ミャンマー紀行2003(3)ヤンゴン シェンダゴン・パゴダで祈る

食事が終わり、昨晩もちょっと寄ったS氏の会社の事務所へ。明るい中で見るとここはヤンゴンの高級住宅街にあり、周りは一軒家ばかり。オフィスになっている部屋にある大きな変圧器が目を引く。停電が多いヤンゴンではこの辺りだけはあまり停電が無いというのだが、電圧が一定しない、などと言われると、どうしても、やはり昔の中国を思い出してしまう。

SSは早速自分の仕事であるパソコンを開けて、メールのチェック。ミャンマー人がPCにネットを繋ぎ、仕事をする、予想もしていない光景だった。実際ミャンマーでは,インターネットへの接続は難しく、基本的にはメールのやり取りのみ。外国向けの特別サービスといった雰囲気だった。メールも政府のチェックを受けている可能性があるようで、政治的なことなど、迂闊なことは書けない。軍事政権の情報統制を強く感じるが、これは仕方がない。

 

TTMがミャンマーコーヒーを入れてくれる。ストレートで飲んでみるとちょっと苦く、酸っぱい感じ。ミャンマーではコーヒーもかなり採れるようであり、お土産に買って行く人もいると言う。他国と違い、町にはスーターバックスもマクドナルドも無い(敵対関係にあるアメリカ関係の物は全てダメなのである)。基本的にお茶の国と思っていたミャンマーでコーヒーは意外であった。

 

書くのもどうかと思うが、私はこの時この事務所のトイレを何回も借りた。最初食べ物に中ったのではないかと思うほど便が出たが、全く正常だった。何故か次々に便が出る。どうしてこんなに出るかと思うほどであった。最後には体中の全ての便をきれいに吐き出した充実感がみなぎる。こんな感触は初めてである。思うに日頃は何やかんやで緊張を強いられており、便も抑制されている。ところが初めて来たのに、ここには何か懐かしさがあり、緊張感がまるで無かった(勿論S氏が居てくれたからに違いない)。何とも不思議な感覚にとらわれる。ストレスのないミャンマーは、健康に良い場所、ということなのだろうか?

 

(4)シェンダゴン・パゴダ
皆でヤンゴンの象徴、シェンダゴン・パゴダに行く。今から2,500年前に仏陀の聖髪8本が奉納されたと言われている由緒正しいパゴダだ。シングッダヤの丘に金色に輝いている。車で近づくと大きなパゴダが迫ってくるようだ。観光客が上るのに使うエレベーターを無視して、一般人が歩く参道へ。駐車場で車から下りる時、サンダルを車に残していく。ミャンマーでは全てのパゴダで素足で歩かねばならない。靴下もダメ、外国人だからといった言い訳もダメ。こういう一遍の妥協も許さない姿勢に凛とした物を感じる。実に素晴らしい。因みにこれ以降、私はミャンマー滞在中の殆どをサンダル履きで通した。それはいつでも素足になれるようにするためである。サンダル履きがこんなに快感であることを知るとは思わなかった。

 

屋根で覆われているので比較的涼しい参道を多くの人が上って行く。ここの階段はかなり急である。両側には花、線香、仏具などを売る店が並ぶ。その数は相当なものである。SSが見えなくなる。行きつけの店で線香と花を買っている。お寺に捧げる花を一生懸命選んでいる姿は微笑ましい。この辺の店を冷やかすのも面白いかもしれないが、私はTTMとSSに従って行かなければならない。一種の義務のようなものが感じられ、黙って後を付いていく。

 

参道を登りきるとそこは大きな広場のようになっており、沢山の人が祈り、歩き、座っている。時計回りに歩くのが仕来りの様で左に歩き出す。少し行くとSSが居なくなる。見ると自らの象徴であるライオンの小像が在る場所へ行き、先程買った花を生け、線香を挿している。それから床に座り一生懸命お祈りする。そこには多くの人が座り込み祈りを捧げていた。

 

続いて、TTMもナーガ(龍)の場所へ。ミャンマーでは何曜日に生まれたが最も大切。SSは火曜日、TTMは土曜日である。それぞれに方角と象徴の動物が定められている。彼らは常に同じ場所に参拝するのである。因みに1週間は8曜日となっており、水曜日は午前と午後に分かれる。理由は聞き洩らした。

 

私は日曜日生まれ。北東、太陽、鳥である。今日は日曜日、日曜日に参拝するのが最もご利益があるようで、一段と多くの人が祈りを捧げている。私が花を生けようとすると少年が指を指す。線香の場所も指示する。何者かと思っているとチップをくれと言う。以前は無かったが、ミャンマーにも外国人目当ての子供を使った物乞い集団が登場したとS氏がしきりに嘆いていた。

ミャンマー2003 087

兎に角私も一生懸命祈る。心に浮かぶのは『自然に生きたい』ということであった。今まで一度もそんなことを考えたことは無い。やはりこれ自体がご利益か?人々はひたすら祈る。ゆっくり、ゆっくり時間が流れる。今日は太陽が出ていないので、座り込んで祈る人が多い。

 

パゴダの歴史を写真で展示している場所で見ると、昔はこんなに大きな物ではなかったが、皆の寄進により徐々に大きくなった様子が分かる。上座部仏教では、寄進することが来世に繋がると信じられており、信仰が厚いパゴダほど、大きくなっていく。最近の写真には軍の偉いさんが写っていたが、S氏も敢えて名前を口にしない。ここでは政治の話は全てタブーなのである。因みに写真は1870年以降の物で明らかにイギリスの侵略後に写真が導入されたことが分かる。

 

パゴダに登れる場所がある。本日は登ってもよい日だということであったが、女性は厳禁。ここミャンマーは男尊女卑の国だとの印象を受ける。全てが男性中心。女性は働く道具のように感じられることもある。我々のグループには女性が二人いたので、敢えて登ることはしない。

 

仏像は至る所にある。Golden Leafと言われる金箔が売られ、多くの人がその金箔を仏像に貼り付けて、功徳を積む。自分または家族の悪いところがあれば、仏像のその部分に金箔を貼るとご利益があるという。思わず仏像の頭に貼ってみたが、さてさてご利益は望めるのだろうか?帰りはエレベーターに乗ってみる。外国人は入場料としてFEC5を支払っている為、優先的に乗れる。あっと言う間に下に降り、外に出る。素足で駐車場を歩き車に乗り込む。

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