メーサローン茶園ツアー2013

《メーサローン茶園ツアー2013》 2013年9月16日-17日

バンコックで茶会を開いて1年、この会の目的は元々が『タイでもお茶が作られており、その品質も年々向上している』ことをバンコック在住者に知らせることにあった。取り敢えず日本人在住者向けに始めて見ると、思いの外、毎回参加者が集まり盛況になって行った。

 

それではタイの茶畑に行こうと、茶会主催者のMさんが茶園ツアーを企画したところ、4名の参加者があり、メーサローンへ行くことが決まった。但し早朝バンコックを出て夜遅くバンコックに戻る日帰り弾丸ツアー。エアアジア就航のお蔭で実現したが、あまりに忙しないので、私はメーサローンに1泊することにした。

 

9月16日(月)

1. チェンライまで

先週のプーケットの旅で懲りた。宿泊先からドムアン空港に行くのがことのほか、不便であることを認識。今回は出発時間が午前7時55分であり、万全を期して5時に起き、6時前には家を出た。前回は全く捕まらなかったタクシー、今回も早過ぎたのか、やはり捕まらない。仕方なくスクンビットまで出ようと歩き出す。途中で空車が見つかり乗車。今回は渋滞前の時間帯でスムーズに進む。だが結局高速道路を使い、料金はスワナンプーンへ行くより、高くなる。高速料金もいつの間にか値上げになっている。

 

空港には6時25分には着いてしまった。ノックエアーなら空港内でWIFIが使えるのだが、エアアジアにはそんなものはない。それでもスムーズに搭乗し、定刻には出発して、定刻にチェンライ空港に着いた。中国などでは飛行機の遅れが目立つ中、これは快適だった。勿論機内では熟睡。1か月前の予約で、僅か片道700バーツの飛行機代は本当に安い。

 

翠峰茶園

チェンライ空港出口に参加者が集合し、チャーターしていた車に乗り込む。今回は全てMさんがアレンジしてくれたので快適。天気は雨期にもかかわらず快晴で気持ちが良い。水田風景などを見て思わず『バンコックの喧騒が嘘のよう』との言葉が飛び出す。本当にのどかな田舎の風景にうっとり。

途中まではメーサイへ行く道を進む。メーサイへ着けば川の向こうはミャンマーだ。ミャンマーへの思いが頭をもたげた頃、車は山道へ入り、坂を上り始めた。それから程なく、今日の最初の目的地、翠峰茶園の茶畑と工場が見えてきた。茶畑では茶摘みがまさに行われており、思わず車を降りて歩き出す。この気持ちの良さは茶畑を歩いた人にしか分からない。茶畑の中に躍り込む。茶摘みをしているのはアカ族の女性たち。比較的年配者が多いが、中には赤ちゃんを負ぶって作業をしている者もいる。カメラを向ける赤ちゃんがにっこり。

茶工場まで1㎞以上歩いただろうか。向こうには大きな墓も見える。この茶園の創業者は2年前に亡くなっており、茶園が見渡せる場所に葬られている。茶樹は比較的若い。この茶園は第2工場建設とともに2005年頃出来たもので、茶樹は5年程度のものが主流。道の反対側には枯れかけた茶樹もあり、どうやらこちらは茶飲料専用に機械摘みする茶畑らしい。海抜は500m程度でそれほど高くはない。

工場では2代目の経営者が待っていた。彼は35歳前後、2人の兄がいながら、この茶園を継いだ。朴訥としたその様子は好感が持てる。工場脇は喫茶コーナーになっており、茶畑を眺めながら茶が飲める。何ともよい風が吹く、好ましい場所だ。お茶だけではなく、茶葉の入った揚げ春巻きやケーキなども出てきた。時間は11時前だがランチの状況になった。

この会社は1977年創業、華人の経営。軟枝烏龍、金宣などを主に作っている。今回のコーディネーターであるMさんの関連先だ。技術は台湾から、商品は主に台湾へ輸出しているが、最近はタイ人も茶を飲むことから国内需要も増えているという。

2代目は『これからは量の拡大は目指さずに、質の向上に努めたい。同時に海外にある観光茶園をモデルに観光客の取り込むに力を入れたい』とし、6‐7か月前に試験的に始めたこの喫茶店を、もっと本格的なスペースとすべく、設計中だという。確かに我々がいる間にタイ人を中心に欧米人などの観光客が何組もここを訪れ、記念写真を撮り、茶を飲み、茶葉を買っていた。Tシャツなど関連グッズの販売も行っている。

