ミャンマー紀行2004(5)田舎の生活から学ぶ

車に乗っているとTTMが思い出したように『この近くに占いで有名な女性がいます』という。名前はティタ。国外にも出掛ける売れっ子だとか。ミャンマー人は1回5,000k、外国人はUS$50で占ってもらえるそうだ。未来が見えるとのことでTTMの娘ピョピョ(以降PP)の結婚相手の名前を当てたとか。彼女はかなり体が小さく、言葉も聞き取れないが親族が通訳するか、紙に書くのだという。

 

未来の結婚相手が分かるというのは、俄かには信じがたいがこの国では『未来が見えます』と言われれば、そうかなと思ってしまうから不思議である。でも自分の未来が見えてしまうのは面白くないもの。ミャンマー人は来世信仰であるから現世の未来が分かってしまっても怖くはないのだろう。

 

ミャンマー人の精神の安定はこの来世信仰にあると思う。たとえ貧しくとも、今が不幸せでも、未来を信じて生きて行く、これは極めて大事なことだ。人間の最大の敵は『不安』である。最大の不安は『死』である。この不安を完全になくすことは出来ないが、和らげることは出来る。ミャンマーにはその和らげる効果がある。それは信仰であり、死を恐れない心持である。

 

日本には今不安が蔓延している。養老孟司先生の『バカの壁』『死の壁』というベストセラーがある。何故ベストセラーになるか?それは日本人が忘れてしまったことをズバリと言ってのけたからだ。至極当たり前のことを。『人間は必ず死ぬのである。死を前提に生きなければならない』

 

  1. TTM実家訪問

そしてヤンゴンへの帰り道。TTMの実家を訪問した。昨年近くを通った時は『仕事中です』と言って、寄らなかったTTM。私の距離が相当に縮まったことを感じさせて、嬉しい。彼女の実家はヤンゴン郊外の村にあった。周りは近郊作物の野菜、果物などを栽培している。結構大きな村の道の真ん中辺りに家はあった。

 

TTMの両親が待っていてくれ、中に入れと促す。家はかなり大きくて、皆が座る長椅子、ベッド、テレビなどが見える。直ぐにお茶とラペトゥ(食べるお茶)が振舞われる。両親に加え、父親のおにいさん夫婦が別の村から遊びに来ていた。米を作っており、丁度刈入れを終わり、農閑期で久しぶりに来たという。裏に住むTTMの妹夫婦も来る。賑やかになる。庭も広く、井戸あり、ザボンのような果物の樹木も豊富でキュウリなどの野菜もそこここになっている。おかあさんがなっているキュウリや果物を取って持って行くようにTTMに渡している。この家は農家ではないが、田舎生活とはこのようなものであろう。自給できるものは自給である。

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そういえば家の門の所に椅子の上にお盆が置かれており、中に果物が入っていた。てっきり宗教的なものと思っていたが、何とそれはおかあさんの『お店』だったのだ。朝採った物で自分が食べない物を置いておく。買いたい人は声を掛けて買う。これで売れるのかと余計な心配をしていたが、我々の滞在中にも買いに来た人が居た。何だかほのぼのとした感じがよい。

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この辺りは電気が2日に一度しか来ないという。ということはある日の午後2時から翌日の午後2時まで電気があれば、次の24時間は無いのである。行ったときは丁度電気が来ており、他の家ではテレビを見ていたが、明日は見られないのである。電気がなければ、確かに不便ではあるが、電気が無いなりの生活をすれば良い、それだけだと。考えさせられる。

 

昼は良いが夜はどうするのかと聞くと、事も無げに『寝る』との答え。そう、当たり前である。日の出とともに起き、日の入りとともに寝る、それが自然の生活である。原油価格高騰により今後更に停電が多くなるかもしれない。しかしそれは自然への回帰になるのでは??TTMは言う。『私が学生の頃は蝋燭の明かりで勉強しました。やはり電気は必要です』

TTMのおとうさんは軍人であった。42年間務めた。勲章を見せてもらった。多くの勲章を大事に保管している。キチンと勤め上げた人だけが貰える勲章を誇りにしており、その真面目さが伺える。

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勲章を見せてもらったのは家の2階。ここは内側から斜めに隙間が空いており涼しい。雨でも斜めに屋根を配して吹き込まないようになっており明るい。これも生活の知恵である。家は以前空港の近くにあったが、空港建設で立ち退き。その際に家屋をここに移築したのだとか。有無を言わせない政府の対応は中国と同じ。両親の年金も雀の涙という。物価が上がっても支給額は昔決められた通り。どこかの国のように約束した金額が払えないよりはよいのかもしれないが、老人の生活は家族が支えている。ミャンマーの厳しさを垣間見る。

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家族が支えられない、または支えてくれる家族がいない老人はお寺に行くそうだ。お寺では最低限の食事、寝床の面倒は見てくれる。セーフティネットはお寺なのである。ミャンマーは決して豊かではないが、老人の孤独死、老夫婦2人の餓死等はあまり無いのではないだろうか?家の居間の壁にはPPとSSの写真が貼られている。周りはアイドル歌手、女優のカレンダーばかり。この家ではPPとSSがアイドルなのが感じられる。

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