バンコックお寺巡り2014(2)心地よいカオサンのお寺

ワットアルン

続いてワットアルンに向かう。ワットポーから川へ向かい、そこから渡し船に乗る。暁の寺、と呼ばれるワットアルンは、三島由紀夫の小説で有名。私も中学生の頃に読んで、ちょっとタイに思いを馳せたことがあったのを思い出す。初めて実物を見たのは夕暮れ時で、川の上から夕日に輝く仏塔を眺め、美しいと思った。

 

今回は昼間であり、特に情緒もなく、到着してしまう。近くへ行ってみると何と修復工事中で、足場が組まれていた。前回来た時はチケットを買うのにすごく並んでいたので、裏側に回り、裏門入場したが、今回はその必要もないほど空いていた。入場料50バーツ。いつもは高いところには上らない私だが、今日はIさんのお伴ということで、ある程度登ってみる。川がよく見える。意外と景色が良い。普段と違うことをするにはやはり他力本願?だな。

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それにしてもこの仏塔には小さな像が一体いくつ安置されているのだろうか。この細かさ、それはタイ特有のモノなのだろうか。ちょっと不思議な感じがする。何か目に見えない、何かがあるのでは、と考えてしまう。三島由紀夫もここへ来て、何かを見たのだろうか。エメラルド仏をワットプラケオに持っていかれた、その寂しさが現れているのだろうか。

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日差しがかなり強くなってきた。小舟で対岸に戻る。そろそろ昼の時間だ。この辺にレストランはあるのだろうか、と思っているとIさんが『ここでいい』という。それは渡し船の船着き場にある店。欧米人が沢山食事をしていたが、決してきれいとは言えない。それでもチャレンジしてみることにした。

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炒飯とスープ、そして野菜炒めを頼んだが、なかなか運ばれてこない。明らかに店が回っていない。お客が多い上に効率が悪い。ようやく来た炒飯、どう見ても70バーツの価値はない。ここは場所で持っているのであり、競争原理が働いていないのが良く分かる。華人と思われる女主人が切り盛りしているが、こういう店には気を付けたほうが良い。衛生管理も十分ではない。

 

ワットマハタート

午後はラーマ1世が建立したワットマハタートからスタート。王宮の脇を通り、立派な寺院が見えたので入って行く。団体観光客が列をなして入っていき、記念写真を撮っている。何だここは。何となく違うぞ。そう、何とワットプラケオに入ってしまったのだ。この辺が俄かガイドの悲しさ。エメラルド仏が安置されている本堂は、特に中国人観光客に人気のようで、そこかしこで中国語が飛び交う。

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我々はすごすごと退散する。何しろここは王宮とセットとは言え、入場料500バーツは高いし、和尚の指示にない寺だった。さらに北上する。王宮前広場の脇を歩いていると、小さな門があり、そこを潜ると寺があった。ここがタイ仏教界の多数派、マハーニカイの総本山とはちょっと思えない規模だ。先ほどのワットプラケオの方が遥かに立派に見える。そしてどこが本堂か分からず、まごまごしていると、タイ人の女性がこちらだ、というポーズをして中に入って行く。

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我々も続いて中に入ると、そこには黄金の仏像が安置されている。思わず前に乗り出すと『そこはお坊さんが座る場所』と指示され、後ろに下がり、仏を拝む。3人しかいない、静かな世界。完全に世俗から離れた一瞬を感じた。その時、一番偉いお坊さんが座るであろう椅子に、猫が我が物顔に座っていた。その顔には明らかに『ここは俺の席だ』と書いてある。この猫、只者ではない。誰かの生まれ変わりなのだろうか、それとも乗り移り?

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タイ人女性は毎年チェンマイから必ずお参りに来るという。質素な身なりだが、きっと由緒ある家柄の女性なのだろう、と思わせる、何かを持っている。このお寺には観光客など一人もいない。ここに毎年わざわざ来るにはそれなりの理由があるのだろう。彼女は英語もできるのだが、そのような立ち入った質問をさせる雰囲気もない。

 

寺を出て更に北上すると、名門タマサート大学がある。国立劇場、国立博物館とマハタートに挟まれた小さい空間。ここに英知が結集している。何故こんなところに大学を作り、そして今もそのままあるのだろうか。その南側には昔の図書館のような建物もある。何か事情があるのだろうが、今は知るすべがない。

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ワットボウォーンニウェート

暑さが相当に厳しくなってきた。王宮前広場の横には日差しを遮る場所が少ない。だがIさんは元気に歩いていく。私は彼女に付いていくのみ。道はカオサンに入って行く。バックパッカーの街、私には縁のないところであり、殆ど来たこともない。道沿いには安宿から旅行会社、両替所など、必要なものは何でも揃っているように見える。

 

疲れたので休もうということになり、スタバに入る。だが冷房が強すぎるという理由でそこを出た。そしてオープンカフェを探して入ると、何ともいい風が吹いていた。注文したコーヒーも美味しいとIさんは言う。疲れた体を労り、何だかとても幸せな気分になる。ここはカフェもあるが、ゲストハウスらしい。安宿ばかりではなく、ちょっとお洒落な宿も出来てきている。

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そしてカオサン内にある有名寺院、ワットボウォーンニウェートへ行く。思い出したのは、一昨年一級寺院巡りをしていたS氏のお伴でこの寺に来たことがあるということ。カオサンにあるというだけで、何処か軽く見られがちだが、ラーマ4世による創建。ここはタイ仏教界の2大派閥、タマユット派の総本山であり、現プミポン国王が出家して修行された場所としても知られている。

 

このお寺の本堂に座るとどこからともなく、いい風が吹き込んでくる。ここに座っていたいという衝動が抑えられなくなる。それはどうしてなのだろうか。そのように設計されているからなのだろうか。何か、見えない何かがあるのは間違いがない。懸命に祈っている女性がいる。ずっと動かない男性がいる。信仰とは本来こういうものだよ、と見せてくれている気がした。

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ずーっとここに座っていたかった。それは前回来た時と全く同じ感覚だった。不思議としか言いようがない。既に信仰心など殆どない私が落ち着く場所、それがここなのだ。お参りの人は三々五々やって来ては、座っている。自分のペースに合わせて座り、そして去る。恐らくは日々それを繰り返している。心地よいのだ。安定するのだ。

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