東北、北海道を行く2021(4)大間からフェリーで函館へ

フェリーで函館へ

ここからフェリーに乗ろうと思ったのには訳がある。会津藩家老の娘で斗南藩に移住した山川咲という少女がいた。彼女の家も困窮しており、ついに末娘を函館の預けることにしたというのだ。彼女がどのようにして函館に渡ったかは分からなかったが、青函連絡船もない今、このフェリーに乗ることで少しは雰囲気が分かるのではと思ったわけだ。

因みに彼女こそ、その後岩倉遣欧使節団に同行した5人の女子留学生(津田梅子が有名)の一人、山川捨松であり、10年のアメリカ滞在を経て、帰国後薩摩の大山巌と結婚して鹿鳴館の花ともうたわれた大山捨松である。津田梅子が次期5000円札の顔に決まったことで、山川捨松、永井繁子もちょっとは注目されるのではないかと思っている。

きっぷは簡単に買えた。出発まで1時間。バスはフェリーの時刻に合わせて運行されていた。家族連れなども乗ってきたが、会話を聞いていると『函館までちょっと買い物』という雰囲気だ。船内の一般席は床に座る。上等な席は椅子だが、座席指定であり、床に思い思い座る方が快適だ。だが私は体が硬くなっており、床にごろ寝するのにも難儀する.歳はとりたくないものだ。元気な若者たちは2階で寝ころんでいたが、私は荷物があるので1階で、膝を抱えている。

フェリーはゆっくり進んでいる。海を眺めていると、何となくずっと陸が見えているようだ。Wi-Fiも普通に繋がっており、電波が届く範囲を航行していることになる。1時間も経つと遠くに函館の町が見え始める。だがそこからがとても遠く感じられた。海上に雲が広がったかと思えば、夕日が光る。ちょっとした絵画のようだった。

ようやく着岸したが、車優先社会。徒歩の人は最後に降ろされた。このターミナルには観光案内所もなく、市街地から少し離れているので、バス停で路線を確認して乗り込む。20分ほどバスに乗り、五稜郭近くで下車。今日の宿に何とか辿り着く。老舗ホテルで部屋も広く、大浴場もあり実に快適。それでいて安いから言うことはない。

まずは腹が減った。朝食を食べて以来、何も口に入れていない。外へ飛び出すと5時だがもう暗くなっている。慌てて近くのどんぶり物屋に入り、メニューを見ると、丼はみなミニサイズ。東京なら麵と丼のセットメニューのはずだが、店主に聞くと『適当に組み合わせて、自分で選んで』と言われ、かつ丼とカレーうどんを食す。これが意外とうまい。夜は浴場にゆったり浸かり疲れを癒す。ここのお湯、何だかすべすべして気持ちが良く、長風呂となった。

11月16日(火)函館散策

朝はゆっくりと目覚める。正直下北半島の旅は思っていた以上にハードで疲れを覚えたので、今日はのんびり行こうと思う。函館の方が暖かく感じられるのは天候のせいだろうか。それとも気のせいか。まずは朝食だが、ここのビュッフェは刺身から郷土料理までずらっと並んでおり、実に豪華。更にデザート、フルーツも充実しており、この料金でこんなのあり、という充実ぶり。食事代と入浴だけで元が取れそうで、気分がとても良い。

宿をチェックアウトして、荷物を預け、ゆっくりと五稜郭を目指して歩く。そう遠くはないので良い散歩となる。まずは記念館に入り、土方歳三像にご対面する。それから五稜郭タワーを横目に見ながら周囲の堀をグルっと歩き出す。ランニングしている人が意外と多い。

天気は曇りだが、広々としていて視界が開けている感じだ。ちょうど反対側まで来ると『男爵薯』の碑があった。明治末の終わり頃、北海道七飯の農場主、川田龍吉男爵がアメリカから輸入した芋の品種から、この名が付いたという。川田と言えば、父親は日本銀行総裁になった川田小一郎。本人もイギリス留学経験があり、大会社に重役をしていたが、北海道の農業に賭けて移住したらしい。

更に歩くと、函館図書館が見えたので、ここで調査を開始する。今回のテーマは『山川捨松は如何に函館に渡り、ここでどう過ごしたか』だった。これをそのまま図書館に伝えると、学芸員さん?が『時々ありますよ、こういうご質問』というではないか。だから彼女も何度か調べており、実態はほぼ分かっていないとの結論を持っていた。それでも当時の函館における教会関係や坂本龍馬の従弟、沢辺琢磨などの資料を出してくれ、色々と参考になった。こういう調査は意外と面白い。

そこから宿に戻り、荷物を取り出して路面電車に乗る。函館駅までやってきて、明日の札幌行列車のチケットを取る。それから今日の宿へ向かう。そこは函館朝市の横にあり、その向こうは海だったので、風がとても強かった。宿は新しくできたばかりのようで、きれいだったが、まだ時間が早く、チェックインできず。8年ぶりの函館朝市、ずいぶんきれいになった印象である。

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