日本の静岡、韓国のチェジュ島などを参考にして、観光茶園を作っていくという。2009年に静岡で開かれた博覧会で金宣烏龍が金賞を得た際も、静岡の観光茶園を視察している。また2代目の義兄(姉の婿)は韓国人であり、そのルートからチェジュの視察などもしたようだ。ここは海抜も低く、観光客が来やすい場所であり、的確な戦略のように思う。

工場では摘んだ茶葉が外で干されていたが、まだ本格的な茶作りは始まっていなかった。従業員は工場100人、茶摘み100人、最低賃金はここまでは届いていないようだ。茶畑を覗くと、手で摘んでいる部分と機械ですべて摘み取られた部分があることが分かる。ペット飲料向けの茶葉供給も活発のようだ。

101茶園

先日バンコックのポーラの店で出会ったフランス人が『最近メーサローンの101茶園を訪ねた』と言っていた。できれば寄ってみたいと思っていると、ちゃんと寄ることになっていた。こんなのも茶縁だろう。

翠峰茶園から車はかなり坂道を上がり始める。101茶園は山の中腹にあり、喫茶コーナーから下を見ると茶畑が広がっている。雰囲気は悪くない。早々に喫茶を開始。型どおり、ウーロン茶などを頂く。うーん。茶器など大量に売っており、タイ人観光客が多いのかな、と推測する。ここもある意味、観光地化している。

背後に工場があるが、今日は稼働していない。茶畑にも人はいない。好ましい風景だけがそこにあるが、急こう配を歩いて茶畑に入る自信もなく、断念。時間も押していたので、早々に立ち去る。

3. メーサローンビラ

茶工場

そしてメーサローンにやってきた。思いの外、急カーブが多く、ビックリ。実はこれまで2回ここに来たが、カーブを意識したことはなかった。ようやく懐かしのメーサローンビラに到着したが、何とオーナー夫婦と娘は北京へ行っており、今晩帰ってくる予定だという。それでも馴染の従業員がおり、茶工場を見学したらどうかと勧められ、行くことにした。

茶工場はビラから2㎞ほど離れた道沿いにあり、私でも道は直ぐに分かった。今回は車があるので楽に行くことが出来る。既に連絡がいっていたのか、快く迎え入れられる。ちょうど摘みとった茶葉を干しており、萎凋も行われていた。少数民族のおばさん達は枝とり作業に余念がない。

そして昨年も会った茶師の張さんは健在だった。いや、益々元気に茶作りをしていた。今回は女性が多いせいか?こだわり職人の張さんもご機嫌で、色々と話をしてくれた。茶園ツアーの良い所は生産者と直接話が出来、質問できること。作り立ての烏龍茶を張さん自ら淹れてくれ、話が弾む。

今やここで作られる烏龍茶は台湾の阿里山と遜色がない物も出てきている。土壌、環境、技術がなせる業だ。最近は烏龍茶ばかりでなく、紅茶の生産も始まっている。それにしても現地の水で淹れるお茶は何故美味しいのか?不思議なほどだ。

そして今回何より驚いたことには、台湾人だと思っていた張さんが実は福建人だったこと。しかも鉄観音の産地である安渓、しかもしかも私が5月に2日泊まった茶農家の張さんと同じ大坪という村の出身だった(http://www.chatabi.net/chatabi/2186.html)。同じ張姓、聞いてみると何と大坪の張水来さんを知っていた。これこそ茶縁であろう。一気に私と張さんの距離は縮まった。張さんの作るお茶が何となく鉄観音に近いと感じたのはそのせいだったのか。

2011年12月のメーサローン茶旅

メーサローン茶旅2011(2)発展している茶業

ビラのオーナーと

その後ビラに戻り、早めの夕食。野菜炒めが香ばしかったり、豚足をまんとうに詰めて食べたり。アレンジャーMさんがここの食事は美味しい、オーダーしてくれ、みんなで美味しく頂く。屋外で何となく雰囲気もよく、お茶を飲みながらゆっくり食べた。

 

そしてツアーの皆さんはチェンライへ向けて帰って行った。このツアー、日帰りとうたっており、実際2人の人は午後9時の便でバンコックへ戻る。私はオーナーに会いたくて、ここに宿泊することにした。

 

もう3回目の滞在ともなると、従業員も何も言わずに鍵をくれ、部屋へ行く。今はオフシーズンのようで、空いているので、前面の良い部屋に泊まった。朝早かったので、早々仮眠をとる。あっという間、辺りが暗くなっていた。

 

