両岸三通の茶旅2015(21)鹿谷から梨山へ

面白い宿

今日の宿はどうするのか。U君に心当たりがあり、そこへ行ってみる。だがそこは宿の看板もなく、単なる民家。しかも入り口には鍵もかかっており、とてもやっているようには見えない。仕方なく、窓ガラスを叩くと、中からおじさんが出てきた。泊まりたいというと、1泊599元だという。彼の家の一階の一室、2段ベッドが部屋にあり、トイレシャワーも付いていた。取り敢えず面白そうなので泊まってみることにした。

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Wi-Fiは部屋では繋がり難く、リビングでPCを眺める。茶器はそこにあるので自由に使ってよいとのこと。台所も必要あれば使えるらしい。この宿の管理人はおじさんの娘らしい。今日は台中に行っているので好きにやってくれ、という感じだった。民宿というより完全に台湾人の家に下宿した感じとなる。一番面白いのは鍵。『正面のドアは使わないでくれ』と言い、何と車のガレージの鍵をくれる。ガレージから出入りする宿、初めて聞いた。ボタンを押すと自動で開くガレージ、そこから外へ出た。

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夕飯は軽く食べようというので、近くの牛肉麺屋へ。ところが既に、売り切れ。残念。その近くで、魯肉飯と牡蠣のスープ、野菜炒めを食べて満足。U君は昔よくここに来たらしい。店の人は彼を覚えていた。そして『この間家族で日本へ行ったぞ』と嬉しそうに言う。何とこの店には時々初老の日本人がやって来て手伝っていたとの話がある。大阪のお医者さんである彼を訪ねて行ったそうだ。そして京都や奈良、そしてなぜか鳥取まで車で訪ねたらしい。楽しかった日本の旅を夫婦で興奮気味に語る。そんな交流も悪くない。

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U君に送ってもらい、宿へ戻る。熱いシャワーを浴びて一息。リビングでネットを繋いでいると、おじさんとおばさんが入ってきて、ソファーに座り、普通にテレビを見始める。そして果物などを出してきて、私にも勧めてくれる。何だか不思議な空間だった。どう見ても居候の身分だ。

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5月11日(月)

梨山へ

宿のおじさんとおばさんは朝早く出掛けて行った。リビングにはおばあちゃんと私が残された。おばあちゃんは朝から台湾の時代劇を見ている。日本のおばあちゃんと変わらないな。娘さんはまだ戻って来ない。昨日やっと鹿谷に来たというのに、今日はなぜか梨山へ行くことになっていた。U君の友人が車で連れて行ってくるというのだ。U君もさすがにバイクで梨山に行くという無謀なことはしないらしい。この機会を逃す手はない。朝ごはんは食べに行かず、お茶だけ飲んで、迎えが来るのを待っていた。だがなかなか来なかった。

 

ようやく車がやってきた。U君の他、お母さんが乗っており、その息子が運転していた。彼らは鹿谷から1時間ぐらい離れたところで茶荘をやっており、わざわざ鹿谷まで迎えに来てくれたのだ。何とも有難い。これもU君に日頃の付き合いだ。それにしても鹿谷から梨山は遠い。片道5時間近くかかるらしい。何故梨山へ、などと私は聞かない。それが私の旅のスタイルだから。正直地理が分からず、どこを走っているのか見当がつかない。山を下りて、また登っていく。

 

2時間ぐらい走ったところで、昼ご飯を食べることになった。雨が降り始めている。場所は霧社だと聞いて、懐かしく思い出す。25年前、私は日本人のゴルフツアーで何となくここへやってきた。そして泊まった宿で1930年に起こった霧社事件の生き残りのおばあさんの話を聞いたことがある。当時霧社事件が何であるかもよく知らない我々日本人の前で、そのおばあさんは実に淡々と事件の状況をよどみない日本語で語ってくれた。それは何と言っていいかわからないほど、悲惨な出来事であったが、おばあさんは今でも殺されたご主人とその仲間たちを誇りにおもっている様子だった。そして事件当時お腹の中にいた子が、今この旅館を経営している、と言い終えると静かに去って行った。あのおばあさんはどうしただろうか。

 

道路沿いのレストランに入る。店先に野菜が沢山並んでいる。これまで食べたことのない山の野菜の数々、ここでしか採れないものがいくつもあった。お母さんが『私らもここで食べるのが楽しみだ』と言っていたので、特別な料理だったのだろう。あまりの美味しさに写真を撮り忘れたのは残念。梨山へ行く時の一つの楽しみ、それはここのご飯だったのだ。

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それからまた車に乗り、クネクネとどんどん登っていく。そのうち何となく見覚えのある道に出たことが分かった。特にここのセブンイレブンはよく覚えている。昨年梨山の大禹嶺に行った時、帰りの道が陥没していて、大きく迂回した道だった。何とも懐かしい。ということは今回我々はこのルートから梨山を目指しているのだなと初めて分かる。なるほど、合歓山。今日も小雨の中、かなり煙っている。前が見えにくい。

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U君が突然『ジョニーの茶工場へ行きたい』と言い出した。今日行く予定の工場のオーナーの都合が変わったらしい。携帯で電話を入れると『大歓迎』と言われたので、突然の訪問となる。何という展開か。途中、茶畑が見えたので下りてみる。標高2200m前後の場所だろうか。何だか茶樹に変化がある。霜の被害を受けていた。先月の半ばに霜が降りたという話があったが、かなりの被害であることをこの目で確認した。本当に標高が高い茶畑は大変だ。昨年は雨が続き、そして土砂崩れ、今年は霜害か。U君は霜の状況を詳細に写真に収め、把握に努めていた。茶葉は半分も摘めなかったのではないか。このような話は業界ではしにくだろう。

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