インドムナールお茶散歩2014(8)ムナール 選挙の日は外出禁止

4月24日(木)ストライキの街

『今日は外に出られません』と突然ラトールさんに言われる。何事かと聞いてみると『今日は選挙ですから』、え、選挙、占拠?選挙の投票日に外出できないとはどのような訳か?さすがインド不可解なことが起こる。ホテルの人間も『レストランも店も全て閉まる。街中が静まり返る』と。選挙の日にある法案の反対派が大規模な反政府デモを計画しているのだとか。この街の車以外が走っているとデモ隊から焼打ちに合う可能性が懸念されるというのだ。凄い!運転手は当然動きたくない。何しろ走らなくても我々が彼をチャーターしているのだから。

朝食後、歩いて街へ出てみる。確かに昨日までと状況は一変していた。仕事を失ったタクシーやリキシャの運転手がしきりに郊外へ行こうと声を掛けて来る。それを振り切り街へ入ると、殆どすべての店がシャッターを下ろしていた。唯一開いていたのは薬局。ここだけは襲われないのだという。病人の為に薬局は必要ということだろうか。それなら他にも必要な所がありそうだが。

ラトールさんは自宅のネット環境を改善しようとしていた。なぜか電話会社のオフィスも開いていた。だがインドの地域主義は凄い。ラトールさんの住むプネーと南インドのここムナールでは管轄が異なるため、結局何もできなかった。昔日本の電電公社でもそんなことがあったかもしれない。インドは今藪の中である。

街に人はいなかったが、選挙がどこで行われ、デモがどこで行われているのか、全く分からなかった。大騒ぎした割には実は何も行っていないのかもしれない。法律問題というのは『一定以上の大きさの土地売買を規制する』ということらしいが、本当に反対の人がどれだけいるのか。ただ昔働いていた頃、会社の偉いさんのインド出張をアレンジしたら、訪問先から直前になってキャンセルの通知が来たことがある。理由はその都市と隣の州の水問題。当日は空港まで全て閉鎖になるとのことで、やむなくフライトの行先を変更した覚えがある。実際に何が起こったのかは分からないが、それがインドというものだ。それにしても5年に一度のインドの選挙を生で体験できるとは貴重だった。

Tea Museumアゲイン

結局街から歩き出す。昨日も訪れたTea Museumへ向かう。地図ではホテルから3㎞となっていたので、ちょうど良い散歩だった。茶畑の近くを歩くのは気持ちが良い。博物館は幸いにも開館していた。入場料を払わなければならないが、昨日既に見学したので、今日はスニールシに会いに行くということにして、免除してもらった。

スニール氏も今日は見学者が殆どなく、暇にしていた。我々がオフィスに入ると世論で迎えてくれた。今日は緑茶の話になった。私は自分が日本の煎茶や抹茶について知識が不足していると強く感じた。そして彼は『日本のお茶農家の誰かがここへ来て、煎茶の作り方を教えてくれないかな』と切実に訴えた。アジアは今緑茶ブームであるが、その中で日本茶の占める割合は少ない。抹茶もアイスやラテとして使われているが、これは日本製ではない。日本は煎茶を広めるべきだが、名乗り出る農家があるだろうか。

昨日この付近の工場へ入れないことが分かったので、ムナール茶のサンプルを2₋3買ってみる。スニール氏が良いというものを購入したが、やはりここのお茶はミルクティに向いているのだろう。プレーンで飲むとちょっと苦い。ムナールではこの博物館で全てが完結していることが分かった。

高校入試トラブル

博物館を出ようとするとすごい雨が降ってきた。南国のスコールだ。一端別れを告げたスニール氏のオフィスに逃げ込む。そして運転手に電話して迎えを頼む。彼は嫌だったかもしれないが、とにかく来てくれたので、車でホテルへ帰る。

ランチもホテルの食堂で取る。本当は外で食べたかったが、何しろ全てのレストランが閉まっている。朝昼晩三食、ここで食べるしかない。運転手は実は泊まっていたホテルが今日は閉鎖してしまい、食べるところもないというので、ホテルへ呼んで食べて貰った。それにしても泊まっている人間を追い出すとはどんなホテルだ?彼は車の中で寝たのだろうか。

その頃からラトールさんの携帯が頻繁に鳴り出した。どうやら奥さんからだった。聞いてみると一人娘の高校入試の申し込みでトラブルがあったらしい。最初は意味が分からなかったが、今年からインドでは進学希望の登録などをインターネットで行うことにしたらしい。娘のナイニーカは運悪く今年進学。ネットで申し込みをしようとしたところ、既に自分のIDが誰かに使われており、登録できなかったらしい。登録できなければ受験が出来ず高校には行けない。これはラトール家の一大事。奥さんも務めている高校の仕事そっちのけで掛かり切っているらしい。

結局ネイニーカは何も悪くないのに、彼女のIDを使った別の学生を突き止めて彼女に取り消しを求め、更にはナイニーカの学校長の説明書を取り、当局に再申請となったらしい。全く私には理解できないが、全てにおいて書面が必要とのことで、大変な一日になっていた。インドビザで懲りている私は、『インドで新しいシステムが始まった時は必ず問題が起こる』と確信しているが、問題の起こり方がまた奇想天外でついて行けない。夜も当然ホテルの食堂。さすがに飽きてきたが、他に選択肢はなかった。

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