ネットをするため、食堂へ行く。黙っていてもお茶を淹れてくれる。嬉しい。そこへオーナー夫妻が帰ってきた。私が来ることはMさんから聞いていたようだが、『会えてよかった』と言われると、こちらも何となく嬉しくなる。

 

彼らが夕食を食べるというので、ご相伴に預かる。本日2回目の夕飯。美味しい物は美味しい。今回彼らは北京と長春に行ったらしい。北京はお茶の展示会、メーサローン茶の売り込みに力が入っている。長春はタイ人からすると相当に寒かったようだ。ご主人は明日も朝からサンプルを持ってチェンマイへ行くとか。商売は大変だ。

 

9月17日(火)

朝ごはんを食べながら

翌朝8時前に食堂に行くと既にオーナーが出発しようとしていたが、私を見て、一緒に茶を飲み始めた。やはりこれからの茶業の発展には、台湾以外への輸出及びタイ国内需要の喚起が重要だということだ。タイ国内の方は彼の息子がバンコックで販売を手掛けている。少しずつタイ人にも認知されてきているようだ。最大の輸出ターゲットである中国には頻繁に通い、展示会に参加し、売り込んでいる。昨日までは北京だったが、2週後には上海へ行くらしい。とにかく質が向上してきているので、売り先は重要になってくる。日本でも認知度を上げていきたいようだが、どうだろうか。

 

ご主人が行ってしまうと、奥さんがやってきて朝ごはんを食べ始めた。やはり中国行は堪えたようだ。特に北方は食事も合わず、おまけに涼しい。娘は『2度と行きたくない』と言っていた。中国は広い、元中国人と言っても南方人には生き難い。娘はホテル業の手伝いを始めたようで、カウンターに陣取り、色々と手配をしている。息子が茶業、娘はホテル業、頼もしい後継者だ。

 

因みに朝ごはんはいくつか選べるが、私は毎回迷わず、カオトーン。タイのお粥だ。これはにんにくが効いていて美味い。テラスでこれを食べていると幸せな気分になる。宿泊客も楽しそうに食べている。今日はあいにく霧が濃いが、それでも晴れやかな気分。

 

今回もまた車を手配してもらい、チェンライへ降りる。運転手は中国語が話せた。だが何となく景色を眺めながら降りていく。今日はバンコックに帰る前に、チェンライでコーヒーを作っているIさんと会うことになっていた。その待ち合わせのホテルに何とかたどり着く。

 

4. チェンライ

 

郊外の茶園レストラン

 

Iさんが車で迎えに来てくれる。車は郊外へ出ていく。どこへ行くのだろうと思っていると、茶園が広がっている場所へ出た。素晴らしい眺めだ。そこにレストランがあった。タイのビール会社が運営しているとか。

 

 

ちょっとゴルフ場のクラブハウスを思わせるおしゃれな郊外のレストラン、外は茶畑。最高の情景だった。メニューにも、茶葉を使ったサラダや天ぷらなどが並ぶ。空気もよく、美味しく頂く。勿論お茶も飲む。

 

 

Iさんは大手商社を辞めて、チェンライに移り住み、コーヒーの焙煎をし、販売している。チェンライ産の米も扱っている。最近はほうじ茶作りにもチャレンジしており、近々発売するという。チェンライには茶の木、やぶきたを植えている人がいるのだという。香ばしい香りのほうじ茶はタイ人にもうけるかもしれない。勿論日本への輸出も目論んでいる。但し大量生産をするつもりはない。自分の納得のいく茶が出来れば売る、という感じだろう。職人気質だ。

 

 

Iさんに車で市内に送ってもらい、WIFIが繋がるカフェを紹介してもらって別れる。そのカフェはオープンで気持ち良い風が入ってきた。それから2時間、溜まっていたメール処理などを行う。周囲はテレビのバドミントン中継に夢中だ。タイの女子選手が今、強いのだ。19歳で世界チャンピオン、これまであり得なかったことが起こっている。

 

 

そしてタクシーを呼んでもらい、空港へ。実は自分がチェンライのどこにいるのか分からなかった。カフェの従業員は英語が出来たので、何とか凌いだ。昨日は本当に安いエアアジア便だったが、今日は普通料金のノックエアー。3倍も違っていたが、私はやはりノックが好きだ。買い込んだ茶葉も難なく持ち込めた。

 

 

空港での飛行機を眺めていると、夕日が落ちてきた。何とも美しい。タイ北部、バンコックとは違い、喧噪もなく、落ち着ける場所。また来たいところだ。

 



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