両岸三通の茶旅2015(13)福州 厳戒態勢の馬尾港から馬祖へ

午後は休息となった。これまでの数日、ネットを繋げることもなく、メールの返事なども溜まっていた。一応ここではVPNが使えたため、GoogleもFacebookも繋がっていた。こうなると一気に気持ちがPCに向かってしまう。悲しい性だ。張さんの家では全く気にならなかった世俗が押し寄せてくる。勿論日本はGWなので、それほどメールが来ている訳ではないのだが。

 

本当は福州の街の散歩でもしようかと思っていたのだが、夢中になると止まらない。あっという間に周囲が暗くなってくる。魏さんから連絡があり、夕飯に行くという。車に乗って大きな道路を走るが、それほどの渋滞はない。今や旧市街地はそれほど混んでいないのだろうか。今朝行ったちょっと郊外はマンションが立ち並び、人が多そうだったな、と思う。

 

ショッピングモールの中にある立派なレストランへ行く。個室に入ると何と昨晩お粥を作ってくれた魏さんのお母さん、お嫁さん、孫がいた。どうやら昨晩日本から来た人間にお粥しか出さなかったことが、お母さんの面子に関わったのではないだろうか。誰も説明してくれないが、母の日とか、何かのお祝いという感じもないので、そうだと思われる。如何にも中国的対応だな、と言いながら、有難く頂く。

 

福州料理はこれといって日本で有名なものはないが、味付けは日本人好み。スープは実にコクがある。中に肉が入った揚げパンと一緒に食べると、何とも言えない味がある。海鮮を使った炒め物なども新鮮でよい。お母さんも上機嫌で食べていたので良かった。幼い孫は飽きてしまい、部屋を動き回ろうとするが、個室なので問題はない。魏さんは知り合いの女性と何か議論している。

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食べ終わるとまた魏さんの店へ行く。今晩もお茶仲間がやってきたが、魏さんも私もエネルギー不足。店内でちょっと話をして、引き上げる。昨日も来てくれた一人は、今日こそプーアール茶の店へ行こうといってくれたが、すでにその気力はなかった。残念。それにしてもお茶好きの人は本当に熱心だ。次回はもう少し長い滞在期間を取り、ゆっくり過ごしたい。

 

5月7日(木)

馬尾の港へ

翌朝は早く起きる。今日は福州を離れ、馬祖島へ行くことになっていた。私個人は金門同様、馬祖へ行くのも簡単なのだろうと、高をくくっていたが、魏さんたちは口々に『外国人が馬祖へフェリーで渡った話など聞いたことはない』と疑問を呈していた。そしてついに魏さんの会社のスタッフで、フェリーが出る馬尾に近くに住む人が、わざわざターミナルまで行ってチケットの予約をしてくれた。何という親切。しかしこれはとても有難かった。

 

9時15分発のフェリーに乗るのに、7時半前にホテルを出る。馬尾までそんなに時間が掛かるのか。魏さんが車を回してくれたので、運転手と二人、馬尾を目指す。道はそれほど混んでいなかったが、それでも小1時間は走る。そして懐かしい、前回見学した馬尾造船所あたりにやってくる。だがフェリーターミナルは全く見えない。運転手も初めて行くので、聞きながら進むが、何とも到着しない。それほど分かりにくく、また知られていない。かなり不安を覚える。

 

時間はどんどん過ぎていき、余裕で到着するはずが、間に合うかどうか心配になり始めた頃、何とフェリーターミナルにたどり着く。ただ本当に小さく、分かり難い場所にあった。もし一人で来ていたら、全くたどり着けなかっただろう。建物に入っていくと、『両馬旅遊合作を強化する』とのスローガンが見える。最近ようやく開設されたルートなのだと分かる。

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まずは予約してもらったチケットを取りに行く。すると『600元』と言われ、仰天する。600元といえば、日本円で1万2千円。僅か1時間ぐらいフェリーに乗るだけで何故そんなにするのか。聞き返すと『往復だろう』という。そうか、予約は往復でしてくれていたのだ。それでも片道300元、金門-厦門の2倍以上はする。そして乗船客はそれほど多くない。待合室を見ても外国人などは全く見えず、親戚の家にでも行こうという人々が、大きな荷物を持って並んでいる。何だか80年代の中国の波止場を思い出す光景だ。

 

荷物検査も思いの外念入りで時間が掛かる。そして出国のイミグレ。窓口は2つしか開けずに、入念にチェックしている。何よりもその列を囲むように多くの制服を着た職員が2列に並んで厳重な?警戒?体制を作っている。これはまさに80年代の中国だ。私の認識は甘かった。開放されているといっても、このエリアにはまだ緊張感が残っているのだ。そんなことを考えていると、何と女性職員が近づいてきて、いきなり私のパスポートをチェックする。

 

抜き打ち検査?『馬祖に何しに行くの?』と口調はソフトながら、キッパリと聞いてくる。『観光で』と何とかいうと『そう』と一言言って、後ろのシンガポールパスポートの若者に同じ質問をしている。少しでも怪しい動きがあれば、別室に行きかねない、そんな雰囲気だった。イミグレ自体はスムーズに通過。ただそこからフェリーまでがかなり長い距離を歩かなければならない。疲れる。

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小さなフェリーが停まっていた。金門のフェリーとは大きさがかなり違う。乗り場も簡易。これまで貨物船しか通っていなかったのか、と思うほどだ。『和平統一 一国両制』というスローガンが目を惹く。やはりここは普通の波止場ではなさそうだ。ただ乗船客は、普通のおじさんとおばさんが多い。観光目的の人もいるのだろうか。

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船はゆっくりと岸壁を離れ、そのまま本当にゆっくりと進んで行く。なんと1時間近く、ただただスローペースを保ち、大きな橋の下を通り、ようやく外海に出た。乗船中はデッキに出ることも禁止。殆どの人がただ寝るしかない。時折、中国籍の船が見えるのだが、それ以外何もない海を行く。結局合計2時間かかって、馬祖に到着。何だか遠くに来た感じだ。

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