初めて行く北海道2013(2)はるばる来たぜ函館

6月5日(水)

3. 函館

バスで行く

翌朝は本当にゆっくり起きた。そしてバスに乗った。函館行き、普通の人は電車で行くようだが、今回はバスにしてみた。札幌駅の脇のバスターミナルから出発。車内は3列シートで、飛行機で常に通路側を取る私は真ん中の席を選択したが、そんな人はいなかった。3席は十分に間隔があり、更には混んでもいなかったので、両窓際に集中していた。私だけが浮いている感じがした。

 

バスは実に快適に走る。さすが北海道、車も少ないし、道もよい。2時間半ほど走ると休憩があった。眺めの良い場所だった。有珠山、昭和新山、駒ヶ岳が見えた。何だか昔聞いたことがある。噴火した山だったかな。そんな場所に立っている自分が不思議に思えた。電車ではこんな感じにはならないだろう。ドライブインでサンドイッチを買って食べた。背中に山、目の前の遠くに噴火湾と呼ばれる内海があった。こんな雄大な景色の中でボーっとするのも贅沢なものだ。

 

函館に近づくと、少しずつ乗客が降りていく。そして函館市内に入り、駅前で下車。今日の宿は朝市の近くですぐ見つかる。この宿は昔朝市に買い出しにでも来た人が使ったのではないだろう。かなり古い。朝市は目の前だった。

 

五稜郭

函館と言えば五稜郭。駅前から路面電車に乗ってみる。路面電車だからゆっくりだが、見るべきものはあまりない。五稜郭公園前で下車してからも結構歩く。場違いなタワーが出来ており、中もきれいで違和感ありあり。

 

五稜郭公園はきれいに整備されており、藤棚があり、つつじが咲いていた。公園内の建物は全て最近作られたもので魅力はない。だが、公園の周囲は何となく雰囲気があり、歩いて見たくなる。ここで幕末の戦争があり、終結したのか。何とはなく感慨深い。

 

裏門には男爵芋の碑が建っていた。何故ここにあるかと思うが、ここにあるのが相応しいようにも思える。周囲は堀で囲われているが、今はランニングコースになっており、人々が汗を流していた。うーん。

 

帰りは歩いて戻る。駅の近くまで来ると土方歳三最後の地、に出くわす。そう、函館と言えば土方だよな、と思い出す。この碑があった場所はきれいな庭園であり、それも何となくそぐわない。


函館山

駅前からバスが出ていた。函館山から夜景を見る、というのも観光コースらしい。特にやることもないので、行ってみた。バスは夕方出る便が多い。夕日から夜景を見に行く人が多いということだろう。バスは函館の街、特に異国情緒が漂う街並みを越え、山道をくねくね行く。途中でチラチラと港の風景が見える。頂上に着くと既に多くに人々が夜景を待っていた。修学旅行生も多い。先生は写真を撮ってあげたり、変なことをしないように注意したり、大変な様子だった。中には車いすでやってくるお年寄りもいた。

 

函館の街を一望できる山、夕日はないものの確かに夕暮れのよい風景が見られた。かなりの霧がかかっている。時々霧が動いて港が見える。何となく不思議な追いかけっこが行われていた。観光客もその度にカメラを向けていい風景を納めようと頑張る。建物の中にはお土産物コーナーがあり、せっせと買い物している人々もいる。

 

そして徐々に周囲が暗くなってくる。観光客が増えてくる。スポットは大混雑となる。港の方がライトアップされてくる。霧は相変わらず晴れたり曇ったり。高い建物がないので、香港の夜景とは比べることはできないが、素朴な明かりがそこにある。

 

バスの時間があったので早めに失礼する。山を下ると、レトロな建物が見えたので、途中で降りてみる。そこは港町がきれいにライトアップされており、観光スポットになっていた。赤レンガの倉庫がレストランになっている。

 

歩いていると雰囲気は良いのだが夜風が肌寒い。人通りもあまりない。平日はこんなものだろうか。魚を卸す店までライトアップしている。皆で街を盛り上げようとしている。もっと多くの観光客が来ればよいのだが。

6月6日(木)

朝市

函館と言えば朝市、ということで朝市の目の前のホテルに宿泊。昔市場に買い付けに来た人が泊まったのかな、という古い宿で目覚める。ホテルには朝食が付いていたが、何と食券を貰って朝市の中にある食堂に食べに行くシステム。これはなかなか良いサービスだ。

 

7時台の市場にはそれほどの活気はない。もう商売は終わったのかな、と思うほど。私は指定された食堂へ行き、ハラス定食を食べる。朝から相当のボリューム。素晴らしいと言えば素晴らしいのだが、単価を上げるためとも思える。何しろ朝ごはんが1000円するのだから、庶民の料金ではない。観光客用である。それでも美味しく頂く。

 

外へ出るとボチボチ商売が始まっている。ようはここは観光市場なのだ。観光客がやってくるのは8時台。日本人観光客が団体で訪れ、ガイドが連れていく店で皆が説明を聞き、買い物を始める。

 

