ミャンマー紀行2003(11)パガン 子供たちに思う

(5)夕日を見る

パガンの夕日は非常に有名である。雨季の現在でも雨が少ないパガンでは、多くの夕暮れ時に夕日が見られるようだ。『何処から夕日を見たいか?パゴダの上?河の船の上?河辺?それとも』TTが聞いてくる。午前中パゴダに登った経験からすると、高所恐怖症の私は、必然的に河辺を選択する。

 

オールドパガンにあるエーヤワディー川の河畔、ブーパヤーパゴダの横に座る。川風が実に気持ちよい。地元の人も夕涼みがてら、大勢出て来ている。下には船着場があり、そこから船に乗れるという。FEC5。しかしここに座ってしまえば、もう動く気にはなれない。下は川が良く見え、前はきれいに山並みが見える。十分だ。そしてひたすら長閑。もうせこせこする気にはなれない。そのまま40分ほどの間、じわじわと夕日が沈むのを無言で眺める。

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この時の気持ちを表現することはとても難しい。全てが止まっていた、いや、全てが極めてゆっくり流れ、体がじわっと熱くなる。太陽が大きいとか、真っ赤とか言う感想は無い。ただ静かに、ゆっくりと落ちて行くのみ。対岸でするすると煙がたなびく。焼畑を行っているのか?

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夕日が沈み切ると無言でホテルに帰った。夕日の余韻がかなり体に残っていた。ガイドのTTも帰っていった。その夜、夕飯を食べる気にもなれず、今朝の早起きの影響、そしてパゴダでの出来事が頭を巡る中、8時には寝てしまった。幸せとはこんな状態のことかなと思った。

 

(6)朝のパゴダ

翌朝は6時前に目が覚めた。外に出てみたが、本日は曇りのようで朝日は見えない。全室バンガロータイプのこのホテルは非常にゆったりとした作りとなっており、庭も広い。散歩したいという気分が出る。S氏がこのホテルをわざわざ勧めて予約してくれた理由が分かる。

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夕飯を食べていなかったので、腹が減っていた。朝ごはんはパンとコーヒーといった洋食。隣の台湾人団体には当然のようにお粥などが出されている。私は粥も食べたかったな。久しぶりに台湾語を聞く。ガイドのミャンマー人男性は中国系。台湾語、北京語などが出来る。

 

椰子の木の間から子供が数人見え隠れしている。団体のホテル出発時間は朝7時前ということを知っていて、土産物を売りに来ている。朝早くからの働き者、というイメージではなく、遊びに来たついでに、もし物が売れたら嬉しいな、という雰囲気が和ませてくれる。皆でじゃれながら遊んでいる。

 

食後散歩を続ける。子供が入り口の外から手招きする。皆シャンバックを肩から掛けて、ロンジーではなく、普通のズボンを履いている。近づいてみると『ボンボン、ボンボン』と言いながら、口に手をやる。どうやら飴をくれと言っているのだなと分かる。S氏から子供に会ったら飴をやるとよいという話を聞いていたので、私も飴を持参しており、1人に1つずつあげる。年嵩の(と言っても10歳以下か?)子が袋ごとくれと言う。首を振ると脇から小さい子が貰っていないと悲しそうな顔を出す。渡し損ねたと慌ててあげると嬉しそう。気が付けば、彼は2つ目をせしめていたのである。やはり観光客慣れした子供たちは逞しい。

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ホテルの前の道を歩いて行く。周りは民家が少しあるのみ。砂漠とはいわないが、荒野を歩いて行く感じ。少し小高いところから朝のパゴダを拝む。相変わらず物静かに佇んでいる。子供が後ろを2人着いて来ていた。彼らは英語の単語を幾つか知っており、一生懸命話そうとするが意味は全く分からない。外国人との接触の中から、言葉を覚えていく過程なのだろうか。彼らは私に一体何を見ているのだろうか?単なる遊び相手と思っているのか?それとも明るい未来を見ているのだろうか?いや、そんな難しことは考えず、その日を生きているだけなのだろう。

 

何と雨が降り始めたので、ホテルに戻る。丁度団体が例の『九州産交』バスに乗るところで、彼ら2人も走って仕事に戻っていく。10人ぐらいの子供が団体を取り囲む。中には煩がって彼を追い出そうとする人もいる。ホテルの人も形式的に彼らを外へ押し出す。しかし決して完全を期さない。彼らは擦り抜けてまたやって来る。台湾人の年寄りは、その姿を見て何かを買ってやっている。恐らくは必要の無いその土産を買う真意は、昔の自分の姿を思い出しているのだろうか?この国では、施し・慈悲といった言葉が極めて自然である。

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空港まで僅か15分で到着してしまう。荒涼としたパガンのパゴダの中を走り抜ける気分は、幸せのようでもあり、少し物悲しいようでもあり、何とも複雑である。自転車に乗る観光客、西洋人が多い。一番安い自転車を買うと7,000Kだそうだ。TTに5,000K、運転手にも2,000Kのチップを渡す。これで自転車が買える。どう見ても多過ぎるとTTはかなり恐縮していた。それでもこれが私のその時の自然な気持ち?であった。因みにガイド料は1日US$20で何処でも一律である。空港の待合室から外を眺める。青い空が広がる。このまま時が止まってくれれば、と思うが、しかしずっと止まっていたら、果たして心は耐えられるだろうか。

 

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