ミャンマー紀行2003(9)パガン パゴダの群れ

(3)パゴダの群れ
マーケットでまったりした後は、ニァゥンウーの町を抜けていく。すると直ぐに遺跡群が広がる大きな平原がある。パガンは世界の3大仏教遺跡と言われるが、カンボジアのアンコールワットやインドネシアのボルブドールのように無数の岩石を円錐状に積み上げた遺跡とは明らかに違っている。パガン遺跡は最盛期5,000(現存するのは2,000という)と言われる小型の仏塔が点在するが、威圧感はあまり無い。

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パガンを代表するシュエジーゴンパゴダが見えてくる。シュエは金を意味すると、ヤンゴンのシュエダゴンパゴダで教わったばかり。パガン王朝の創設者、アノーヤター王が建設を開始したが、規模が大き過ぎたため、完成したのは次の王の時代であったと言う。大きくて立派な黄金の仏塔が見える。中は広くて、ひんやりしている。裏庭に出ると良い風が吹いている。伽藍の辺りには、思い思いに座り込んで涼を取っている地元の人々が居る。私もTTを促し、大きな木の下の椅子に掛けてみる。非常に爽やかで、伸びやかな気分になる。

 

TTは47歳で、マンダレーの大学卒。15歳の女の子が一人居るお母さん。ご主人は教師。ガイド歴は長く、非常にしっかりしている。パガンの生まれで、以前は遺跡のある村に住んでいたが、10年前に政府の指示で強制的に移住させられた。新しい家は皆ほぼ同じ大きさで公平に配分されたと言う。中国福建省の武夷山も世界遺産に認定された際、茶農家が全て山から追い出され、政府の用意した村に移った話を聞いたことがあるが、TTの村の強制移住の理由は何だったんだろうか。

今年はイラク戦争、SARS等の影響でヨーロッパ人観光客もあまり来ないので、仕事が少ないとぼやく。日本人客も年々減っていると言う。その割には、今日も明日も日本人をガイドすると言う。これからは中国人客が沢山来るよ、と慰めると目を輝かせていたのが、印象的。

 

次にティーローミンロー寺院へ。今回行ったパゴダの中で唯一上に登ることができたところだ。他のパゴダも以前は登れたようだが、最近は崩れ落ちる危険があり、政府が規制している。上り口には土産物を売る店の子供が居て、懐中電灯で階段を照らしてくれる。上に上がるとパガンが一望出来る。日差しは無く涼しい風が吹いてくる。遺産に触れている感じがする。

 

サラバー門を潜って、オールドパガンへ。サラバー門は9世紀にパガン防御の為に築かれた城壁の名残。何となく、メキシコ辺りの遺跡を思わせる作りだが。どっしりとした重量感のあるダマヤンジー寺院へ向かう。五層の基壇は全て方形でピラミッドのように見える。父と兄を殺し、第5代の王位に着いたナラートゥ王が建設を開始したが、途中で殺されてしまい、その後荒れ果てたと伝えられる、いわく付きの寺院である。暗い伝説と美しい寺院、何となく深い思いに駆られる。

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サラバー門の城壁の外側にパガンで最も有名なアーナンダ寺院がある。シンメトリックな構造で白色の非常に美しい寺院である。第3代チャンスィッター王により1091年に建立。正方形の大伽藍があり、中央の塔の高さは50m。四方に4体の仏像が安置され、南北の2体が当時のまま。真下から眺めると非常に厳しい表情に見えるが、少し離れて見ると微笑んでいる、何とも不思議な仏像である。1975年の地震でかなりの被害があったが、現在はほぼ修復されている。

 

入り口に子供が何人かいて、観光客に土産物を売る。殆どの子供は手を振ると行ってしまうが、中に一人小さな女の子がいて、きれいな服を着ており、絵葉書を持って着いて来る。ついて来なくていいよと手を振ると、幼い口調で一生懸命に『あとで、あとで』と日本語で言うのには参った。恐らくは多くの日本人が彼女に向かって『要らない』と言えずに、この言葉を口にするうちに覚えたものかと思われるが、何とも言えない悲しい、儚い気分になる。

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昼はTTと2人、エーヤワディー川の辺のレストランへ行く。非常に眺めの良い、半分屋外の気持ちの良い場所だ。西洋人が何組かいるのみ。中に1組家族連れがいる。こんな所に小学生ぐらいの子供を連れて来れば、とてもいい経験になり、彼らの人生に大きな未来が開けるような気がしたが、それは親のエゴなのだろうか。

食事はミャンマー料理。鶏肉と魚、空心菜と豆などのフルコース。これがまた美味い。残さないようにと一生懸命食べる。どう考えても食べ過ぎになるまで食べ続ける。これで何と2,200Kとは信じられない。ここパガンではガイドの食事は無料とのこと。驚くばかりである。川の向こう遥か遠くにポッパ山が見える。ここから車で5時間とのことであるが、非常に自然が豊かな上に、山からパガンを見渡せ、夕日が非常にきれいに見えると聞く。次回は是非とも行ってみたい。

本日宿泊するカツマディ・ダイナスティーホテルにチェックイン。ホテルはバンガロー形式で部屋の前に椅子があり、広い庭が満喫できる。実にゆったりした気分になれるホテルである。泊り客は他に台湾人の団体が10数人のみか?因みに彼らは私の車の前をバスで走っていたが、そのバスには何と『九州産交』と書いてある。勿論中古車で日本から輸入されたものだが、『九州産交』はこの度発足した産業再生機構の支援先第1号に認定された企業。まさか台湾人もそんなことは知るまい。

 

しばらく休んで、午後3時に待ち合わせのロビーに行く。外は非常に暑い。ここパガンは年間を通して雨が少なく、乾燥している。現在は涼しい方と言われたが、それでも暑い。TTが午後の出発をもっと遅くしようとしたのは頷ける。

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