両岸三通の茶旅2015(10)安渓から福州へ 騙されバスの旅

5月4日(月)

今朝も当然早く起きた。今日は雨だった。濃い霧がこの山の中の村全体を包んでいた。食事には張さん奥さんが自ら育てた巨大キャベツが登場していた。普通であればこんな大きなキャベツ、農薬、化学肥料バンバン使って作ったんでしょう、と言いたいところだが、ここは違う。奥さんが毎日丹精込めて育てているのだ。その姿を見ていれば、化学肥料など使っていないことは一目瞭然。何よりも自分で食べる物にわざわざ毒を盛る人間などいない。

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雨に濡れた道を製茶場へ向かう。昨日より更に滑りやすく、かなり苦労して歩く。竹林が実に鮮やかで素晴らしい。製茶場からの景色も霧で全く前が見えない状態だった。中では張さんが赤々と火を燃やしていた。昨日と全く同じ工程が繰り返されることになる。ただ天候によって、その作業時間などに微妙な差があるらしい。それは全て張さんの感覚に委ねられている。それが年季というものだろう。

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今日はさすがに茶摘みはない、と判断。張さんの緊張も幾分か緩んでいる。朝からお茶を淹れてくれる。昨日に比べてかなりの余裕が感じられる。恐らくは茶の出来栄えも満足のいくものだったのだろう。張さんは完全に職人さん、なのである。作業は順調に進み、雨も止む。張さんは得意のポーズで天気の予報を行う。その結果は『午後はまた雨』というもので、今日の作業が終われば家に帰れることになった。

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昼前にスープありのビーフンを食べる。これ、本当にウマイな!何故だろうか。座ってゆっくりビーフンをすする張さん、様になっている。午後も既定の作業を行ったが、焙煎工程で完全に寝落ちている。疲れが溜まっているのは明らか。そして緊張感が続かなくなっているのだろう。これは安堵の証拠。作業はほぼ終わり、午後4時前に我々は製茶場を離れた。

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家に戻ると女性陣が枝とりに精を出していた。私も加わり、枝を取る。まるでマージャン卓を囲むようだ。色々な話をしながら、手はキチンと動かしている。さすが農家の人達。だが言葉は地元の方言なので、何を言っているのかは全然分からない。みな楽しそうでいいのだが。茶摘み歌なども、労働がきついので歌でも歌いながら、ということらしい。いずれにしても女性は辛抱強い。私は夕飯を機に退散した。

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そこへ張さんが帰ってきたので、早々にできたてのお茶を分けてもらった。昨年は茶葉をパックしてくれる家に持ち込んだが、なかなかうまくいかなかったので、今回はなんと高さんが香港からパッキングの道具を持ってきて詰めてくれた。何とも有難い。その作業時間は枝とりができずに更に申し訳ない。張さんとお茶を飲みながら少し話し、眠りに着いた。私というよりも張さんを早く寝かせる方が良い、と判断したからだ。

 

5月5日(火)

大坪を離れて

今朝も5時台に起きる。今日は福州へ行く日、残念ながらこの地を離れる日だった。朝ごはんを食べ、すぐに家を出た。張さんと奥さんは手を振って見送ってくれた。もう家族のような気分だ。高さんと息子が私の荷物を持ってバス停まで送ってくれた。今日も小雨が降り続く。バス停まで歩くと結構距離があった。先日ここに着いた時、方向が分からなかったわけだ。

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バスは朝6時が始発で、私は7時のバスに乗った。乗客は数人だったが、途中からどんどん乗ってくる。幼い女の子がお父さんと一緒に乗っていたが、慣れていないのか、途中で気分が悪くなってぐったりしていた。乗客のおばさんが心配そうに世話を焼いている内に寝入ってしまったが、何となくほのぼのとした田舎のバスだった。

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バスは8時過ぎには同安に着いた。福州行のバスはあるかと聞くと、9時のバスがあるというので喜んでチケットを買った。これで雨の中、荷物を持って歩かずに済む、有難い。ところが9時に同安にやって来たバスは、どう見ても長距離バスではない。聞けばこのバスは集美行きだという。私のチケットはそこで福州行バスに乗り込むのだという。集美は福州とは反対方向、アモイに戻る感じ。これは完全に騙された、と思ったが後の祭りだ。確かに大坪では皆から『同安から厦門へ行き、高速鉄道に乗るのが速い』と言われていたのに。

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30分乗って集美のターミナル着。何と福州行は10時15分発。しかも雨でどのバスも遅れている。これでは一体いつ頃福州に着くのやら。もうどうにでもなれ、という心境だった。このターミナル、バスが次々にやってきた。凄い数だった。これが今の中国の機動力なのだろう。福建省各地をはじめ、遠くは上海や北京にも行くらしい。乗客もかなり乗っているから、ニーズも凄い。

 

私のバスは10時半ごろようやくやってきた。このバスは空いていた。エアコンが効いていて寒かった。自然の中で生活してきたので特に寒く感じていたのか。バスはもう一度同安の横を通り過ぎ、高速に乗って福州を目指す。途中で28年前に一度行った泉州郊外を通ったが、驚くほどに高層ビルが並び、その発展ぶりには目を見張った。福建省で一番発展しているのは泉州だ、と誰かが言っていたが、まさか、と思っていた。うーん、中国恐るべし。

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