

 

少し早くホームへ行くと、以前にも増して外国人が多い。欧米人もいるが中国人、台湾人が目立つ。この線で奈良まで行くようだ。団体で爆買いしに来る中国人とは明らかに違う個人客だ。英語を話し、静かに行動している。だが、表示が分かり難いのか、殆どの外国人が立ち止まって、行き先を確認して、電車に乗り込んでいく。駅員も対応しているが、英語には対応できても中国語には対応できないようだ。このような個人客にいい印象を持ってもらうことが、これからの日本の観光業にとって、とても重要なことだと思うのだが、どうだろう。

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Hさんと無事に落ち合い、宇治へ向かう。車内で、もし日本の茶の歴史を真剣に勉強するとしたら、どうすればよいかを聞く。基礎として『古文書を読めるようにすること』『研究としての歴史の調査手法を身に着けること』、その上で、大学院に入り、指導教官を見つけて、研究すること、という説明を受ける。正直日本茶の歴史は茶道中心で物足りない気がしている。もしこの分野の研究が非常に少ないのであれば、自分でやるしかない、ということだろう。実際にHさんはそうしている。

 

3.宇治2

歴史資料博物館

一昨日と全く同じバスに乗る。そしてルートの途中にあった歴史資料博物館で下車した。ここはHさんが時々仕事に来ている場所だそうで、今日は『宇治茶』の特別展が開かれており、それを見に行くことにしたのだ。展示には明治期の茶作りの様子が再現されており、宇治茶の歴史についても詳しく解説されていた。しかもHさんの関係で、学芸員の方がわざわざ説明についてくれた。Hさんにとってここは仕事場。そこへ行くと、オフィスの人と仕事の話となってしまい、ゆっくり見学する余裕はなかったようだ。私だけ得した気分になる。

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『宇治茶は常に非日常茶』という表記が気にかかる。宇治は碾茶に始まり、青製が起こり、そして玉露へ。常にトップブランドを生み出してきた日本の茶の中心地、という自負が強く感じられる。製茶の様子も非常に詳しく展示されており、この展示の為に、相当に苦労して資料を集め、話を聞いてきた、ということがよく分かる。

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学芸員によれば、用語が残っていても、それがいったいどのような作業だったのか、それは想像することも難しく、また想像と違っていることも多いという。歴史を研究するというのは考える以上に困難なことで、まただからこそ必要なことに感じられる。このような展示がもっと多く行われ、もっと多くの人の目に留まることを望む。

 

私は最近ちょっと関心のある『江戸時代の庶民の飲んでいたお茶』について、質問してみたが、明確な答えを見出すことは出来なかった。歴史というのは、非日常的なことが記録され、伝えられていくのであり、ごく日常的な生活は、記録されることも少なく、語られることもないのだろう。

 

1時間半ほど見学し、話を聞いて博物館を後にする。またバスに乗り、宇治駅へ。そして元来た道を京都駅へ取って返す。京都駅から地下鉄に乗り、四条烏丸で下車。5月も訪れた福寿園を再訪するためであった。

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