私はある台湾人家族のグループの後に着いた。これはなかなか面白いフィールドワークだった。台湾人ガイドはまず夕張メロンのコーナーへ案内。切り身のメロンを買わせる。本当に細い切り身は100円。少し幅があるのは250円。彼らは直ぐに250円の物を買い、食べ始める。次にいちご。何故北海道でいちご、と思ってはいけない。彼らは北海道に来ているのだが、日本に来ているのでもある。日本の良い物があれば何でも買うのである。それからホタテ焼き、ジュースなどへ。

 

とうとうカニやエビの所には立ち寄らない。写真を撮るだけだ。確かに鮮魚などを買っても持って帰れない。それよりその場で食べられるものが好まれる。店の人に聞いても『言葉も通じないし、我々は外国人客に対応できない』と関心を示さない。むしろ私が日本人だと分かると一生懸命売り込む。どうしたものだろうか。中にお婆さんが言葉が通じなくても一生懸命売ろうとしていた姿に『今の日本人には必死さが足りない』という台湾人の言葉を思い出す。

 

異国情緒散歩

今日は函館の異国情緒を味わってみようと思う。ホテルから歩き出し、昨晩も通った港付近へ行く。お天気が良く、海の色も映える中、船が停泊している。港町の雰囲気が出ている。そこに高田屋嘉兵衛の記念館があるので見に行ったが、休館日だった、残念。

高田屋嘉兵衛は司馬遼太郎の名作、『菜の花の沖』で何度か読んでいた。江戸時代に北前航路を開拓し、蝦夷地で活躍した商人。だが単に商人の域を超え、日本とロシアの交流に大きな役割を果たしているスケールの大きな人物であり、今に日本の欲しい。高田屋の拠点は函館にあり、いや高田屋が函館を発展させたともいえる。嘉兵衛の足跡も色々と見ることが出来ると思ったが、また次回にしよう。

そして坂を上っていくと、元町教会、正ハリストス教会などが見える。正ハリストス教会といえば東京のニコライ堂が思い浮かぶ。拠点が東京に移った後も正教会の伝統を守っている。函館は日米和親条約で開港された港。キリシタン禁制の時代に既に異人が沢山やってきたのだろう。まあ江戸時代に既に北方貿易などで免疫はあったのだろうが、いや、そもそも日本人も皆外から来た人々がいた、ということか。

修学旅行生が沢山歩いている。ある若い女性がズーッと一人で誰かを待つかのように、道を見つめていた。何か訳アリなのかと思ったが、何と学校の先生だった。しかも遅れた生徒を叱るのかと思い行きや、何と記念写真を撮ってあげている。先生も大変だな、とつくづく思う。それにしてもその先生、なぜかこの函館の雰囲気に合っていた。

外国人墓地は町の外れの高台にある。ここまで歩くのは結構大変だった。そして行ってみると、意外なほど小さい。横に中華墓地もあったが、ここも大きくはない。函館で亡くなった外国人はそれほど多くないということなのか。途中にいくつかお寺があった。ここに葬られた外国人は居なかったのだろうか。

函館の街はなだらかに傾斜して港に向いていた。この傾斜が良い。スーッと坂を転げる。そして様々な建物が残っており、確かに異国情緒はある。でも日本はきれいすぎるな、どこも、と思ってしまう。

港近くを歩いていると、誰からの像があった。見ると『新島襄』と書いてある。そういえば今年の大河ドラマ『八重の桜』の主人公の旦那だった。彼はここからアメリカに密航した。浦賀で失敗した吉田松陰、函館で成功した新島。何とも不思議な。うーん。

温泉へ

なぜかそのままずっと歩き続ける。かなり歩いて疲れたのに、歩きたい。不思議だ。亀井勝一郎文学碑、石川啄木歌碑など、歩いていると色々とある。そして函館公園。ここはかなりいい雰囲気だった。建物もレトロだし、林がきれいだった。しばし休み、見惚れる。


 

そしてついに谷地頭町まで来てしまった。立待岬、何だかよい名前だ。行ってみた。啄木一族の墓があり、与謝野晶子の歌碑がある。本当に外れに来てしまった。あの異国情緒の函館とは全く違う、函館があった。

 

帰りに谷地頭温泉に寄った。本当は湯の川温泉にでも行くつもりだったのだが、時間が無くなったところ、目の前に温泉が現れた。市営温泉、実は民間業者に委託していた。タオルすら持っていなかったが、石鹸とタオルをその場で購入、温泉に入ってみた。

 

体育館のような天井の高い温泉だった。お客さんはほぼ地元の老人。皆マイ温泉グッズを持って登場。僅か400円ぐらいで日がな楽しんでいるように見えた。お湯も何種類かあり、何度も入った。そして外には露天ぶろまで。そこでゆっくり湯につかり、疲れた足を癒す。これは極楽。日向でおじいさんが裸で寝込んでいた。本当に幸せそうだった。

 

そして湯冷めせぬように電車で駅へ戻る。最後にラーメンを食べる。1杯500円の普通のラーメンを食べたが、幸せな気分になった。ホテルで荷物を取り、駅前からバスに乗って空港へ。空港では結局チェックインカウンターで手続きして何とか飛行機に乗り込む。今回の北海道旅行、特に何もなかったような気もするが、何か大きなものを得たような気もする。

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