京都ぶらり茶旅2020(4)遂に満福寺、そして鴨川を歩く

午後は暑い中、宇治から一駅電車に乗り、黄檗駅で降りる。今まで何度も通り過ぎてきたが、遂に満福寺を訪ねることになった。駅前にあると勘違いしていた満福寺まで歩いて5分ほどあった。誰もいない山門を潜ると池がある。反対側には木庵和尚ゆかりの場所もあった。

入り口で拝観料を払い、満福寺内のお茶関連の場所について尋ねてみたが、『基本的に何もない』と言われ驚いた。僅かに売茶翁の記念碑と堂があるだけで、あとは年に1度、煎茶道の大会が開催されるだけだという。確かに隠元禅師が日本の持ってきたのは茶だけではなく、生活にかかわる様々な物であったので、満福寺が殊更に茶だけを強調することはないように思う。

境内は非常に広く感じられ、木造の建物がいくつもあり、雰囲気は良い。随所に隠元や木庵直筆と言われる額などが掛かっている。黄檗宗といえば、あの木魚もちゃんとある。一通り歩いて回り、門の外へ出ると、そこには『駒蹄影園碑』があった。これは宇治に茶が植えられた頃、高山寺の明恵上人がその植え方を教えたとの故事に倣って建てられたらしい。明恵と茶に関する話はどの程度真実なのだろうか。周囲を見ると何軒か『普茶料理』という看板も出ており、黄檗宗を感じさせる。

暑いので、電車に逃げ込んだ。夕方は京都市内四条まで戻るので、京阪電車に乗ってみる。思っていたよりずっと近いのでビックリ。これは特急だからだろうか。四条にはアーケードがあるので歩くのは楽だ。今日は急遽福寿園に向かった。本を入手するため、お知り合いのIさんを訪ねた。

さすがにコロナ対策が徹底されており、お茶の試飲は出来ず、Iさんとの会話も2m以上離れて行われた。それでもお茶の話ができるのはやはり嬉しく、話が弾む。お客さんも常連さんが断続的にお茶を買いに来るが、長居する人はいない。福寿園の歴史も知りたいところだが、長居は無用。

疲れたので宿へ帰る。今日も湯が出ずに、さすがに部屋を変えてもらうことにした。日本の普通のホテルで湯が出ないとはびっくりだ。黙っていても客が来ることをいいことにメンテを怠り、コロナで休業期間に入ってしまい、問題が発生したのだろう。この機会にメンテを実施すべきと思うが、その費用が賄えるのか。今日も残念ながらほぼ泊り客に会わない。

夜は疲れたので、京都駅の地下で夕飯を済ませることにした。洋食が食べたかったので検索して店に向かったが、まさかの満員。駅は普段の半分以下しか人がいないのに、なぜここだけ満員なのか。仕方なく、カツカレーうどんを食べたが、わざわざカツをカレーうどんに入れる必然性はあるのだろうか。

6月24日(水)鴨川

一応京都市内を歩き、宇治にも行ったので、今回の旅の目的はほぼ果たしていた。因みに目的というのは、連載中の雑誌の原稿締め切りに合わせて、隠元と煎茶を追い求めることだった。今朝は今まできちんと訪ねたことがなかった京都御所に行ってみた。修学旅行でも行った記憶はない。

御所が今のように公園となり、解放されたのは明治に入ってからのようだ。それまでは公家屋敷などが立ち並んでいた。ちょっとミーハーだが、蛤御門を探した。幕末の歴史、面白い。御所内部の参観は制限されており、塀に沿って歩く。蛤御門のちょうど反対側に仙洞御所があった。後水尾上皇やその妻徳川和子ゆかりの御所であり、ここでは多くの茶会が開かれたという。参観するには事前申し込みが必要で中を見ることは叶わなかった。

その後旧九条邸のいい雰囲気の庭などをチラッと見た。明治になり、公家の多くも天皇と共に東京へ向かったのだろう。私も地下鉄に乗り、次の目的地、北大路橋に向かった。その東側に売茶翁顕彰碑が建てられていた。この碑は比較的最近建てられたものだが、売茶翁に繋がる場所はやはり鴨川かもしれない。

何となく鴨川沿いを歩きだす。コロナ下ではあるが、多くの年配者が歩き、また犬の散歩などが行われていた。記念碑もいくつも建っており、歴史的な場所だとの認識も出てくる。ちょうど空が曇り、眼前の山も少しかすんでみえる。川沿いのせいか、暑さが和らいでおり、とても歩きやすい。

川から離れ、かなり歩いていた。神光院という寺まで行く。この辺りは住宅街で、観光スポットは全くない。何故私がここに来たのか、自分でもよく分からない。金閣寺の方を目指すつもりが、少し道を間違えたのだろう。寺に入ると、実に静かで古めかしく、落ち着きがある。時代劇の撮影などにもよく使われた場所らしい。

この寺は幕末の歌人で陶芸家、知恩院ゆかりの大田垣蓮月が晩年を過ごしたという。境内には「蓮月尼旧栖之茶所」と刻まれた石碑、そして茶室(蓮月庵)が残されている。蓮月という人は才能があったようだが不幸で、何度も子供や旦那と死に分れており、出家後最後はこの地で亡くなった。蓮月が生活のために作った陶器は蓮月焼という名で残されている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です